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サイクル ロードレース コラム 2015年7月5日

ツール・ド・フランス2015 第1ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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次から次へと襲い掛かってくるビッグネームをことごとく振り払った。2月にアワーレコードを樹立した単独走行スペシャリストは、全出走選手198人の中でただ1人、14分台のタイムをたたき出した(14分56秒)。1934年に始まったツール・ド・フランス個人タイムトライアルの歴史で、最も速い時速55.446kmで市街地コースを攻略した。2012年ロンドン五輪のチーム追抜で銀メダルに輝き、昨秋の世界選手権チームタイムトライアルでは虹色の栄光に酔ったローハン・デニスが、2015年ツール・ド・フランス最初のマイヨ・ジョーヌを手に入れた。

ひどく暑い午後だった。「ユトレヒトの観測史上最高気温」だとか、「ツール史上最も暑いグラン・デパール」だとか、ニュースはさかんに囃し立てた。ギラギラと照りつける太陽にも負けず、13.8kmの沿道にたっぷりと詰め掛けたファンたちは、3時間半のスペクタクルを楽しんだ。38番という早いスタートを切ったデニスも、15分ほどのほんの短い全力疾走の後に、3時間のレース観戦を強いられた。

「早い時間帯にスタートするのは、作戦だった。プレッシャーなく走れるし、午後中イライラしながら出番を待つ必要もないからね。この作戦が上手くいった。でも、その代わりに、テレビの前で、長いストレスいっぱいの時間を過ごすことになった。1人、また1人、とゴールするのをそわそわしながら見守ったよ。デュムランが終わり、マルティンが終わり、カンチェラーラが終わって……、ようやく安心することが出来たし、ようやく勝利を確信することが出来たんだ」(デニス、ミックスゾーンインタビューより)

6月中旬にツール・ド・スイスで2度の個人タイムトライアルを制したトム・デュムランは、地元オランダの期待を一身に背負っていた。まるで「声の壁」のような歓声の中を駆け抜けた体験は、素敵だった。でも、おかげで「コーチからの指示は何も聞こえなかった」(チーム公式リリースより)。デニスからは8秒遅れでゴールし、区間4位に終わった。

世界選手権タイムトライアル3勝、ツール・ド・フランスの個人TT区間3勝の成績を誇るトニー・マルティンは、生まれて初めてのマイヨ・ジョーヌをつかむつもりだった。100%の状態でレースに臨むために、できる限りの調整を積んできた。「でも、暑さに、かなり苦しめられた。暑さがこれほど大きな影響を及ぼすとは想像さえしてなかった。コースをようやく半分終わった時点で、まるでオーブンの中で焼かれているような気分だった」(ゴール後インタビューより)。リーダージャージにわずか5秒届かず、区間&総合2位で肩を落とした。

ツール初日の短距離タイムトライアルをすでに5度制し、マイヨ・ジョーヌ着用日数も現役最多28日というファビアン・カンチェラーラは、今回は6秒差で9歳年下の若者に主役の座を譲った(3位)。「僕はすでにたくさん素敵なことを成し遂げてきたからね。むしろ今は、何か、喜びのようなものを追い求めながら走っているんだ」(ゴール後インタビューより)と敗北にもさっぱりとした表情を見せた。しかし、やはり、「TTヘルメットは通気性が低いから、頭がひどく熱くなった。走り終わる頃には口の中がカラカラだった」と、酷暑の影響が小さくなかったことを認めている。

その点、2015年ツアー・ダウンアンダーの総合覇者は、この日のために昨年の11月から入念に準備を積んできただけでなく、なにより暑さ対策をきっちりと積んできた。初めてのツール区間勝利と初めてのマイヨ・ジョーヌは、決して偶然にデニスの手に入ったものではない。

「そもそも僕はオージーだし、それにツアー・ダウンアンダーに来たことのある選手なら知っていると思うけど、あのレースはかなりの暑さの中で1週間を走るんだからね。それに特別練習を積んできた。2時から5時まで、トレーニングに出かけるというもの。35度とか40度の中でトレーニングを続けたおかげで、こういった状況には慣れていたんだ」(デニス、公式記者会見より)

タイムトライアルスペシャリストたちによる区間&大会初のマイヨ・ジョーヌ争いの一方で、大会21日目のマイヨ・ジョーヌを巡る争いも大いに加熱した。「ファンタスティック・フォー」と呼ばれる4強の中では、ディフェンディングチャンピオン(つまり最終走者)のヴィンチェンツォ・ニーバリが15分39秒(デニスから43秒遅れ)でトップに立った。クリス・フルームを7秒、アルベルト・コンタドールを15秒、ナイロ・キンタナを18秒上回った。

ちなみに4強を脅かす「アウトサイダー」として期待されるティボー・ピノはデニスから41秒遅れ(ニーバリから2秒リード)、ティージェイ・ヴァンガーデレンが42秒遅れと、いずれも4強を上回った。

「確かにキンタナより20秒速かったけど、こんなもの、ほんの些細な差だよ。それよりも自分自身を安心させたかった。僕はしっかり仕上がっていると確認したかったんだ。だから、遅れずに終えられたことのほうに、むしろ満足してる。20秒なんて、パリまでの道のりを考えれば、たいしたことない。むしろ明日のほうが……、あっさり2分ほど失ってしまう可能性があるよ!」(ピノ、ゴール後インタビューより)

暑さの次は、強風がプロトンを大いに苦しめる予定だ。天気予報によれば、北海上の大堤防の上には……、雨雲も張り出すらしい。暑さを和らげてくれる恵みの雨となるか。それともピノの恐れるカオスと分断を、引き起こすのか。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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