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サイクル ロードレース コラム 2020年4月28日

【Cycle*2020 デジタル・スイス5 レビュー】とてつもなく楽しかった!さらなる進化に期待高まる

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ローハン・デニス

ローハン・デニス


たしかに本物のレースではなかったかもしれない。

全日程5日間のうち、4日間は、言うなればシクロクロススタートからの個人タイムトライアル版だった。特に第2ステージは開始3分であっさり勝者が決まった。機材の問題なのか、はたまたネット環境のせいか、スタートラインでレースを終えるギャグのような展開が毎日見られたし(5日間で計6人がDNS)、中日はスタート直後から飛ばしまくったピエール・ラトゥールが、突然オンライン上から姿を消しもした。どうやらレギュレーション違反で失格を言い渡されたらしい。

それでも、断言する。とてつもなく楽しかった!!

多少なりとも外出を制限され、自宅で我慢を強いられる世界中のファンたちにとっては、ちょっとしたレクレーションタイムとなったはずだ。選手たちの元気な顔を拝めたし、私生活をちらり垣間見てちょっと得した気分にも浸れた。

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もちろんレース再開の日はいまだ遠く、目標のない時間を過ごしてきた選手たちにとっては、久しぶりの勝負の場に。経営危機を恐れるチームやスポンサーにとっては、メディア露出度を確保するまたとない機会に。放送局側にとっては久々の「スポーツ生中継」だったし、本物のツール・ド・スイスは中止されたものの、「開催自治体」は美しく壮大な風景を世界中の視聴者にたっぷりアピールすることができた。

新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされた自転車関係者たちにとっては、デジタルスイス5は、まさしくWin-Winの機会だった。

おそらくローハン・デニスは、名誉を挽回するよいきっかけを得た。ほんの数日前に鬱憤を爆発させ、世間を騒がせたばかりだが、個人タイムトライアル世界チャンピオンはさすがの独走力で開幕&閉幕ステージを勝ち取った。

シュテファン・キュング

シュテファン・キュング


そもそも約10日前には所属チームのイネオスが企画したeRaceでも優勝をさらったデニスは、自らの強さの秘密を冷静に分析する。

「エアロダイナミクス(空気力学)は関係しないけど、体重は関係する。大切なのはパワーウェイトレシオ(重量出力比)。僕が今やっているトレーニングが、とりわけ僕のタイムトライアル能力に役立っていることを確認できたのは嬉しい」(イネオス公式HPより)

スイス選手権個人TT3連覇中のシュテファン・キュングもまた、ステージを2つ制した。母国スイスを舞台とした大会だけに、当然モチベーションは高かった。特に1勝目の第2ステージは、自宅からほんの1kmほどの場所が舞台だった。しかも「スイスは屋外練習が許されているけど、今大会に向けてあえてローラー台練習も増やして」、「チームのコーチと相談して今大会に向けてピーキングを行って」……つまりはめちゃくちゃ準備万端で挑んだのだ。

「勝つために必要なのはなにもTT能力だけじゃないんだよ。常に他の選手との位置関係を意識しながら走らなきゃならない。下りで常にMAX(今大会では時速72km)を出すのも重要だ。第4ステージ最終盤でマシューズをとらえた後は、本物のレースさながら、あえて少し息を整える時間も保った。それにしてもモナコで走る(マイケル)マシューズとスイスで走る僕がバトルを繰り広げられたなんて、最高だったよね!」(レキップTVより)

準備万端で臨んだのはニコラス・ロッシュも同じ。キュングとは対照的に、モナコ在のロッシュは3月中旬以降、屋内トレーニングしか許されず鬱々とした日々を送ってきた。それでも3月末にデジタルスイス5の開催がアナウンスされると、「これだ!」とひらめいたのだという。

「レースが中断し、外出制限が始まると、多くの選手が練習ボリュームを減らしたはずなんだ。でも僕はその逆。今大会をシーズン前半の『チャレンジ』に定めて、オンラインレース用の特別練習を続けた。おかげで自宅で孤独に過ごした4週間は、あっという間に過ぎたよ」(レキップTVより)

ニコラス・ロッシュ

ニコラス・ロッシュ


こうしてロッシュは全5ステージ中3ステージを走り、優勝1回・2位2回という好成績を収めた。5日間通して200人以上の選手が参加し、3日間参加したのはたったの11人。もしもこの11人の中で総合順位を決めるとしたら、間違いなく、ロッシュが総合リーダージャージを射止めていた。ちなみに2位は3回とも4位で終えたクリス・ハミルトン、3位は3位・5位・12位と好成績を並べ、しかも逃げでにぎわせてくれたジェームス・フェランだろうか。

そう、ちょっぴり残念だったのは、このデジタルスイス5には個人総合優勝はおろか、チーム順位さえなかったこと。たとえば毎日各チーム上位2人のタイムを合計して争う……という方式を取っていれば、みんなもっとスポンサーのために奮起できたはず。たとえば2日目と4日目のチーム優勝はCCCだし、総合ではぶっちぎりでチームサンウェブが首位にたった。

それにポイント賞や山岳賞、敢闘賞があったら、ちょっと異なる展開が楽しめたかもしれない。たとえばスタート直後の5km、10km地点にこの種のポイントを設定すれば、「アホみたいにスタートからふっ飛ばしたんだ。最後まで持たないとは分かっていたけど」と語りつつ失格に終わったラトゥール戦法だって……きっと有効だったはず!

残念ながら、最短でもあと2ヶ月は、本物のレースは再開されない。その代わり、きっと、デジタルレース大会運営システムも、オンラインライドを支える機材機器類も、さらなる進化を遂げるはずだ。次回はより本物に近い興奮を味わえるに違いない。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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