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サイクル ロードレース コラム 2019年7月19日

【ツール・ド・フランス 2019 第12ステージ / レースレポート】今後の双子パワー炸裂に期待、サイモン・イェーツ「最終コーナーを先頭でこなすことが、勝利の鍵だと分かってた」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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サイモン・イェーツ

プロトンの約4分の1が逃げ出し、翌日に個人タイムトライアルを控える総合本命たちは、意識的に落ち着いた1日を過ごした。ピレネー初日はサイモン・イェーツに微笑み、ジュリアン・アラフィリップはマイヨ・ジョーヌ着用権利を危なげなくもう1日延長した。

熾烈なアタック合戦でステージは幕を開けた。時速50km以上の追いかけっこが延々と繰り返された。ようやく40kmほど走った時点で、40人の巨大な集団が逃げを許された。チームイネオスがプロトンに蓋を閉めたのだ。

ツール参加22チーム中、イネオス、グルパマ、カチューシャを除く19チームが前方に選手を送り込んだ。特に全長209.5kmの、最初の130.5kmは平坦路だったものだから、スプリンターたちがこぞってエスケープを試みた。ペーター・サガンを筆頭に、マイケル・マシューズ、ソンニ・コロブレッリ、マッテオ・トレンティン、アレクサンドル・クリストフ、ディラン・フルーネウェーヘン等々..。当然のように、130.5km地点の中間ポイントでは熾烈なスプリントが巻き起こり、いたって当たり前のように、マイヨ・ヴェール姿のサガンが先頭通過を果たした。1日の終わりには2位コロブレッリに大量86ptをつけ、早くも史上最多7度目のポイント賞受賞に王手をかけたようなものだ。もちろん本人は「まだフィニッシュで50pt発生するステージが3つあるから、決して安心はできないよ」と集中力を切らすつもりはない。

緑争奪戦の直後に、道は1級ペイルスルドへ突入した。逃げ集団からすぐさま、リリアン・カルメジャーヌが独走に打って出る。ただし、すでにステージ前半の4級峠でポイント収集していたティム・ウェレンスが、赤玉の日々を少しでも引き伸ばそうと大奮闘。1位10ptを積み重ね..少なくとも2日後トゥルマレの山頂にたどり着くまでは、赤玉ジャージを身につけていることができる。

ジュリアン・アラフィリップ

ペイルスルド山頂からは、この日33歳の誕生日を迎えたサイモン・クラークが高速ダウンヒルを披露、続く1級ウルケット・ダンシザンの上りでは、トレンティンが果敢なる走りを見せた。しかし昨ブエルタ総合覇者イェーツや、1カ月前のドーフィネでアラフィリップと山岳区間勝利を競い合ったグレゴール・ミュールベルガーが、あらゆる先行者たちをあっさり抜き去った。さらに今5月のジロで区間2勝のペリョ・ビルバオも加わって、三つ巴のスプリント勝負へともつれ込む。

「確かにトラックのスプリントみたいだったね」と語ったのは、2013年にポイントレースでトラック世界王者に上り詰めたSイェーツ。「とにかく(残り200mの)最終コーナーを先頭でこなすことが、勝利の鍵だと分かってた」との言葉通り、真っ先に最終ストレートへと飛び込んだ。これがブエルタ区間2勝・ジロ区間3勝に続く、ツールでの区間1勝目。今後はアダムを山で助けたい、と双子パワーを炸裂させる予定だ。

逃げを見送った後、プロトンは歩調を緩めた。アラフィリップ擁するドゥクーニンク・クイックステップがきっちり制御し..むしろイネオスが淡々と隊列を組んだ。特筆すべきことはなにも起こらなかった。一時はエスケープ集団に10分以上ものタイム差を許したプロトンは、最終的に9分35秒遅れでフィニッシュ地へとたどり着いた。

2019年7月19日、第13ステージの日、マイヨ・ジョーヌは100歳の誕生日を迎える。初代マイヨ・ジョーヌ着用者ウジェーヌ・クリストフの姿が描かれた黄色いジャージを目指して、アラフィリップが全出走選手の最後に、27.2kmのタイムトライアルコースへと走り出す。

<選手コメント>

■サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
(ステージ優勝)「こうして本格的な山岳にたどり着くまでずっとエネルギーを溜めていて、今日は初めて積極的に動いてみるチャンスだった。普段ならメイン集団でアダム(・イェーツ)のアシストをしてるけど、今日は逃げに入って勝ちを狙うチャンスをもらったから、それを両手で掴んだんだ。スプリントで勝つ自信はあまりなかった。彼らがどのくらい速いかもよくわからなかったし。チームカーの監督が最後のコーナーを先頭で回ってくるように言ったから、その通りにした。そして勝つことができたんだ。今日はたまたま逃げる機会をもらったけれど、僕の一番大事な仕事はアダムを助けること。これから数日どんな走りができるだろうね。僕らにとってすばらしいツールが、まだずっと続くと良いな」出典:チームの公式リリースより

■ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
(総合リーダージャージ)「明日、ツールの100歳の誕生日(100周年)にマイヨ・ジョーヌを着ることが何を意味するか、説明するのは難しい。それは僕にとって大きな意味があること。そして何よりも、とても誇らしいよ。ツール・ド・フランスの(総合)リーダーでいられてとても幸せだ。そのおかげで、僕は明日最後にTTをスタートできる。いつもよりさらに自分を痛めつけて全力を尽くすモチベーションになる。限界を超えた走りをしたいと思う」出典:主催者の公式リリースより

■エガン・ベルナル(チーム イネオス)
(新人賞ジャージ)「今日のステージの展開は、まさに予想通りだったね。総合狙いの選手やチームは、明日の大切なTTに備えて、今日は何もしたくなかった。TTでありったけの力を使わなくてはならないから。個人TTが終われば、たくさんのアタックが起きる、かなり違う様相のツールになると思う。土曜には、名物峠(超級ツールマレー峠)が登場する超難関ステージが控えている。総合争いで後退してしまった選手の何人かは、タイムロスを取り戻そうとするだろう。僕たちが何か特別なことをする必要はないけど、かしこいレース運びが重要になるね」出典:主催者の公式リリースより

■ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)
(ポイント賞ジャージ)「あまり楽しい日ではなかったね。中間スプリントポイントのために逃げに乗りたかったけれど、逃げに乗るまでがたいへんだった。決まるまで50kmかかったんだ。中間スプリントでは、ダニエル・オスのおかげでロジャー・クルーゲを引き戻して最大のポイントを獲得することができた。そこからは、脚を休めながら最後はグルペットで一日を終えたよ。僕向きのステージじゃないとわかっていたし、逃げ集団にはいいクライマーがたくさんいたからね」」出典:主催者の公式リリースより

■ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
(山岳賞ジャージ)「逃げが決まるまでの争いが長かったね。逃げには入れたけれど、そこまででかなりエネルギーを使ったから、もうあまり力が残っていなかった。最初2つのカテゴリー山岳でのポイント集めに集中して、最後の山岳では脚が空っぽだった。チームとしては、まるで雲の上を歩いているようなツールだよ。すべてがすばらしくうまく行っている。僕も、この赤玉ジャージをできる限り長く着続けたいな」出典:主催者の公式リリースより

■マッテオ・トレンティン(ミッチェルトン・スコット)
(ステージ敢闘賞)「とてもいい一日だったね。サイモン・イェーツが先頭集団にいて、僕は第2集団で何かあったときに備えるというとてもいい戦略だった。総合を狙っているからといって、ステージ優勝を狙えない訳じゃない。いくつかのステージをマークしてある中で、僕たちはすでに2勝を上げている。とても順調に進んでいると思う。まだいくつか可能性のあるステージは残っているけれど、それ以外はすべてアダム(・イェーツ)に集中するよ」出典:レース主催者の公式リリースより抜粋

■ペリョ・ビルバオ(アスタナ プロチーム)
(ステージ2位)「ステージ優勝を狙うチャンスがあってとても嬉しい。フィナーレでミスはなかったと思う。スプリントに備えてパーフェクトなポジションにいたけれど、サイモン・イェーツと競う体力が残っていなかった。最後の峠でイェーツとミュールベルガーを追うのに、かなりの力を使ったから。あの時点で、今日は二人のほうが僕より力があるとすでに感じていた。ここからはヤコブ・フルサングの総合に集中するから、このツールで僕が何か狙えるのは今日が最後じゃないかな。チーム全員で力を尽くせば、まだヤコブは総合表彰台を狙えると思うんだ」出典:チーム公式のリリースより

■グレゴール・ミュールベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)
(ステージ3位)「完璧な日まで、あと少しだったね。上りで(サイモン・)イェーツについていけたことは誇りに思うけれど、そこで力を使ったせいで、最後のスプリント争いに負けてしまった。トラック競技出身のサイモンにはスピードがある。けれど、体力をセーブできていたら、僕にもチャンスがあったと思うんだ。残念ながら、今日は彼が上だった。自分の走りやリザルトには満足しているし、またチャンスがあって、次はそのチャンスをものにできたら良いなと思う」出典:チーム公式のリリースより

コメント翻訳:寺尾真紀

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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