人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2019年7月9日

【ツール・ド・フランス 2019 第3ステージ / レースレポート】アラフィリップが夢のシナリオに成功「夢を叶えたこの信じられないような瞬間を、とにかく今はチームとともに味わいたい」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line
マイヨ・ジョーヌを纏ったジュリアン・アラフィリップ

マイク・テウニッセンが「2日間の夢」から覚め、ジュリアン・アラフィリップが「夢のシナリオ」を成功させた。自転車熱狂の国ベルギーを抜け出し、フランスへと帰還したツール・ド・フランスが、2019年大会初のフランス人区間勝利と、5年ぶりのフランス人マイヨ・ジョーヌを祝った。

スタート直後には5人の逃げ集団が出来上がった。4人のフランス人と、1人のベルギー人。「本当ならばトーマス・デヘントが逃げを試みる予定だった」けれど、前方へと飛び乗ったのは仲良しのティム・ウェレンスのほうだった。しかも一時は6分以上のリードを許したメイン集団が、ステージ後半に追走スピードを急速に上げてきたことを感じると……残り45km、ウェレンスは単独でさらに前へと飛び出した。そこから先には4つの山岳と、無数のアップダウンが待ち受けていた。

山岳ポイント収集のための逃げは、いつしか区間勝利を追い求める独走へと変わっていった。本気で勝ちを信じ始めた。しかしユンボ・ヴィスマが制御し続けたメイン集団からテウニッセンが脱落し、代わりにドゥクーニンク・クイックステップやアスタナが追走の主導権を奪い取ると、ウェレンスはすぐに悟った。「勝利は難しいだろう」と。しかも4つ目の山でパンクし、「アラフィリップについていくことは、もはや不可能となった」。幸いにも4つ全ての山で先頭通過を果たし、マイヨ・ア・ポワはしっかりと手に入れた。

トップでフィニッシュするアラフィリプ

その4つ目の3級ミュティニー坂で、アラフィリップは勝利へと向かって飛び立った。ウェレンスと同じく、やはり予定外のアタックだった。「こんなに遠くで攻撃するつもりはなかった」と。ただあまりにも調子が良かったものだから、本能に突き動かされるように、ペダルを踏む脚を強めた。フィニッシュまで残り約15km、つまり山頂を過ぎたところで、単独先頭に躍り出た。

第2ステージ終了時点で31秒遅れの総合11位につけていたアラフィリップは、正直マイヨ・ジョーヌのことはそれほど考えていなかったと言う。むしろ最高に美しい流儀で、自分にできる最高のやり方で、ステージ優勝を獲ることにこだわった。最後まで気持ちを切らさなかった。勾配8%の坂道のてっぺんに引かれたフィニッシュラインにたどり着いた時、後続には26秒差をつけていた。人生3度目のツール区間勝利には、人生初めてのマイヨ・ジョーヌが「ボーナス」としてついてきた。

頑なに「総合争いは考えていない」と語るアラフィリップの背後では、総合表彰台候補のティボ・ピノーとエガン・ベルナルが、大多数のライバルたちに5秒先んじてフィニッシュ。一方でジロからの転戦組のイルヌール・ザカリンとサイモン・イェーツが、それぞれ3分51秒と6分23秒遅れで1日を終えた。

<選手コメント>

■ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
(総合リーダージャージ)「言葉にならないような気持ちだ。ツールに来る前からこのシナリオを夢見てきた。このステージで勝ち、マイヨジョーヌを手にするという…。だから、本当に集中していた。困難な闘いになることはわかっていたけれどね。フルパワーで自分の力のすべてを使い、ステージ勝利とマイヨ・ジョーヌの両方を手に入れられたことは、間違いなく僕のキャリアの中で最高の瞬間の一つだと言えるよ!

