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【プロトンは必ずやって来る!!】Cycle*2014 フレッシュ・ワロンヌ - バルベルデ4連覇の始まり!-
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか2014年大会を制したバルベルデ
2014年 アレハンドロ・バルベルデ、これぞ偉大なるマンネリズム
歴史と伝統あるクラシックの中でも、フレッシュ・ワロンヌはかなり風変わりな存在といえる。
そもそも週末ではなく、水曜日に行われる。また、どれほどコースに手を入れ、途中に起伏を加えようとも、レース展開はほぼ定形。逃げ切り勝利は皆無(2003年以来ゼロ)。アタック勝利さえなし。
勝敗はひたすらラスト1.3kmの、おなじみ「ユイの壁」のみで決する。より正確に言えば、ラスト200mに全てが凝縮されている!
だからこそ、なのである。成績を左右するのは時の勢いでも、偶然でもない。勝者に求められるのはずばり、パンチャーとしての純粋なる才能と、壁に対する造詣の深さ。
2度目の参戦で、あっさり平均勾配9.8%・最大26%の坂道を征服しながらも、それ以降、アレハンドロ・バルベルデは「コツ」をつかめずにいた。若き日には「エル・インバティド(無敵)」の名をほしいままにしてきた天才でさえ、ユイを飼いならすのは簡単ではなかった。
「ここ数年は、なんだか拒絶されているような気さえする。ちょっと、怒りさえ感じ始めてるほどだ」
しかし2014年、人生9度目のユイ登坂で、ついにバルベルデは完璧なる方程式を見つけ出す。すなわち「ひたすら最前列に位置すること。一瞬でも下ったら終わり。行く手を塞がれ、もう2度と前に出られなくなる」
あとは焦らず最高のタイミングを待つべし。そしてバルベルデにとっては、どうやらラスト150〜100mこそが、自分にふさわしい距離だった。
最後は鮮やかな加速一発。全てを瞬時に置き去りにすると、33歳大ベテランは、待ちに待った2度目のフレッシュ・ワロンヌ勝利を手に入れた。史上最速の2分41秒で、ユイの壁を登り詰めて。
ひとたび攻略法さえ覚えてしまえば、もはやこちらのもの。続く2年間は判で押したように、残り150m前後の加速でさらりと勝利を手にした。しかも「新しい世代がじわじわ台頭してきている。でも僕ら年寄り組は、世代交代の時が来るのを少しでも遅らせるために、戦うのさ」なんて宣言しつつ、2年連続で12歳年下のアラフィリップを蹴散らした。
大会史上最多の4勝を記録しただけでは、まだ物足りなかった。2017年、37歳の誕生日を向かえる6日前には、4年連続5度目の栄光さえつかみとった。いつもよりも長い加速を切っての、堂々たる勝利だった。
「まさに僕のためにオーダーメイドで作られたようなコースなんだ。秘密はひとつ。自信だけ。最後は自分が勝つ、と分かっているからこそ、なにがあっても動揺しない。冷静に走りを制御して、最高の軌道を選ぶだけ」
無念にも2018年は「新しい世代」アラフィリップの早掛けに屈し2位。昨2019年はレース終盤に蜂を飲み込み、何も出来ぬまま11位に終わった。
しかし2年前の秋、38歳にして世界チャンピオン(史上2番目に年長)に君臨したバルベルデは、不完全燃焼のままユイの壁を立ち去るつもりはない。なにしろ2021年末まで現役続行を宣言している。延期となった東京五輪に乗り込む前に……最後にもう1度、得意の激坂で伝説的加速を披露してくれるはずだ。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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