人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
【ツール・ド・フランス 2019 第7ステージ / レースレポート】フルーネウェーヘンがリベンジを果たす「加速をすると決めて、そこから先は一切、他選手の動きは見なかった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか蒸し暑い午後だった。2019年大会最長の230kmステージで、選手たちは6時間以上もサドルの上で過ごした。幸いにもマイヨ・ジョーヌのジュリオ・チッコーネが「200kmはのんびり、ラスト30kmだけがナーバス」と語ったように、大多数にとってはそれほど難解な1日ではなかった。勝負は大集団スプリントフィニッシュに持ち込まれ、ディラン・フルーネウェーヘンが待望の今大会1勝目を手に入れた。
スタート直後にヨハン・オフレドとステファヌ・ロセットが飛び出した。いわゆる「平坦」の「誰も逃げたがらない」ステージであえて仕掛けることを信条とするオフレドと、「こんな昔風の自転車レースが好きなんだ」と語ったロセットは、そこから215kmにも渡って最前線で過ごすことになる。仲の良い2人は時に励ましながら、時に冗談を飛ばしあいながら、時には「30分ものリードを許されて逃げ切ることを夢見たり」しながら、ペダルを回し続けた。
しかしスプリンターを擁するドゥクーニンク・クイックステップ、ユンボ・ヴィスマ、ロット・スーダルが、2人を決して遠くには逃がさなかった。最大5分半のリードしか許さず、大半の時間帯は2分程度で泳がせておいた。そしてフィニッシュまで残り13km、満を持してロセットとオフレドは大きな波に飲み込まれていった。
数人の選手にとっては、決して簡単な1日ではなかった。走り出してすぐに、今大会マイヨ・ジョーヌ第1号マイク・テウニッセンとティージェイ・ヴァンガーデレンが、中央分離帯に邪魔され落車。特に後者は顔面と左膝からおびただしい流血が見られた。また終盤に向けて徐々に走行スピードが上がると、残り30km、横風で軽い分断も発生。一時は総合表彰台候補のナイロ・キンタナが後方に取り残される一幕も。
つまりチッコーネを少々ハラハラさせたラスト30kmに突入した。イエローを守りたいトレック・セガフレード、区間勝利を争いたいスプリンターチーム、さらにはこの先に向けてタイムを1秒たりとも失いたくない総合系チームが……我先にプロトン前線へと競り上がった。緊迫感は自ずと増し、スピードも急激に上昇していった。
幾本ものトレインが連なり、複数のチームが主導権を奪い合った。ラスト1kmのアーチを抜けた後、最前列に駆け上がったのはドゥクーニンク・クイックステップ。4両仕立ての列車は、まさにエリア・ヴィヴィアーニを勝利へと導いた第4ステージと同じように、着実にフィニッシュラインへと突き進んでいた。ヴィヴィアーニの後輪にはペーター・サガンが、さらにその背後にはカレブ・ユアンがぴたり張り付いた。
しかしフィニッシュ手前250m。ユアンの後輪にするりと横入りしたフルーネウェーヘンが、そのままロングスプリントへと打って出た。「加速をすると決めて、そこから先は一切、他選手の動きは見なかった」と、一直線に突き進んだ。慌ててサガンとユアンが後を追うも、わずかに足りず。第1ステージの落車で区間勝利……とマイヨ・ジョーヌ着用のチャンスを失ったフルーネウェーヘンが、笑顔でリベンジを果たした。ツールでは3年連続、通算ステージ4勝目。
ちなみに「なぜか車輪が滑って上手く進まない」と感じたヴィヴィアーニは6位に沈んだ。フィニッシュ後に前輪がパンクしていたことに気が付いた。3位で終え、これにて今大会ステージ1位から5位まで全てを経験したサガンは、TV画面でスプリント映像を見直してからマイヨ・ヴェール表彰式に臨んだ。中間スプリントではソンニ・コロブレッリに3位通過=メイン集団内先頭通過を奪われたものの、2位以下に56ptもの大差をつけポイント賞首位を突っ走っている。
<選手コメント>
■ディラン・フルーネウェーヘン(チーム ユンボ・ヴィスマ)
(ステージ優勝)「このツールは、僕が思っていたようには始まらなかった。初日の落車の影響から回復するのに、何日かかかった。今日は調子が戻ったように感じたんだ。フィナーレのスプリントに向けて早めに隊列を作っていたせいで、他チームに閉じ込められる(前を塞がれる)ような形になってしまった。マイク(・テウニッセン)がうまくスペースを作って、僕が前に抜け出せるようにしてくれた。この勝利のおかげで、僕のツールは成功したとやっと言えるよ。
この勝利が本当に欲しかったんだ。一度目も二度目もチャンスをものにできなかったけれど、まさに三度目の正直だね」出典:チームの公式リリースより
■ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)
(総合リーダージャージ・新人賞ジャージ)「フィナーレはクレージーだったし、昨日のステージで脚もちょっと疲れていた。でもまたイエローを着ることができたよ。明日もまたハードなステージになる。もちろんマイヨジョーヌをキープできるように頑張るけれど、たったの6秒差だから、かなり難しいだろうな。とても難しいよ。6秒差なんてなしに等しいからね。とにかくまずはリカバリーが大事で、明日はどうなるかやってみるしかない。マイヨ・ジョーヌでは、逃げは不可能だもの」出典:レース主催者の公式リリース
■ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)
(ステージ3位・ポイント賞ジャージ)「今日の走りや結果には満足だよ。風のあるとても長いステージで、かなり遅いスピードで進んだ。最後は予測通りの集団スプリント。結果的には一番速い選手が勝ったけれど、チームは今日もよくやってくれたと思う。中間スプリントでポイントを集められたし、ステージ3位でさらにポイントを稼いで、(ポイント賞2位との)差を広げることができた。調子はいいし、明日はタフなステージになるけど、チームでベストを尽くすよ」出典:本人の公式ウェブサイトより
■カレブ・ユアン(ロット・スーダル)
(ステージ2位)「今日のステージで力は示すことができた。でも、まだ勝ちを追いかけている状態だよ。ラインまで全力でスプリントしたけれど、勝利には足りなかった。もちろん悔しいし、勝ちたい。これまでにも、グランツールの1週目に勝てなくて、そのあと勝てたことがある。だから今回もできると信じているよ。ここ数回のスプリントで、いいところまで行けることは証明できたと思う。今日も勝利まであとちょっとだった。少しの運さえあれば、必ず勝てると思う。今日は少し違うリードアウトを試してみた。他の選手の後ろにつけるように運んでもらったんだ。その後輪(注:サガン選手の後輪)から、自分の思う通りのタイミングで飛び出してスプリントを切った。ほぼパーフェクトなスプリントができたと思うけれど、ディラン(・フルーネウェーヘン)の方が少し速かったね」出典:チーム公式の動画より抜粋
コメント翻訳:寺尾真紀
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
Cycle* UCIシクロクロス ワールドカップ 2024/25 第1戦 アントウェルペン(ベルギー)
11月24日 午後11:00〜
-
Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース
9月29日 午後5:25〜
-
Cycle* J:COM presents 2024 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
11月2日 午後2:30〜
-
10月12日 午後9:00〜
-
11月11日 午後7:00〜
-
【先行】Cycle*2024 宇都宮ジャパンカップ サイクルロードレース
10月20日 午前8:55〜
-
【限定】Cycle* ツール・ド・フランス2025 ルートプレゼンテーション
10月29日 午後6:55〜
-
10月10日 午後9:15〜
J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!