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【ミラノ〜サンレモ/プレビュー】春のクラシック開幕戦。「上れるスプリンター」による熱き戦いが始まる!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかクラシックの中のクラシック、クラシッチッシマは、古き良き伝統を完全に取り戻した。パリ〜ルーベやパリ〜トゥールが、もはやパリからスタートしないのに対して、ミラノ〜サンレモは、いまでも頑固にミラノからスタートを切っている。その上、すでに1年前には、あのエディ・メルクスが史上最多の7勝をつかみ取ったヴィア・ローマへと、8年ぶりにフィニッシュラインが立ち返った。J SPORTSではこのレースを生中継でお届けする。
さらに2016年は、3年ぶりに、土曜日開催が復活!しかも今年の土曜日は3月19日で、サン・ジュゼッペの日……。実は1937年から1981年までは、この「聖ヨゼフデー」こそが、ミラノ〜サンレモの固定開催日だった。
自慢の距離は相変わらず。実は去年に比べて2km短縮されたけれど、それでも291kmとは、うんざりするほどの長さである。「スプリンターズクラシック」としての特徴も、しっかりと守られた。ヒルクライマー向けに作り変えちゃおう……、と2年前に最終盤に難しい山登りを組み入れてしまったような、そんな反則技は使わなかった(幸か不幸か、降り続く長雨のせいで地すべりの危険性が指摘され、ポンペイアーナの登りは取り消された)。
ミラノから走り出したプロトンは、肥沃なるポー平原をひたすら南下する。コース半ばには最初の難関、ツルキーノが待っている。ただし本格的に脱落者がではじめるのは、地中海岸沿いの道を、もう少し先に行ってから。走行距離はすでに230kmに達し、プロトンのスピードもうなりを上げ始めている頃だ。そこにトレ・カピ、いわゆる「三つの頭」とあだ名される小さな起伏の連続(カポ・メーレ、カポ・チェルボ、カポ・ベルタ)が襲いかかる。イタリアンリヴィエラに点在する小さな村落の、道幅の狭い生活道路も、弱者たちを否応なく振り落としていく。
すでに6時間半近くもペダルを回し続け、もはや体力も気力も限界に達しているであろう頃から、戦いはクライマックスを迎える。ゴール前約20kmに立ちはだかるチプレッサ(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%、最大9%)は、登りはもちろん、テクニカルな下りの方がアタックに適しているとのもっぱらの評判だ。強豪パンチャー&クライマーにとって、最後の攻撃チャンスは、ご存知ポッジオ。ゴール前約9kmから始まる全長3.7km、平均勾配3.7%の坂道で、間違いなく、アタック野郎vsスプリント親衛隊の壮絶な綱引きが繰り広げられる。思い切って抜け出すとしたら……、やはり、てっぺん間際の勾配8%ゾーンで仕掛けるべし。そこからフィニッシュまでの残り5.4kmは、あとは夢中で駆け下りていくだけ。
ただしご用心!全長4kmの下りは、ひどく曲がりくねっている。そんなダウンヒルの最中に、1年前は――雨の中――、優勝候補4人が地面に転がり落ちた。しかも1年前は、ポッジオの上りでゲラント・トーマスが飛び出すも、下りであっけなく吸収された。集団は最終的に30人近くまで膨らんで……、ジョン・デゲンコルブのスプリント勝利で幕を閉じた。
そんな2015年と、実は、今年2016年大会はほとんど同じコース設定でである。すなわち、この春も、「上れるスプリンター」たちに勝機が巡ってくるのだろうか。
残念ながらディフェンディングチャンピオン本人は、1月末のチーム合宿中に自動車事故に遭い、レース出走さえ叶わなかった。それでも、我こそは、と名乗りを上げるスプリンターは、両手で数えても足りないほど存在する。中でも「本命」に挙げられるのは、パリ〜ニースでスプリントを制したマイケル・マシューズとナセル・ブアニだろう。パリ〜ニースが今季初戦だったオージーは、区間2勝+ポイント賞を手に入れ、どうやら「自分の脚質に最も適したクラシック」に調子をぴたりと合わせて来た。狙うはもちろん、1年前の3位以上の成績だ。一方のフレンチブルドッグは、揉め事さえ起こさなければ、スプリント2勝で終えていたかもしれない。ともかく、冬季に何度もポッジオに上りに行った。完璧なスプリント列車を作り上げ、ヴィア・ローマの「どのポイントでスプリントを切るべきか」も、アシストたちと何度もシミュレーションを行った。自信はある、そうだ。
パリ〜ニースでは勝てなかったけれど、やはりアレクサンドル・クリストフにも要注意。というのも2014年にミラノ〜サンレモを勝った時だって、直前のパリ〜ニースでは区間4位しか取れていない。去年のデゲンコルプだって、そう言えば、パリ〜ニース区間3位が最高だった……。
2009年覇者マーク・カヴェンディッシュも、決して忘れてはならないビッグスプリンターではある。だけど今年のティレーノ〜アドリアティコは、むしろ「集団スプリントフィニッシュは避けたい強豪たち」の仕上がりの良さが目に付いた。たとえば大会2日目の登りフィニッシュを制し、青いリーダージャージを着続けたズデネク・シュティバル。ちなみにエティックスでは超大型新人フェルナンド・ガリビアがスプリント区間を制しているから、どちらに展開が動いても、勝利を引き寄せられる可能性があるというわけ。シュティバルは最終日前夜の、「スプリンター向け」コースでも飛び出した。しかも新旧世界王者、ペーター・サガンとミカル・クヴィアトコウスキー、さらには勝利をさらったフレフ・ヴァンアーヴェルマートが、一緒になって「我こそは」とアピール合戦を繰り広げてくれた!
それにしてもサガンはいつにもまして、2位と4位とをせっせと量産している。ちなみに去年のサンレモは4位だった。もしもアルカンシェルジャージ姿で、ミラノ〜サンレモを制することが出来れば、1975年メルクス以来41年ぶりの大快挙となる。
また得意の上りでディエゴ・ウリッシは何度もアタックを仕掛けたし、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンは中東で見せた好調さがいまだ続いていることを証明した。昨秋にヒルクライマー向けモニュメント、イル・ロンバルディアを勝ち取ったヴィンチェンツォ・ニーバリは、雪のせいでティレーノの山頂フィニッシュ区間が中止になったことを嘆きつつ、有り余った体力をサンレモ獲りにぶつけてくるに違いない。フィリッポ・ポッツァート以来となる10年ぶりの栄光を、祖国イタリアへと持ち帰るために。
でも、もしかしたら、一番恐ろしいのはファビアン・カンチェッラーラかもしれない。2008年ミラノ〜サンレモ王者は、今季限りで引退を決めている。「偉大なるファビアン」として自転車界を立ち去ることに決めたらしいスパルタクスは、今まで以上に容赦ない。1月末には「電動モーター自転車も真っ青」なロングアタックを成功させているし、ティレーノ直前にはシュティバルを退けてストラーデ・ビアンケで3度目の勝利をもぎ取った。そして35歳の誕生日の翌日に、2度目のサンレモ勝利を!
ヴィア・ローマの最終ストレートは約750m。微妙な上り調子が、フィナーレにアクセントを添える。2016年ミラノ〜サンレモの戦いは、果たしてどう締めくくられるか。長くて熱い春の戦いが終わると、1週間後には早くも、ヨーロッパに復活祭と夏時間と……厳しくも楽しい北のクラシックシリーズがいっぺんにやってくる!
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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