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【ツール・ド・フランス 2019 第9ステージ / レースレポート】ジュリアン・アラフィリップが革命記念日でイエロージャージを纏う「一日一日進んでいく」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかマイヨ・ジョーヌで、7月14日革命記念日で、しかもレースが通過するのは6歳の頃から暮らすオーヴェルニュ地方!ジュリアン・アラフィリップにとってはまさに完璧な1日だった。おまけに沿道の熱狂とは対照的に、レース自体は本人曰く「極めて静か」だった。ステージ地に駆け付けた家族や友達の前で、5度目のイエロージャージ表彰式を楽しんだ。
前方はちっとも静かではなかった。序盤15㎞ほどのアタック合戦を勝ち抜いて、大きな一団が逃げ出した。「キャトーズジュイエ」の栄光を夢見るフランス人2人を含む15人の先頭集団には、上れるスプリンターからクライマーまで、果てには世界最高峰のタイムトライアリストさえも滑り込んだ。幸いなことに総合争いを脅かす選手は皆無。つまりメインプロトンはあっさり13分近いリードを許し、フィニッシュまでいまだ62㎞も残っているというのに……前方は区間勝利へ向けて激しいせめぎ合いへと突入した。
戦いの口火を切ったのはサイモン・クラーク。昨ブエルタでは大逃げ勝利をさらったオージーに続き、攻撃に転じたのはガルシア・コルティナだ。その直後にルーカス・ペストルベルガ—は、カウンターアタックで飛び出した。30㎞弱も単独で逃げ続けたが、この日最後の山岳にさしかかった残り15㎞、エスケープの友7人に捕らえられた。
オーヴェルニュが位置する中央山塊の起伏は、登坂距離こそ長くはないものの、勾配は決して優しくはない。この日の前半に登場した「ミュール=壁」という名を持つ1級峠は12%超の勾配が延々続いたし、最後の3級サン・ジュストも、中盤に9%ゾーンが潜んでいた。この急坂を利用して二コラス・ロッシュとティシュ・ベノートが加速。ダリル・インピーも後に続いた。
巴里祭にフランス人2人はすでに千切れ、フランスで生まれ育ち、選手としてはアイルランド国籍を選んだものの、私生活ではフランス人でもある(フランスは二重国籍が認められている)ロッシュもまた、いつしか前方から脱落した。むしろ先頭でフィニッシュ地へと駆け込んだのは、7月21日のベルギー独立記念日を早めに祝いたいベノートと、7月18日のネルソン・マンデラ国際デーに華を添えたい南ア出身インピーだった。
一騎打ちスプリントは後者が制した。2013年ツール「100回」記念大会ではマイヨ・ジョーヌを身にまとった。ダウンアンダーも2年連続で総合を制した。しかし「僕のキャリアに欠けていた唯一の勝利」、つまりツール・ド・フランスの区間勝利を、とうとうインピーはその手につかみとった
サン・ジュスト峠では、ロメン・バルデも動いた。フィニッシュ地のブリウドで生まれ育ったオーヴェルニュっ子は、「コースの隅々まで知り尽くしていた」からだ。ただし総合候補のリッチー・ポートとステフェン・クライスヴァイクがすかさず後輪に張り付いたせいか、ライバルたちから大急ぎで引きずりおろされた。強い向かい風にも邪魔された。
ただしアラフィリップから3分20秒、大多数の総合ライバルからも2分近くの遅れを喫しているバルデは、「地元でポジティヴなエネルギーを充填。この先は全開だ」と前を向く。また過去2大会連続、第9ステージで落車リタイアしてきたポートは、自身のツイッターにて「第9ステージ完了」と投稿。ようやく悪夢を振り払った。
<選手コメント>
■ダリル・インピー(ミッチェルトン・スコット)
(ステージ優勝)「7回ツール・ド・フランスに出場して、ずっと欠けていたピースがステージ優勝だったんだ。これまで何度も逃げに乗ってきて、とうとう勝つことができたなんて、夢が叶ったとしか言えないよ。本当に言葉にならない。このステージに実は目をつけていたんだ。14人の逃げにうまく入れて、いい協力体制で走れた。後は自分を信じ、最後はうまく駆け引きもできたと思う。フィニッシュでこんなにエモーショナルになったのはいつのことだろう。ツールという大レースで勝つなんて、夢みたいだ。最後にステージを勝った南アフリカ人は2007年のロバート・ハンターだから、南アにとってお祝いは久しぶりだし、それがちょうどパリ祭の日だなんて。魔法のような思い出になるよ。
