人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2019年10月11日

【パリ〜トゥール/プレビュー】非難轟々の未舗装路...歴史ある「落ち葉のクラシック」はチャレンジリングは過酷なレース

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line
パリ〜トゥール

ヨーロッパ自転車シーズンの終わりを告げる「落ち葉のクラシック」は、1年前から、ロワールのワイン産地巡りへと生まれ変わった。しかし、楽しくほろ酔い気分に浸っている暇など、一切ない。ぶどう畑を通り抜けるコースは、春クラシック顔負けの、過酷な土の道だ!

1896年生まれのクラシックは、本来なら「スプリンターズ」の枕詞がよく似合うレースだった。かつてトゥールの中心街を真っ直ぐ貫いたグラモン大通りは、数あるワンデーレースのフィニッシュ地の中でもひときわ長かった。しかもパリ郊外から一直線に南下するプロトンは、しばし追い風に背中を押された。つまり平地でのとてつもないハイスピード戦が見ものだった。なにしろ200km超のレースを史上最速走行時速で制した選手を讃える「黄色いリボン賞(リュバン・ジョーヌ)」は、1997年以降、5回連続でパリ〜トゥール覇者に与えられてきたのだから(最新は2015年覇者マッテオ・トレンティン。2019年ブエルタ第17ステージを時速50.628kmで制したフィリップ・ジルベールが記録を塗り替えた)。

ところが状況は変わった。大通りに市街電車の線路が敷かれ、2011年大会から、2kmを超える自慢の最終ストレートは800mに短縮された。残念ながらゴージャスな大集団スプリントはもはや望めなくなった。その上、近頃の自転車界は「未舗装」「激坂」が大流行りときている。スプリンターたちによる単純なる平地の高速レースだけじゃ、もはや目の肥えたファンたちは満足しないのかもしれない……。

そこで2018年秋、大胆にも、ぶどう畑の間を駆け抜ける「極細の砂利道」ゾーンがパリ〜トゥール最終盤にお目見えした!

賛否両論どころではなかった。むしろ非難轟々だった。レース前に多くの関係者たちは「100年以上の歴史が捻じ曲げられた」と嘆いた。レース中には「悪路クラシック大好き」なはずのドゥクーニンク・クイックステップGMパトリック・ルフェヴェルが、「こんなものはロードレースじゃない、シクロクロスだ」と怒りのSNS発言を上げた。レースの終わりには選手たちから「工事現場みたい」「パンク世界選手権」との苦情が相次いだ。3位表彰台に上がったブノワ・コスヌフロワさえ「ロード自転車向きの道じゃないよ」と本音を漏らした。ただ輝かしい独走勝利を飾ったソーレン・クラークアンデルセンだけが、「未舗装ゾーンはちょっと危険だったけど、でも、好きだよ」なんて発言した。

パンクに落車に分断の山が築かれ、さすがにコース図を描いた張本人、レース委員長のティエリー・グヴヌーも「ちょっとやりすぎなゾーンもあったし、未舗装路の距離が長すぎた」と反省したそうだ。……しかし、この秋、第113回大会の全長217kmのコース上には、相も変わらず堂々と土の道が組込まれている。

2003年のチーム創設以来1度も欠かさず同大会に出場し、3度の優勝を手にしてきたドゥクーニンク・クイックステップは、呆れて「不出場宣言」を出した。なにしろ砂利道の総距離は去大会の全長12.5kmから10.7kmに短縮されたものの、セクター数は変わらず9。しかもラスト50kmにはぶどう畑の道の他に、7つの登りもしっかりと待ち受ける。

つまりピュアスプリンターたちの出番は極めて少ない。去年はスプリンター(とはいってもミラノ〜サンレモを制している)アルノー・デマールが14位に食い込んだが、果たして2年ぶりに参戦するマーク・カヴェンディッシュが砂利道に適応できるだろうか。

いわゆる秋版ストラーデビアンケへと変化したパリ〜トゥールは、むしろフランドルクラシック大好きっ子たちのやる気を掻き立てる。昨大会2位にして、元ルーベ&フランドル覇者のニキ・テルプストラを筆頭に、今春ルーベで2位に食い込んだニルス・ポリット、昨春のルーベ2位シルヴァン・ディリエ、石畳上位常連オリヴル・ナーセン……ルーベへの強い愛で名を挙げたエヴァルダス・シシュケヴィチュスも、秋の悪路に挑む。

「落ち葉のクラシック」が終わると、欧州の自転車シーズンは長い休暇に入る。シーズンの終わりは、誰かにとってはチームとの別れであり、大ベテランにとってはキャリアの締めくくりでもある。例えば39歳ロイ・クルフェルスやラルス・バク、36歳アレクサンドル・ピショ、34歳ブリス・フェイユは、2019年10月13日の日曜日、人生最後のクラシックレースへと走り出す。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