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タイムトライアル世界チャンピオンチームが、カドゥダルの坂の上で団体勝利をもぎ取った。わずか1秒差(正確には0.62秒差)でスカイを退けて……。前夜の時点で総合13秒差だったティージェイ・ヴァンガーデレンは、残念ながらマイヨ・ジョーヌには手が届かなかった。第3ステージのユイの壁で手にしたリード(11秒+ボーナスタイム6秒)のおかげで、クリス・フルームが黄色のままで、ピレネー山麓での休養地へと飛び立った。
ステージ優勝争いが、いつもとは少し違うものになるだろうことは、誰もが予想していた。なにしろ2013年ツール・ド・フランス、さらに2014年&2015年ジロ・デ・イタリアのチームタイムトライアルを勝ち取ったオリカ・グリーンエッジは、1週目の落車続きですでに3人が大会を去り、残る6人も完全体ではなかった。「最初の出走で最下位タイム」とマシュー・ホワイト監督が笑ったように、終始ゆっくりとペダルを回した。首位BMCからは4分58秒遅れ、後ろから2番目のコフィディスからは、なんと2分26秒も遅れてフィニッシュラインにたどり着いた。
エティクスやトレックも、それぞれの個人タイムトライアル世界チャンピオンを欠いていた。トニー・マルティンやファビアン・カンチェラーラさえいれば、少なくともラスト1.7kmに聳えるカドゥダル峠の麓まで、高速でチームを牽引してくれるはずだった。しかし前者は第6ステージの落車で、後者は第3ステージの落車で、大会を立ち去っていた。エティクスは45秒遅れの7位で、トレックは1分25秒遅れの11位で休養日前最後のステージを終えた。
ステージ優勝争いは結局のところ、22チーム中、最後に出走した2チームにより争われた。第1計測ポイント(10km地点)ではBMCとスカイは同タイムで通過。第2計測ポイント(20.5km地点)ではスカイのほうが1秒リードし、カドゥダルの麓(26.3km地点)ではスカイのリードは5秒に開いていた!
「いろいろな場所でコンマ数秒を失ったはずだけど、間違いなく、上りでタイムを失った。あまりにもファンの数が多かった。ロッシュがほんの少し遅れ始めたときは、歓声がひどくて、誰も無線が聞こえない状態だった。しかも、その瞬間にフルームがスピードを上げたから、『加速を止めろ、止めろ』って叫んだんだけど……。問題は、彼らが何も聞こえなかったこと。その後、ケーニッヒが後ろを振り向いて、ロッシュが苦しんでいること、距離が開いていることに気が付いた。慌ててケーニッヒも叫んだけれど、前の選手たちはやっぱり何も聞こえなかった。だから……あんな状況では、簡単にコンマ数秒を失ってしまうものなんだ」(スカイ監督ニコラ・ポルタル、ゴール後インタビューより)
ものすごい人ごみの中で、スカイ列車の連結部が緩んでしまった一方で、BMCの団結力は強かった。特に初日マイヨ・ジョーヌのローハン・デニスが、驚異的な先頭牽引に尽くした。
「上りでは、強い選手が、出来るだけ長く先頭を引いた。なにより5人でゴールしなきゃならなかった。そして僕らには、ローハン・デニスがいた。彼こそが、今日の勝利の鍵となってくれた。まさにエンジン役だった」(ヴァンガーデレン、公式記者会見より)
昨秋のチームTT世界チャンピオンメンバー4人を含む精鋭軍は、1.7kmの上りを英国軍より6秒速く駆け上がって、逆転でステージ優勝を手に入れた。チーム結成2007年のBMCにとっては、グランツールでのチームタイムトライアル勝利は初めての快挙である。喜びと同時に、確かにほんの少しだけ、ヴァンガーデレンの心の中にはがっかりした思いも存在したようだ。マイヨ・ジョーヌまであと12秒に迫ったまま、ピレネーの難関山岳ステージに突入することになったのだから。
「これが『完璧なる世界』なら、僕らはステージを勝って、イエローも取っていたんだろうね。とにかく僕らはステージ勝利は手に入れた。正直言って、これ以上に幸せなことはありえない」(ヴァンガーデレン、公式記者会見より)
開幕前にはフルーム、アルベルト・コンタドール、ヴィンチェンツォ・ニーバリ、ナイロ・キンタナという「ファンタスティック・フォー」ばかりに注目が集まっていたが、ツールの第一幕を終えて、本当のところはヴァンガーデレンを含めて「ファンタスティック・ファイヴ」だったのだ、とメディアもファンたちもあらためて理解させられた。そして彼らの属する5チームが、今区間上位5つの場所を占めた。しかもBMC、スカイに続いて、モヴィスターがわずか4秒差と非常に好成績につけた。
3チーム、つまりヴァンガーデレン、フルーム、キンタナの所属チームが気持ちよく休養日を迎えられるのに対して、コンタドールのティンコフ・サクソは区間勝者チームから28秒、ニーバリのアスタナは35秒を失った。
「それでも、僕らは良いタイムを出せたと思ってるよ。あとはしっかり休養を取って、山岳ステージに突撃するだけ。難関山岳ステージはこの先たくさん残っているし、これはツールだ。毎日安定した走りを見せることこそが大切だ。これが僕にとっては有利に働くし、僕を勇気付けてくれる」(コンタドール、チーム公式リリースより)
2015年ツールの前半戦がこうして幕を閉じたが、総合争いはほんの序幕が終わった程度に過ぎない。フルームが身にまとっているマイヨ・ジョーヌを、ピレネー&アルプスの山々で総合2位ヴァンガーデレンが12秒差で、5位コンタドールが1分03秒差で、9位キンタナが1分59秒差で、13位ニーバリが2分22秒差で追い求める。またチームの好調さに乗って密かに好順位をキープしているリゴベルト・ウランが総合6位1分18秒差に、キンタナの頼もしいアシスト役なのか、はたまたダブルリーダーなのか、今後明らかになっていくであろうバルベルデは総合7位1分50秒差(キンタナより9秒上なのだ)。
昨年の好走再び……と期待されていたフランス勢は、トニー・ギャロパンが総合11位2分01秒差でトップにつける。総合上位の可能性を秘める選手の中では、ワレン・バルギルが14位2分43秒差でもっとも好位置につけている。
短い、しかし凝縮した全力疾走を終えた選手たちは、嬉しい大会1回目の休養日を迎える。フィニッシュエリアでさっとシャワーを浴び、開催委員会が用意した6台のバスに分乗すると、まずは75km先のロリアン空港へ。その先は3台の飛行機に分かれて、1時間20分のフライトであっさりと仏南西部ポーへたどり着いた。一番遅い到着便でも20時50分着だったから、ホテルで十分に体を休めることが出来ただろう。一方でチームバスやキャラバンカー、レースカーやプレスカーにとっては、休養日をまたいでの全長730kmの陸地移動が待っている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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