まさに夢が叶った。プロとしてこのレベルで勝つのは、本当に大変なことなんだ。すべての準備を整え、すべての運が味方して、こうして勝つことができて、この上なく誇らしい。母国の南アフリカも喜んでくれるだろう。ずっと僕を支えてきてくれた家族にお礼を言いたいよ」出典:チームの公式リリースより
■ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
(総合リーダージャージ)「うまくレースをコントロールできたと思う。逃げは総合への脅威ではなかったから、チームメートの働きに身を任せて、ル・キャトーズ・ジュイエ(パリ祭)の雰囲気を味わうこともできた。フランス人選手にとってこの日の勝利は特別だけど、今日の目標ではなかったんだ。一日中油断はできなかった。風があって、しょっちゅう集団が長く伸びた(分団の危険があった)からね。昨日の頑張ったせいで、脚に疲れもあった。コースをかなり下見したから、この先何があるのか、どんな難しいステージが待っているかも分かっている。けれどこれまで通り、一日一日進んでいくよ。とにかく明日もこのジャージを着ることができるなんて、本当に幸せだ」出典:主催者の公式リリースより
■ティシュ・ベノート(ロット・スーダル)
(ステージ2位・ステージ敢闘賞獲得)「もちろん勝利を狙っていたから、敢闘賞のために走っていた訳じゃない。あの逃げから2位に入れたことは大きいけれど、そこまで行けたならやはり勝ちたかった。おそらく逃げの中ではダリル・インピーと僕が一番速い選手だったと思う。少人数のスプリントで勝つ力がある相手だとわかっていたから、難しかった。スプリントで不意打ちを狙ったけれど、それだけでは足りなかったね。今日のステージの間中、力がみなぎっているのを感じた。プレッシャーをかけて、逃げのメンバーをふるいにかけることもした。ロッシュに対してはうまくいったけれど、インピーには通じなかった。フィナーレに向けてのダウンヒルも僕のアドバンテージにはならなかった。ここ2日間あまり調子が良くなかったから、今日の走りはグッドニュース。脚に調子が戻ったしるしだと思う。まだ残り11ステージもあるから、きっとまたチャンスはある。チームもツキが続いていい感じだし、トーマス(・デヘント)、ティム(・ウェレンス)、そして自分が逃げに乗るチャンスが、2、3週目にもまた必ずやってくると思うな」出典:チームの公式リリースより
■ヤン・トラットニック(バーレーンメリダ)
(ステージ3位)「スーパーハッピーだよ。たぶん、僕のキャリアの中で一番のリザルトだと思う。フィニッシュラインを目指しながら胸がワクワクしたよ。まだ最初のツールだし、チャンスもそうそうにはめぐってこないだろうけど、でも自分の力を試してみたかったし、それがうまくいったんだ。メイン集団とのタイム差が約10分もあって、逃げ切りは確実だった。最後の峠がカギになると思ったんだ。ペースを考えて上ったけれど、山頂から500mのところで3人のリーダーから脱落してしまった。残りのグループと合流してインピーとベノートを捕らえようとしたけれど、彼らに追いつくことはできなかったね」出典:チーム公式リリースより
■ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)
(新人賞ジャージ)「僕らにとっては静かな日だったな。ジャスパー・ストゥイヴェンが前(逃げ)にいたから安心だった。最後の峠では集団の中で動きがあったけれどリッチー(・ポート)の好調は明らかだったし、チームとして自信を持って進めるね。マイヨジョーヌは失ったけど、若手選手の夢である白いジャージを着ていられる。自分のここまでのツールには大満足だよ。このポジションをできる限り守って、あとはチームのために働くよ」出典:レース主催者の公式リリース
■ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)
(ポイント賞ジャージ)「すごくハードな日ではなかったね。今後のステージのためにエネルギーをセーブする日だった。大人数の逃げは総合の脅威ではなかったから最後まで逃げ切ることができた。 チームと、勝利に賭けたルーカス・ペストルベルガ―に良くやったねと言ってあげたいよ」出典:本人の公式ウェブサイトより
コメント翻訳:寺尾真紀
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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