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サイクル ロードレース コラム 2019年7月14日

【ツール・ド・フランス 2019 第8ステージ / レースレポート】フランス人コンビで黄色ジャージ奪還!アラフィリップ「革命記念日にマイヨ・ジョーヌを着て走れることが誇らしい」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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アラフィリップとピノ

「革命記念日にマイヨ・ジョーヌを着て走れることが誇らしい」。自ら攻撃的に動くことで2日ぶりに黄色いジャージを取り戻したジュリアン・アラフィリップは、なによりも先にこんなセリフを吐いた。今年は「フランス人のツール」になるかもしれない……開幕前からそんな予感を抱いてきた地元フランス自転車関係者たちは、それぞれの立場を忘れて歓喜した。しかも「1985年ベルナール・イノー以来の仏人総合優勝」を期待されるティボー・ピノが、アラフィリップとの共闘を成功させ、総合勢の中では最高位に躍り出たのだ。

激動のステージは、トーマス・デヘントのアタックで幕を開けた。ロングエスケープで全3大ツール区間勝利を手にした「逃げ職人」の動きに、大逃げでブエルタ区間3勝+ツールスーパー敢闘賞のアレッサンドロ・デマルキ、やはり大逃げで昨ブエルタ2区間を制したベンジャミン・キング、さらには独走でモニュメント2勝をさらったニキ・テルプストラが追随する。

とてつもなく強力な逃げメンバーは、メイン集団からたったの最大4分45秒差しか最大リードを奪えなかった。だからこそ全部で7つある山岳のうち、5つ目のクロワ・ド・パールで、デマルキと共に前方へと飛び出した。さらに「デマルキ大好き!!だって僕と同じタイプだからね」と語ったデヘントは、残り14km、7つ目の山岳ジャイエールで独走態勢に入った。メイン集団はわずか1分差に迫っていた。

デヘントが勝利に向かって飛び出す、ほんの1kmほど手前で、衝撃的な事故が発生する。EFエデュケーションファーストの選手の落車に巻き込まれ、前年覇者ゲラント・トーマスが将棋倒しになったのだ!同時に地面に転がり落ちたジャンニ・モスコンの自転車の破壊具合を見る限り、トーマスが2019年のマイヨ・ジョーヌ争いから永遠に脱落してもおかしくなかった。ただ幸いにも第1ステージにも落車しつつ、ほぼ無傷で抜け出した「G」は、この日も素早く走行再開。頼もしい同僚たちが奮闘してくれたおかげで、無事に集団に追いついた。

アラフィリップ

たしかにトーマスは無事に集団には追いついたが、手強いライバルからはタイムを失うことになる。デヘントがアタックを打ったのとほぼ同じ場所で、アラフィリップが力強い加速に転じたからだ。すかさず反応できたのはピノだけ!

「僕にとって未知のコースだった。隅々まで下見していたであろうピノの存在が助けになった」というアラフィリップと、「アラフィリップがアタックするだろうことは分かってた。ついていけるよう1日中注意深く過ごした」というピノには、共通の目的があった。それは後方のライバルに対してタイム差を稼ぐこと。まずは山頂の「ボーナスポイント」で、それぞれ5秒と2秒のボーナスタイムを収集した。それだけでは飽き足らず……アラフィリップは6秒差で黄色をまとうチッコーネを、ピノは自らより総合で9秒先を行くトーマスを置き去りにして、猛然と突進を続けた。

フィニッシュラインぎりぎりまで全力で踏み続けたデヘントが、自身2つ目のツール区間勝利をもぎ取ったわずか6秒後、やはりぎりぎりまで全力疾走を続けたピノとアラフィリップがラインを越えた。チッコーネやトーマスを含む33人の集団がレースを終えたのは、それから20秒後のことだった。

アラフィリップが再びマイヨ・ジョーヌに輝き、チッコーネは23秒差の2位に一歩後退。黄色から白い新人賞ジャージに着替えた。ピノは前日までの総合7位から、53秒差の総合3位に浮上した。以下は4位ジョージ・ベネット1分10秒差、5位トーマス1分12秒差、6位エガン・ベルナル1分16秒差と続く。ピノから1分以内にいまだ9選手がひしめき合っている一方で、2014年ツール総合覇者ヴィンチェンツォ・ニバリは、この日だけでピノから4分19秒ものタイムを失った。フランスが栄光に沸いた影では、隣国イタリアにとって失望の1日となってしまった。

<選手コメント>

■トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
(ステージ優勝・敢闘賞)「チームとしては、今日はどうしても誰かを逃げに送りこみたいと思っていた。集団からの最初のアタックがそのまま今日の逃げになったけれど、覚悟していた割には、拍子抜けするほどすんなり逃げに乗れた。ただ、メイン集団は僕たち4人をあまり先には行かせてくれなかったね。でも僕にとっては、今日のコースで集団との大きなタイム差は必要ない。頭を使って賢く走ればいいだけだから。

そのうち逃げは僕とデマルキだけになり、そこからは逃げ切りのために二人とも全力で進んだ。ゴール前70kmで独走になったけれど、フィニッシュに近づいたところで、アラフィリップとピノの追走を知らされた。アラフィリップが偉大なダウンヒラーであることは僕も知っている。だから、残っている力の全てを振り絞るしかなかった。力をほとんど使い果して、吐いてしまいそうなくらいだった。幸い最後まで持ちこたえることができたけれどね!

