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サイクル ロードレース コラム 2019年7月18日

【ツール・ド・フランス 2019 第11ステージ / レースレポート】ポケットスプリンター カレブ・ユアンが初の区間勝利を掴む「子供の頃からの夢が叶った」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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カレブ・ユアン

南西フランス特有の強い陽光が、プロトンを焦がした。1回目の休息日を終え、2019年ツール・ド・フランスも後半に突入。勝負の地ピレネー山脈へと大急ぎで接近しつつ、スプリンターたちが山入り前の最後の直接対決を繰り広げた。「難関山岳に入る前に前に勝つことができてほっとしてるよ!」と語ったカレブ・ユアンが、初めてのツールの11日目に、初めての区間勝利を手に入れた。

スタート地アルビ生まれのリリアン・カルメジャーヌが、地元ファンの期待を裏切らず、いの一番に飛び出した。フィニッシュ地トゥールーズ生まれのアントニー・ペレスもすぐに後を追う。第1ステージの敢闘賞ステファヌ・ロセットに、逃げ集団で唯一のベルギー人エメ・デヘントも加わった。4人はメイン集団から最大3分のリードを奪うものの、後方のスプリンターチームは決して手綱を緩めなかった。ロット・スーダル、ユンボ・ヴィスマ、ドゥクーニンク・クイックステップは、非情かつ冷静な制御で、じりじりと逃げ集団を追い詰めていく。

フィニッシュ手前約30km、真っ直ぐ南下していた集団が、西へとハンドルを切った。風向きの変化に加えて、道幅も急激に狭まった。当然のようにプロトン内の緊張感は高まり……大きな集団落車が発生する。ナイロ・キンタナやリッチー・ポートという総合表彰台候補も巻き込まれた。幸いにもしばらく後にメイン集団に復帰を果たし、2人とも「大したことはないよ」と嘯いた。ただ前者は「肘に氷を当てなきゃ」と語り、後者は「頭部を結構激しく打ったんだ」とも告白する。また大会前半戦に2日間マイヨ・ジョーヌを着用したジュリオ・チッコーネは、膝と手首を負傷。12分以上遅れのステージ最下位で、痛みの中でフィニッシュラインを越えた。

スプリント

それでも集団はスプリントへと突っ走った。最後まで抵抗し続けたデヘントを残り4.5kmで飲み込み、下り基調のフィニッシュラインへ向けて複数チームがトレインを走らせた。中でも第1ステージにマイヨ・ジョーヌを勝ち取ったマイク・テウニッセンが、ラスト250mまで最前列を猛烈に引っ張った。

その背中にぴたりと張り付いていたディラン・フルーネウェーヘンの加速が合図だった。2019年大会6度目の……そして最後から数えておそらく3番目の大集団スプリントへと、あらゆるスプリンターが一気に解き放たれた。ユアンを含む4選手が我先にとフルーネウェーヘンの後輪を奪い合った。右端に取り残されたペーター・サガンも、大胆に左へと進路変更を試みた。ただし後輪にするりと入り込んだのは、ポケットスプリンターだった。

残り100m、小さな体をさらに小さく丸めて、ユアンがロケットのように飛び出した。フルーネウェーヘンとハンドルを投げ合い、フォトフィニッシュの結果、ユアンがわずかの差で勝利を手中に収めた。「子供の頃からの夢が叶った」と、人生初めてのツール区間勝利に歓喜した。またブエルタ1勝、ジロ3勝に続き、これにて3大ツール全てで区間を制したことになる。

ジュリアン・アラフィリップは7度目のマイヨ・ジョーヌ表彰式を、いつも以上にリラックスした様子で楽しんだ。翌日から始まるピレネー山越えは、「なんの作戦もなし。最悪の結果もあれば、最高の結果にもなりえるだろう」と平常心で臨む。

<選手コメント>

■カレブ・ユアン(ロット・スーダル)
(ステージ優勝)「僕のまず最初の夢はプロの自転車選手になることだった。次の夢は、ツール・ド・フランスに出場すること。そして最後の、究極の夢が、ツールでステージ優勝することだったんだ。集団スプリントではいつもそこにいたのに、少しのところで何度か勝利を逃してしまっていた。5回目の挑戦でやっと勝利を掴むことができて、その歓喜、安堵…大きな意味のある、強い感情を伴った言葉がたくさん頭に浮かんでくるよ。チームは僕を信じ続けてくれたし、僕もチームを、そして自分のスピードを信じることを決してやめなかった。タイミングやポジショニング、そういったすべてが完璧に調和すれば良いだけだった。そしてまさに今日はそれが起こったんだ。レースの最終盤はかなり混乱していたけれど、結果がすべてだからね。これまでのスプリントでうまくいかなかったことが今日はうまくいった。どれだけの嬉しさか、言葉にできないほどだよ。