チームメートは一日僕のことを守ってくれた。エネルギーを節約して、最後の数キロメートルに備えるようにしたんだ。有利なポジションで上ることができるよう、(最後の3級山岳の)ミュティニー峠にさしかかるところで、ドリス(・デヴェナインス)にペースアップを頼んだ。そこから全力でアタックをして、それから後ろを振り返ることはなかった。もともと、ソロアタックするつもりはなかったんだけれど、ペダルを踏み続けているうちに、後ろとの差が1分近くまで広がっていた。今日のコースのフィニッシュは知っているし、自分に向いていることもわかっていた。けれど、優勝候補として名前を挙げられている中で、その期待に応えていくのは、いつもとても難しいことだからね。

言葉がないよ。夢を叶えたこの信じられないような瞬間を、とにかく今はチームとともに味わいたい」出典:チームのプレスリリースより

■ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
(山岳賞ジャージ)「もともと、僕のアタックは予定になくて、トーマス・デヘントが逃げに乗る予定だった。けれど、彼の逃げのことは他チームにもよく知られてしまっているから、マークをされてアタックが難しかったんだ。幸い、僕は一度のトライで逃げに乗ることができた。それが今日のレースの先行集団になる逃げグループだった。逃げグループ内での協力体制はスムーズだったし、タイム差はみるみるうちに6分に広がった。けれど、メイン集団が加速すると、このペースでは到底逃げ切れないことは明らかだった。逃げグループの中では自分に一番力があるとわかっていたから、残り45kmでアタックに出たんだ。

もともとは、ポルカドット(山岳賞)ジャージのポイントを集めることを考えてのアタックだった。もしかしたらそれ以上(ステージ優勝)の可能性もあるかもしれない、と思い始めたところで、プロトン(メイン集団)のペースが上がり、ステージ勝利はちょっと難しくなってしまった。最後の峠(3級山岳ミュティニー峠)のふもとでパンクして、足止めを余儀なくされた。幸い、山岳賞の残り2ポイントを獲得することはできたけれど、アラフィリップを追って、もっといい成績を狙うことはできなくなってしまった。

アラフィリップを負かすことはとても難しかったと思うけれど、絶対とは言えないからね。彼について行って、もっといい結果を残せたかもしれない。とはいえ、山岳賞ジャージにはとても満足だよ! 明日はこのジャージを失う危険はないし。水曜と木曜はたくさんの山岳賞ポイントが競われるけれど、また逃げてもう少し長くこのジャージを着ていられるかどうかは、その日の調子によるだろうね」出典:チームのプレスリリースより

■ペーター・サガン (ボーラ・ハンスグローエ)
(ポイント賞ジャージ)「とにかくフルスロットルで行った。レース終盤には難しくて神経をつかう急な峠がいくつかあった。ジュリアン・アラフィリップのアタックには驚いた。あのままゴールまで行けたとは、彼に「おめでとう!」だよ! とても力強いアタックだったね。 明日のフィニッシュは集団スプリントを狙っていく。今の状況は良いとも悪いとも言えないね。マイケル・マシューズとの差はたった数ポイントだし。ポイント賞ジャージの争いはまだ始まったばかり。パリまではまだまだ長い道のりだよ」出典:レース主催者の公式リリースより

■ウァウト・ヴァンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ)
(新人賞ジャージ)「今日のステージには僕とマイク(・テウニッセン)という2つのオプションがあった。けれど、あまり調子が良くないとマイクが途中で伝えてきて、僕が自由に走っていいことになった。集団の先頭に最後まで残り、マイヨ・ジョーヌを狙うのが目標だったけれど、今日の峠は思ったよりずっと急だった。マイヨジョーヌを狙いながら手に入れられなかったことは本当にがっかりだけれど、力の限界だった。総合狙いの選手たちを相手にしていたんだからね。僕たちはパーフェクトな走りをしたけれど、アラフィリップは誰よりも強かった。勝利にふさわしい選手が結果として勝ったんだ。新人賞ジャージを守れたことだけでも、かなりうれしいし、よかったと思う。素晴らしい週末でツールをスタートしたけれど、明日からはもともとのゴールに集中しなおす。ステフェン(・クライスヴァイク)の総合争いと、ディラン(・フルーネウェーヘン)のステージ優勝だ。ディランは第1ステージの落車の影響から順調に回復しているから、明日は彼のステージ勝利を狙っていく」出典:レース主催者の公式リリースより

コメント翻訳:寺尾真紀

Cycle*2019 ツール・ド・フランス 第3ステージ ハイライト

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