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サイクル ロードレース コラム 2020年2月25日

【ブエルタ・ア・アンダルシア:レビュー】不安は杞憂に。仕上がりが注目されたフルサンがシーズン初戦で貫録の個人総合2連覇

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ブエルタ・ア・アンダルシア ポディウム

気がかりだった仕上がりは、まったくもって杞憂だった。

ヤコブ・フルサン、ミケル・ランダ。2人の総合系ライダーのことである。終盤に1級山岳がそびえた第1ステージから格の違いを見せつけると、以後4日間にわたってリーダージャージを争い続けた。ビッグレースでの実績は申し分ない両者だが、今大会に関していえば、現時点でのコンディションと最終日の個人タイムトライアルでその差が明確になったくらいで、ともに今シーズンの入りとしては十二分に成功だったといえるだろう。

さて、話を冒頭の「気がかりだった仕上がり」に戻そう。

フルサンは、禁止薬物提供で自転車界から永久追放されたミケーレ・フェラーリ医師との接触が疑われ、一時調査対象となっていた。結果的にその嫌疑は晴れるわけだが、果たしてレースに向けた調整は順調だったのか。そんな不安は、実際の走りをもって無用だったことを証明した。もはや“過去の人”でしかないフェラーリ医師などとかかわるまでもないことを、自身の脚で明確にしたのだった。

2020年シーズンは東京五輪での金メダルを最大の目標に据える。4年前のリオ五輪では死闘の末に銀メダル。当時は当時でその結果を誇ったが、キャリアで最も勢いがある今こそ、さらに輝く色のメダルを目指したいという欲望に満ちている。まもなく35歳を迎えるが、老け込むつもりは毛頭ない。起伏に富んだ東京のコースを攻略するために、そこから逆算してレースプログラムを設定。グランツールもジロ・デ・イタリアをメインにすると決めている。

ヤコブ・フルサン

そんな1年の始まりで勝ったのだから、喜びは大きい。昨年はここでのタイトル獲得からキャリア最高のシーズンへとつなげていったが、「その再現を目指したい」と2連覇を決めた直後に高らかに宣言。大会の別名「ルタ・デル・ソル(太陽の道)」のごとく、この先進む道は明るくなった。

一方ランダも、ライド中の事故でトレーニングをストップせざるを得ない時期がありながら、そのダメージを感じさせない走り。最終日のタイムトライアルで遅れ、個人総合順位を3位に落としてしまったが、それまでの4日間の走りはまずまず。何より、新たな環境でのびのびと走れることで“本職”である山岳での強さが戻ってきた。こちらはツール・ド・フランスを目標としているから、現状ではフルサンから後れを取っても仕方がない。

そんな2人に割って入ったジャック・ヘイグの殊勲にも触れておきたい。イェーツ兄弟らの台頭で「ステージレーサー王国」となったミッチェルトン・スコットにあって、次期エースが約束されるオージーライダーがいよいよ“その気”だ。身長190cmと、総合系の選手になるには大きすぎるのではないかと思ってしまう体躯だが、ベスト体重が70kgを切るくらいというから、タフな山岳も問題ないだろう。

そもそも、2015年には「若手の登竜門」ツール・ド・ラヴニールで個人総合2位。持っているモノは相当である。今大会では第3ステージでミスコースしてしまったが、翌日にはステージ勝利してリベンジしたあたり、メンタル的にも強さを感じさせる。そんな彼を、チームはどこでエースの役目を任せるだろうか。もう十分に戦える実力はある。

UCIワールドツアーが再開し、アンダルシアで主役争いを演じた選手たちも、少しずつ“持ち場”へと戻っていく。表彰台を占めた3人ももちろん同様だ。これまで数多くのビッグネームがここからシーズンの大成功へとつなげてきたが、彼らが今年大きな成果を収めるとなれば、いかにルタ・デル・ソルが試運転に最適なレースであるかを裏付けることになるだろう。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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