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【ツアー・ダウンアンダー プレビュー】真夏のオーストラリアでスターたちの競演。シーズン初戦を飾るのは誰か!?
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介2020年も、ロードレース界は感動と驚きのドラマでいっぱいになることだろう。南半球は真夏のオーストラリアで、UCIワールドツアー開幕戦のツアー・ダウンアンダーが開催される。1月19日のダウンアンダークラシックを皮切りに、21日(火)から26日(日)までの全6ステージで、トップライダーたちが熱戦を展開する。オーストラリアでは大規模な山火事が続き心配されているが、いまのところレース運営には支障がないと主催者は判断。予定通り実施される見込みだ。
今年のレースを占う前に、その歴史から見ていこう。大会の始まりは1999年。回を重ねるごとに名立たる選手たちがオーストラリア大陸へと渡り、このイベントに魅了されていくことになる。そして2008年、ヨーロッパ以外では初となるトップカテゴリーへと昇格。現在では、UCIワールドツアー開幕戦としてすっかり定着した。
加えて、ツアー・ダウンアンダーといえば、スピード感に富んだ戦いが最大の魅力。いまでこそ難易度の高い上りがコースに組み込まれるようになり、総合争いの趣きが大きく変化しているが、かつてはスプリンターたちによるフィニッシュ前での大激戦が大会の華でもあった。
そんなスプリンター競演の名残は、いまもなおわれわれを楽しませてくれる。今年もカレブ・ユアン(ロット・スーダル)やエリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス ソルシオンクレディ)といったスーパースプリンターが参戦を表明。昨年の第5ステージで、繰り上げ裁定ながらも勝利を挙げたジャスパー・フィリプセン(UAE・チーム エミレーツ)、移籍問題が晴れ、新たな環境でスタートを切るサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)は信頼できるアシストとともにエントリー。この大会のステージ優勝記録18回と最多のアンドレ・グライペルは、新体制となったイスラエル・スタートアップネイションの一員として“再降臨”。これだけタレントがそろっていれば、今シーズンのスプリント勢力図を占う一戦となるかもしれない。
各ステージのコースに目を移すと、スプリンター優位と見られる第1ステージを経て、第2ステージでは過去に幾度となくレースの方向性を示してきたスターリングの上りスプリントに挑む。特にレース後半にこの上りを含む周回を4回めぐることになるが、いつも消耗戦の様相となる。過去には逃げが決まったこともあり、波乱が起きても不思議ではない。
続く第3ステージは、総合争いの第1弾。スタートしてすぐにタフな上りが控えるが、すべてはフィニッシュ前2kmからそびえるトレンス・ヒル・ロードで決まることだろう。平均勾配9.3%、未舗装区間も含む急坂は、2017年にリッチー・ポート(現トレック・セガフレード)が後続に16秒差をつける圧勝劇を演じている。
第4、第5ステージはスプリンターが主役となる可能性が高い。勝負はスピードマンに任せて、総合系の選手たちは無難に終えたいところ。
第6ステージは、昨年から最終日に登場することとなったウィランガ・ヒルの頂上フィニッシュ。登坂距離3.7km、平均勾配6.8%の上りは、これまでもクライマーやパンチャーが名勝負を演じてきた。ここを2回上るわけだが、1回目は各チームともアシスト陣が仕事をして、2回目にエースを解き放つ。真に強き者こそが、トップで頂上へと到達することになる。
総合リーダーの証であるオーカージャージを賭けた勝負は、ダリル・インピー(ミッチェルトン・スコット)の3連覇なるかに注目。チームはグランツールレーサーのサイモン・イェーツもメンバー入りさせて、地元レースでのジャージ防衛に意気込む。
それに待ったをかけるのは、3年ぶりの王座を狙うポートや、初出場のロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアール)。毎年好レースを演じるジョージ・ベネット(ユンボ・ヴィズマ)やチーム イネオスの一員として戦線に戻ってきたローハン・デニスの戦いぶりも楽しみ。
そして何より、バーレーン・マクラーレンのエースナンバーを背負うのは、われらが新城幸也。3年連続での出場が決まり、直前までタイでトレーニングキャンプを実施。好調でシーズンの始まりを迎えられそうだ。
今年も見どころ満載のツアー・ダウンアンダー。観る者にとって、シーズンオフで少々落ち着いていた自転車熱を上げるにピッタリのレースであることは間違いない。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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