自分にとって、キャリア最高の走りだったと言えるんじゃないかな。あのモン・ヴァントゥでの勝利と比べても、今日の勝利が上だね! ほとんど奇跡のようなコンディションの脚で、本当に素晴らしい一日を過ごすことができた。あとでマッサージが必要って? マッサージはあんまり趣味じゃなくてね(笑)」出典:チームの公式リリースより抜粋

■ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
(総合リーダージャージ・ステージ3位)「そのこと(アタックからマイヨ・ジョーヌを狙うこと)は頭の片隅にあった。実現可能だということはわかっていたけれど、ものすごくペースが速くて、タフな一日だった。フィニッシュから14kmほど手前の山岳(3級山岳ラ・ジェイレール)がアタックのチャンスだった。目標に集中していたし、失うものは何もなかったから。とにかく全ての力でアタックをかけたけれど、ティボー・ピノはおそらく僕の動きを予測していたと思う。すぐに反応して、追いかけてきた。そこからは二人とも全力だった。僕にとっても彼にとっても得られるものは大きかった。彼は総合のライバルたちに対して優位に立てる。二人で力を合わせていい走りができたと思う。明日(革命記念日)をマイヨ・ジョーヌで過ごせるなんて、本当にうれしいよ。

いいメンバーの、とても強力な逃げだった。トレック(・セガフレード)は逃げ切りが成功するようにレースをコントロールしようとしていたけれど、サガンやマシューズのチームはステージ優勝を狙っていた。トーマス・デヘントが逃げ切れてよかったと思う。勇気のある逃げが報われたんだからね」出典:レース主催者の公式リリース

■ティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ)
(ステージ2位・総合3位)「美しいコースの、とてもハードなステージだったね。昨夜からラ・ジェイレールでのアラフィリップのアタックに備えていたんだ。調子は良かったから、できる限り彼に追走しようと思っていた。彼についていくのは並大抵のことじゃないからね。協力したほうがいいことはお互いわかっていた。あとちょっとのところでデヘントを捕まえられなかったのは残念だったけれど。ジュリアン(・アラフィリップ)について行けたというだけでも、ほとんど勝ったのと同じと言えるかもしれないね。アップダウンの連続で、誰にとっても本当に厳しいステージだった。もしかすると、今年のツールで一番ハードなステージだったかもしれない。

調子はとてもいいし、まだレースは2週間も残っているから、とにかく少しずつ前に進んでいくよ。プレッシャーはあるけれど、自分で自分にかけるプレッシャーが一番大きなものかもしれない。僕のために一生懸命やってくれているチームを落胆させたくないんだ。

一年前の僕はテレビの前にいた。そのとき、フランス人選手にとってどれだけツールが大切なものかを理解したんだ。去年のブエルタ以来ツールのことを意識してきた。だからこのステージで3位に入れたのは本当に意味があることなんだ」出典:チーム公式のリリースより抜粋

■ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)
(ステージ5位・ポイント賞ジャージ)「今日はずいぶんエネルギーを消耗したね。グルペットで過ごした方がずっと良かったのかもしれない。けれど、ポイント賞ジャージのために、ライバルたちと一緒に走らなくてはならなかった。ハードだったステージの疲れから、何とか回復するようにするよ。今日の僕に勝ち目はなかった。最終峠がかなり難しいことはわかっていたし、絶対にジュリアン(・アラフィリップ)がアタックするだろうと思っていた。彼にとってパーフェクトの上りだったんだ。先日(第3ステージ)彼がアタックしたときと同じだよ。マイヨ・ジョーヌを奪回するというチャンスを、こうやってものにした彼におめでとうだよ」出典:レース主催者の公式リリース

■ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)
(新人賞ジャージ)「とてもハードなステージだった。みんなで最大限の力を尽くした。チームメートにお礼を言いたいよ。アラフィリップのためのステージだったね。彼がマイヨジョーヌを獲り返して良かったと思う。彼は強い意志でやり遂げたんだ。アラフィリップがアタックしたとき、僕はもう限界だった。一日、集団前方で走り続けた後だったからね。ただ、 こんなステージをレースの前方で走り続けられたということは、調子がいいということ。この状況での自分の走りに満足しているよ。マイヨジョーヌを2日間着ることができたというのは、本当に格別の体験だった。またこの先に何かサプライズが起こせるかもしれないし、またチームでがんばってみるよ」出典:レース主催者の公式リリース

■ゲラント・トーマス(チーム イネオス)
(ステージ10位・総合5位)「ケガもないし、大丈夫だよ。でも、レースのカギとなるポイントであの落車が起こってしまったことにはがっかりしている。ウッズの落車にジャンニ(・モスコン)が巻き込まれ、ジャンニのバイクに引っかかってしまったんだ。再度走り出せるまでちょっとかかったけれど、仲間たちのおかげで集団に戻ることができた。

最後の峠で集団に追いついて、だんだんとポジションを上げて行っていた。先頭から15~20番目くらいまで来たところで、ボーナスタイムを狙ってアラフィリップとピノがアタックをかけたんだ。先頭でみんなを牽くつもりはなかった。サンウェブにはまだ数が残っていたし、前に行きたい選手がいることもわかっていた。「自分で動けよ」と内心は思っていたよ。

もちろん苛立ちや悔しい気持ちもあるけれど、落車から集団に復帰できたのは脚の調子が良いということ。けれど、無駄なタイムロスは避けたいし、クラッシュがなければアタックに反応することができて、レースは違う展開になっていたかもしれない。でも仕方がないね。まだまだレースはたくさん残っているし」出典:チーム公式のリリースより

コメント翻訳:寺尾真紀

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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