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サイクル ロードレース コラム 2019年7月11日

【ツール・ド・フランス 2019 第5ステージ / レースレポート】千両役者ペーター・サガンが待望の1冠「やっと勝てた」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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フィニッシュ

「やっと勝てた」。フィニッシュ直後にペーター・サガンは、ほっとしたように吐き出した。今年の2月に「ほんの数日間で体重が何キロも落ちた」あと、思うような走りができずに苦しんできた。2019年ツールは初日から2位、(TTT12位)、5位、4位と好成績を連発しながらも、あと一歩が足りなかった。ようやく待望の勝利を手に入れた。大会3日目からすでに我がものとしているマイヨ・ヴェールも、堂々と着こなすことができる。

「ボーラ・ハンスグローエとサンウェブがレース制御してくれたし、小さな逃げ集団には総合を脅かす選手が1人もいなかったから、僕にとってもチームにとっても比較的簡単な1日だった」。やはり大会3日目からマイヨ・ジョーヌを着ているジュリアン・アラフィリップがこう語ったように、「上りもこなせるスプリンター」「いまだ今ツール0勝」「マイヨ・ヴェール経験者」のサガンとマイケル・マシューズを擁する両チームが、ステージ序盤から献身的に働いた。激しい飛び出し合戦の末に20km地点で4選手が飛び出したが、スプリント勝利に持ち込みたい2チームが、決して2分半以上のリードを与えなかった。

「本当は区間勝利を目指して逃げたんだけど」と告白したティム・ウェレンスは、すぐに山岳ポイント収集に切り替えた。後半に4つ待ち構えていた山岳のうち、最初の2つで先頭通過。上記2人と同じように3日目に手にした赤玉ジャージを、さらにしっかりと着込んだ。

ペーター・サガン

飛び出した4人の中で、昨夏に5日間赤玉を着たトム・スクウィンシュだけが最後まで逃げを諦めなかった。しかし「望むのは簡単だけど、成功を手繰り寄せるのは難しいね」と、残り約20kmでメイン集団に飲み込まれた。6日目には敢闘賞の赤いゼッケンをつけて走る。

4つ目の山で全ての逃げが吸収され、同じ4つ目の山でメイン集団から多くの選手が脱落していった。最後の平地で単独アタックで攪乱を試みたルイ・コスタも、残り2kmで回収された。80人ほどに小さくなったプロトンは、集団スプリントへと突き進んだ。そしてスプリンターたち……いや、むしろクラシックハンターたちの大バトルを、サガンが制した。新人賞ジャージ姿で猛烈に追い上げてきたワウト・ヴァンアールトを、ぎりぎりで振り切って。

翌日の第6ステージ、いよいよツールのプロトンは、本格的な難関山岳ステージへと放り込まれる。これまで控えめに走ってきた総合本命たちが、本格的なバトルへと突入する。サガンの着ているマイヨ・ヴェールを除いて……ジャージ争いも一気に活発化するはずだ。アラフィリップは「厳しいだろうが、マイヨ・ジョーヌを守るために全力を尽くす」と誓い、ウェレンスは「明日はきっと山岳ジャージを失うだろう。今後は改めて区間勝利を目指す」とすでに気持ちを切り替えた。ヴァンアールトは「明日は僕にとってはむしろ静かな1日になると思う」と、やはり白いジャージに別れを告げる覚悟のようだ。

■ペーター・サガン (ボーラ・ハンスグローエ)
(ステージ優勝・ポイント賞ジャージ)「とにかく情熱を持って走っていれば、いつか勝利をつかむことができる。チームメートたちにありがとうを言わなくちゃ。彼らが素晴らしい働きをしてくれたおかげで、追い求めていたツールのステージ勝利がとうとう実現したんだからね。僕たちにとって、本当にうれしいことだよ。

最終盤ではルイ・コスタが独走してちょっと危ない場面もあったけれど、チームメートたちがうまく状況をコントロールしてくれた。そこからは、忍耐と待ち。誰の後輪につくかを慎重に見極め、あとは良いタイミングでスプリントに入るだけ。今日のフィナーレで、僕の脚は最高のコンディションだった。上りでは少し苦しんだけれど、全体的には良いステージになったと思う。

