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【ツール・ド・フランス 2019 第19ステージ / レースレポート】「34年ぶりの仏人イエロー」の夢から覚め、コロンビアは史上初のツール総合覇者誕生に期待
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかここでストップウォッチは止まる。ベルナルがあらゆる選手に先んじてイズラン山頂を越え、サイモンが13秒後に続いた。トーマスとクライスヴァイク、さらにエマヌエル・ブッフマンは1分03秒遅れで通過。そしてアラフィリップは2分10秒後に、孤独にダウンヒルへと転じた。そう、選手たちが山を越えた時点では、いまだレースは続いていたのだ。ベルナルはヴァーチャルマイヨ・ジョーヌでしかなく、40秒遅れの暫定2位に落ちたアラフィリップは、得意の下りで少しでも差を縮めようと試みた。「毎日自分の最善を尽くしてきた。今日だって同じだった。上りも、下りも。……でも、車の中で終わっちゃった」
現地時間16時45分ごろ、ラジオツールが告げた。「全チームに極めて重要なメッセージあり。コース上に大量に雹が降り、いまだ路上に積もっている状況だ。通行できる状態ではない。即時ステージを中止する!」
選手が猛スピードで突き進んでいる場所からほんの先の、107km地点前後は、大量の雹で真っ白に染まっていた。所によっては土砂が流れ込み、泥の川が流れた。開催委員会とUCI審判団の合意により、選手の安全とレースの正しい運行のため、ステージの即時打ち切りが決定された。ステージタイムと順位は89km地点のイズラン峠山頂で計測されるが、区間勝者は空席。イズランのボーナスポイントと山岳ポイントは与えられるが、フィニッシュでボーナスタイムとマイヨ・ヴェール用ポイントは発生せず。また制限時間も無効とされた。
あまりに急な決定だったものだから、走行中の選手たち、特に最前線を突っ走っていたベルナルにとっては、理解するのに少々時間が必要だったようだ。「全速力で走っている最中に、ストップ、ストップ、と叫ばれたとしても、止まるはずないよね。『レースは終わり』とも言われたけど、なにが起こったのか分からくて、止まりたくはなかったんだ」と。でも自らがマイヨ・ジョーヌだと告げられ、ようやくほっとして脚を緩めた。ティーニュのフィニッシュラインは、自転車ではなく、チームカーで越えた。表彰台の裏には、父とフィアンセが待っていた。
アラフィリップは48秒遅れ(山頂の40秒差+ポイントボーナス8秒)の総合2位に後退し、すっかり板についてきた黄色い衣装を脱いだ。またトーマスは総合3位・1分16秒差、クライスヴァイクは4位・1分28秒差、ブッフマン5位・1分55秒差。表彰台争いの行方は相変わらずひどい僅差のままだ。もちろんベルナルがパリまでマイヨ・ジョーヌを持ち帰れるかどうかさえ、いまだに分からない。ただ新人賞はほぼ確定済み(2位に20分差以上)。ひょっとしたら悲嘆に暮れるフランスと現赤玉ロマン・バルデから、山岳ジャージをむしり取ってしまう可能性だってわずかながら残っている。
ただし第20ステージは、本来予定されていた3つの山岳のうち、序盤2つは通過しない。悪天候はアルプス全体を襲っている。1つ目に通過予定だったロズラン峠にも土砂崩れが発生し、そもそもが通行不可能となった。コース自体も130kmから59kmに大幅短縮。すなわち登坂距離33.4km・山頂標高2365mの超級ヴァル・トランスへと駆け上がる、超が付くほどの短距離決戦で、2019年ツール・ド・フランスの順列が最終的に確定する。
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