オーストラリアからヨーロッパにやってきて、プロとして自転車競技の絶対的な頂点を目指す。それには大きな覚悟や意志の強さが必要だ。今日の勝利で、その道のりの一歩を進められたように思う。僕の旅の仲間たちに大きなお礼を言わなくちゃ。まだ病院にいる生まれたばかりの娘を残してツールに来るのは、簡単なことではなかった。けれどもチームはできる限り僕を支えてくれた。スプリンターとして2位や3位の結果ばかりで納得がいかないときも、プレッシャーがかからないよう配慮してくれた。昨日も、スポーツ・マネージャーのマーク・サージャントと長い会話をしたばかりだった。プレッシャーを取りのぞき、最後まで自分を信じ続けるよう力づけることの大切さを彼は本当によく知っているからね」出典:チームの公式リリースより

■ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
(総合リーダージャージ)「ピレネーを楽しみにしているんだ。明日は難しい日になるだろうね。エガン・ベルナルが言ったように、もしかしたら総合狙いの選手はTTに備えて明日は少し脚をセーブするかもしれない。だけど、僕はアタックに備えて心の準備をしているよ。それが総合上位の選手になるか、タイム差を稼ごうとする選手なのかはわからない。こうなるだろう、という考えはない。何が起こっても不思議じゃない。最悪のシナリオも最高のシナリオもあり得る。とにかくマイヨ・ジョーヌを今日も身にまとうことができて本当に幸せに思うし、できる限りの力を尽くしたいという思いでいっぱいだよ」出典:主催者の公式リリースより

■エガン・ベルナル(チーム イネオス)
(新人賞ジャージ)「今日のフィナーレでは落車が起こりかけたから、巻き込まれてタイム差を作らないように集団の前方に上がらなくてはならなかった。昨日が休息日だったから、かんたんな一日ではなかったね。休息日の翌日はいつもハードだけど、今日の最後がスプリントになることは分かっていた。総合争いでタイムロスのある選手がすでに何人かいるから、TTを前に大きなリスクをおかす必要のない、とてもいい立場に僕たちはいると思う。明日はピレネー山岳ステージの初日だし、何が起きるかわからない。とにかく調子が良ければいいなと思う。攻撃に出るにはちょっと早いように感じる。直後に個人TTと難関山岳ステージが控えているからね。けれど、誰かががアタックに出るのは間違いないと思うよ」出典:チームの公式リリースより

■ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)
(ステージ4位・ポイント賞ジャージ)「最後のラウンド・アバウトでクラッシュしなくて本当にラッキーだった。どこにも怪我なくここに立っていられて嬉しいよ。ここからはマイヨ・ヴェールのためのポイントを稼ぎながら、一日一日戦っていくだけ。マイケル・マシューズはポイント賞狙いを諦めたと僕は理解している。ステージ勝利が彼にとっては最優先で、彼の場合、その最大のチャンスは逃げからだ。もしポイント賞ジャージの争いでマシューズと僕が僅差だったら、彼を逃がすことはできないからね」出典:レース主催者の公式リリースより

■ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
(山岳賞ジャージ)「今日はそれほどのストレスはなかった。今日のステージには山岳ポイントがたくさんないから、山岳賞ジャージを失う危険がなかったんだ。明日はまったく別の状況だから、逃げに乗れるようやってみる。明日は山岳ポイントを集めることが重要になるし、そのためには逃げに乗ることが必要なんだ。幸いチームメートのトーマス・デヘントが山岳賞で2位につけているから、僕らのどちらかが逃げに入れればいい。もちろんこのジャージを着続けていたいから、僕らのどちらも逃げに入れたら一番いいけれど。カレブ・ユアンの勝利はとても嬉しいよ。チームで力を合わせてきたし、彼の頑張りがやっと報われたね」出典:主催者の公式リリースより

■アイメ・デヘント(ワンティ・ゴペールサイクリングチーム)
(ステージ敢闘賞)「ゴール前7kmの下りでソロアタックに出て、そのあとは平坦だと思っていたんだ。フィニッシュまでいけるんじゃないかと思った。けれど飛行場のところからの上りは永遠に続くようで、脚が乳酸でいっぱいになっていくのを感じたよ。敢闘賞狙いのソロアタックのために、逃げで僕が力を出し惜しみしたってロセットが言っているって? それは違う。終盤一番力があるのは僕だったから、加速にロセットはついてこれなかったんだ。逃げでは仕事の分担はできていたと思う。ゴール前20kmまでは協力体制で走り、そこからは全力だった。途中で僕はもっと速く行けると思ったから、アタックに出たんだ」出典:レース主催者の公式リリースより

■ディラン・フルーネウェーヘン(チーム ユンボ・ヴィスマ)
(ステージ2位)「勝つときもあれば、負けるときもある。今日は僕が負けたんだ。前回はタイヤ半分の差で勝ったし、今日は同じ差で負けた。今日は集団の中で早くから積極的に動いてみた。それがうまくいって理想的なポジションにいたけれど、マイク(・テウニッセン)がこれ以上は牽けないと感じたタイミングでスプリントに入った。かなりの向かい風があったね。数ミリの差で負けたのは残念だったけれど、それがスプリントだ。スプリントを切ったとき、少し速すぎたと分かっていた。でも両側からライバルたちが来ていて、これ以上待てなかったんだ。勝ちたかったから、残念だよ」出典:チーム公式のリリースより

コメント翻訳:寺尾真紀

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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