(ポイント賞で2位と45ポイント差は)“たったの”45ポイント。気を抜かず、進み続けるだけさ!」出典:レース主催者の公式リリースと、インタビュー動画より

■ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
(総合リーダージャージ)「楽な一日ではなかったよ。けれど、集団前方でいいポジションを取ろうとする僕を、チームの仲間たちが助けてくれた。今日のステージを無事に走り終え、もう一日マイヨ・ジョーヌを着られることになって、うれしいよ。このジャージを身につけることは、本当に特別なことだ。うまく説明するのは難しいけれど、けっして忘れることのないアメージングな気持ちだと言えばいいかな。これほどたくさんの人が、僕に歓声を送り、名前を呼んでくれるのは、信じがたいことだ。明日のステージで何が起きたとしても、この思いや体験は、永遠に心の中にとどめておくよ」出典:チームの公式リリースより

■ウァウト・ヴァンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ)
(新人賞ジャージ・ステージ2位・総合2位)「ペーター・サガンのスプリントはとても強力だった。彼は、今日みたいなステージのスペシャリストのようなものだからね。ハードなスプリントだった。ゴール400m前のラウンドアバウトでかなりの混乱状態になったけれど、僕は前方から4番手につくことができた。ゴール手前では向かい風になることがわかっていたから、なるべくスプリントに入るのを遅らせたほうが良かったし、それでサガンの後ろについたんだ。だけど、たぶん長く待ちすぎてしまったんだな。明日はできればもう少し気楽に走りたいよ」出典:主催者の公式リリースより

「この地域を僕はよく知っているんだ。だから、僕には厳しすぎる上りになると思う。おそらく新人賞ジャージを失ってしまうことになるだろうけれど、とにかくチームとしては、ファンタスティックなツールの出だしになったと思うよ」出典:チームの公式リリースより抜粋

■ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
(山岳賞ジャージ)「今日逃げに入るには、少しばかりの運が必要だった。けれど、今日のメイン集団は、僕ら(逃げ)をけっして前には行かせてくれなかった。僕がアタックするときは、いつもステージを狙いと彼らもわかっているからね。今日は逃げ切りは不可能だとすぐに悟ったから、山岳賞ポイントに目標を切り替えて、それがうまくいった。山岳賞ジャージを着て走ることは、素敵なことだからね。ジロで山岳賞ジャージを着たときには、普段とあまり変わらなかった。けれど、ツールの山岳賞は特別だ。僕の脚の調子で言えば、今日はいまいちだった。だから明日は僕は『お休み』して、(チームメートの)トーマス・デヘントが活躍する番になったらいいなと思う。これまでのところ、彼はツキに恵まれなくてまだうまく逃げに乗れていない。けれど、明日は彼が輝く一日になって、僕の方は次のチャンスに向けて力をためることができたらいいな」出典:主催者の公式リリースより

■トームス・スクウィンシュ(トレック・セガフレード)
(ステージ敢闘賞獲得)「今日も一日先頭を走ったけれど、ツールの初日ほどたいへんではなかった。途中、山岳ポイントを取らせてほしいとティム・ウェレンスに頼まれて、ノーとは言えなかった。逃げが成功するチャンスを少しでも大きくするためにね。結果的には、誰にとってもプラスに働いたと思う。逃げの中でいちばん力が残っているのは僕だと感じたから、メイン集団が近づいてきたとき再度のアタックに出た。体力的にはきつかったし、脚はからっぽだったけれど、何かできないか試してみたかったんだ。最後の峠では、もう何のエネルギーも残っていなかったよ」出典:レース主催者の公式リリースより抜粋

■マッテオ・トレンティン(ミッチェルトン・スコット)
(ステージ3位)「昨日上位に入ったようなピュア・スプリンターたちにとっては、間違いなく厳しいステージだったね。レースは良いペースで進んだし、最後はやはり「上れるスプリンター』たちの争いになった。今日のトップ5も、なるほどと納得するような顔ぶれだったと思うよ。ダリル(・インピー)のリードアウトはパーフェクトで、ラウンドアバウトのところで最高のポジションにリードしてくれた。けれど、とにかくサガンの方が速かった。サガンは僕の後輪についていたから、僕のスプリントを予測していたんだと思う。サガンが僕をかわして、それからヴァンアールトが背後から飛び出してきた。あとは2位をめぐる数cmの争いになったんだ」出典:チームの公式ツイートより

コメント翻訳:寺尾真紀

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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