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サイクル ロードレース コラム 2019年6月18日

【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ / レビュー】大荒れのツール前哨戦、フグルサングがキャリア2度目のドーフィネ総合制覇「2013年よりはるかに自分が強くなったと感じている」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ

大荒れのツール前哨戦だった。まずは天候的に。2019年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのプロトンは、連日ひどい強風や豪雨に晒され、時には雷や雹にさえ襲われた。そして展開的にも。なにしろ7月の主役候補たちが好調さをアピールするどころか、次々と大会を去っていったからだ。

中でもクリス・フルームは、「5勝クラブ」挑戦の貴重な機会を棒に振った。4日目の個人タイムトライアルの下見中に、突風に煽られ壁に激突。右大腿骨、右肘、右肋骨の骨折、さらには椎骨と胸骨にも亀裂が見つかり、6ヶ月の戦線離脱を余儀なくされた。

また昨季はフルームと共にジロ&ツール表彰台に上ったトム・デュムランも、7日目に出走を取りやめた。理由はジロ第4ステージでの落車負傷で痛めた左膝が、炎症を起こしたから。ただ直後に小さな外科手術を受け、膝に入り込んでいた小さな石を摘出。早速ツールに向けて最後の高地トレーニングへと向かっている。

大雨で体調を崩したアダム・イェーツとステフェン・クライスヴァイクも、最終日半ばに自転車を降りた。特にイェーツは3日間リーダージャージを着用し、最終第8ステージでも8秒差の2位につけていたが、激しい胃痛で先を続けることは不可能だった。

たとえ最後まで生き残ったからといって、全員が満足して大会を後にしたわけではない。リッチー・ポートは得意の個人TTで思うようなタイムが出せず総合11位、ナイロ・キンタナは最終日のアタックが実を結ばず総合9位。

またフランス期待の星ロメン・バルデは総合10位で終え、「チームも僕自身も良くなかった」と苛立ちを見せた。ただ大会閉幕の翌日にモン・ヴァントゥ・チャレンジに出場し、好走で2位に食い込んだ。同じくフランス人のティボ・ピノは、大会序盤にひいた風邪の影響で、総合5位に甘んじた。それでも結果には「フラストレーションを感じ」つつ、「歯を食いしばって最後まで戦い抜けた」ことには満足している。

ヤコブ・フグルサング

結局のところ、このツール前哨戦で、極めてポジティヴな結果を引き寄せられたのは数人だけ。総合2位ティージェイ・ヴァンガーデレン(「表彰台は嬉しいけど、ツールのエースはあくまでウランだから」)や3位エマヌエル・ブフマン(「目標の表彰台乗りを果たせて、これ以上の喜びはない。早くツールに出たい!」)はもちろんのこと、個人TT&スプリントを制したウァウト・ヴァンアールトも、「子供の頃から夢だったツールに初出場できるだけじゃなく、これほど調子良く乗り込めるなんて最高だ」と7月の到来が待ちきれない。

山岳賞ジャージを持ち帰ったジュリアン・アラフィリップもまた、ツールに向けての「テストを成功」させた。山岳ステージでは1勝も手に入れた。なにより連日のようにアタックを繰り出した。実はあえてヘトヘトになることで、肉体の「超回復」を狙ったのだという。大会後は数日間の休息を取った後、アルプス山岳ステージの下見に出かける(ピレネーはすでに下見済み)。それから「今ツールの目標は1週目の区間優勝でマイヨ・ジョーヌを着ること」というアラフィリップは、ツール第6ステージのプランシュ・デ・ベルフィーユにも走りに行く。ちなみに6月30日のフランス選手権に関しては、残念ながら欠場の方向に心が傾いているらしい……。

キャリア2度目のドーフィネ総合制覇を果たしたヤコブ・フグルサングは、本人・チームともに勝負強さを証明した。当然ながら来たるツール・ド・フランスに向けての野心も、大いに膨らんだに違いない。なにしろ近年の7大会のうち、実に5回が、ドーフィネ総合覇者=ツール総合覇者なのだ!

ただしツールにおける最高成績は2013年大会の総合7位……というフグルサングは、あくまでも謙虚に、現実的に、目標を語る。しかも1度目の優勝後の2017年ツールは、ひどい落車の犠牲となり、途中棄権を余儀なくされている。

「2013年よりはるかに自分が強くなったと感じている。マイヨ・ジョーヌを1度は着てみたい。まあ、総合5位以内に入れたら、個人的には嬉しいよ」

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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