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サイクル ロードレース コラム 2016年5月14日

ジロ・デ・イタリア2016 第7ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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13日の金曜日は、不吉な日なのだろうか。実は欧州の一部の文化圏では、「ある人には不運が訪れ、ある人には幸運が訪れる日」と言われている。

宝くじの売上が一気に上がる日でもある。もちろんベルギーの宝くじ協会ロットも、2016年5月13日の金曜日に、ロト・エクストラ(特別宝くじ)を売りだした。配当金は250万ユーロ、日本円で3億円超!こんなロットがスポンサーを務めるロット・ソウダルにも、この13日の金曜日、大きな幸運が訪れた。アンドレ・グライペルがスプリント勝利をもぎ取り、チームとしては区間3連勝で、赤いポイント賞ジャージ(グライペル)と青い山岳賞ジャージ(ティム・ウェレンス)も勝ち取って……、まさにジャックポット並の大暴れだった。

大会最初の山頂フィニッシュを無事に乗り越えた翌日。総合を争う選手たちは「前夜で2016年ジロの総合争いが完全に終わってしまわなかった」ことに、スプリンターたちは「生き残った」ことに感謝しながら、新たな1日へと走りだした。200kmを超える「移動」ステージは、しばらくアタックと吸収で活気づいた。

スタートから約20km地点、2級峠の山頂を越えるまで、エスケープは許されなかった。なぜならニッポ・ヴィーニファンティーニがことごとく潰しにかかったから。青ジャージを着るリーダー、ダミアーノ・クネゴに新たな山岳ポイントをもたらすために。……ところが、肝心の2級峠で、クネゴは5位通過に甘んじた。しかも前日の区間優勝で、1pt差の2位に浮上していたティム・ウェレンスに4位の座を奪われるという!

2004年ジロ総合王者の「ピッコロ・ピリンチペ(小さな王者)」は、2つ目の山岳の直前で、再び飛び出した。ただ、2つ目の山岳は単なる4級に過ぎず、上位通過3人にしかポイントは配分されない。前方には6選手が逃げていたから……、クネゴのアタックは全くの無駄に終わった。わずか1pt差で、「13日の金曜日」の幸運に見初められたロット・ソウダルのウェレンスに、山岳ジャージを譲り渡すことになる。

さて、1つ目の山岳でプロトンは一旦は分断し、その混乱も次第に収まりつつある頃だった。スタートから55kmを過ぎて、ようやく6選手がエスケープの切符をもぎ取った。ステファン・クン、アクセル・ドモン、ジューリオ・チッコーネ、ステファン・デニフル、イリア・コシェヴォイ、そしてダニエルフェリペ・マルティネスの飛び出しを見送ると、メイン集団に静かな時間帯が訪れた。

それでも、「スプリンター向け」と銘打たれてはいたけれど、コース上には起伏があちこちに潜んでいた。ところどころで、雨や風も待っていた。ロット・ソウダルの面々は、決して運任せにはしなかった。集団前方でしっかり隊列を組み、極めて勤勉に制御に務め続けた。タイム差は最大でも3分50秒しか与えなかった。

2つ目の山岳を、ゴール前約40kmで終えると、下りを利用してクンが独走へと打って出た。昨春、トラックの個人追抜き(4km)で世界チャンピオン3連覇(2013・14年はU23、2015年はエリート)を達成した22歳は、しばらくの間、自慢の健脚をたっぷりと見せつけることになる。

しかしフィニッシュが近づくに連れて、ロット・ソウダル以外のチームも、集団前方で加速を始めた。やはり13日の金曜日にちなんで「150万ユーロ特別くじ」を用意したフランス宝くじ公社の面々も、牽引に手を貸した。ちなみにオランダでは、13日の金曜日に宝くじを買う習慣はないようで、チーム ロットNL・ユンボが本気で働き始めたのはゴール前2km程度から。またイアムやトレックも、積極的にスピードアップを繰り返した。

2011年ブエルタからグランツール13回連続完走・14回連続出走中のアダム・ハンセンが、いつも通りタフな牽引仕事をやり切って、ゴール前7kmでクンを完全に回収した。赤いジャージのロット・ソウダルは、続いてショーン・ドゥビーに先頭のバトンを託した。

幸運を味方につけたチームがあれば、不運に襲われた者もいた。オランダでは乗りに乗って区間2勝を手に入れたマルセル・キッテルが、ゴール前約5km、パンクの犠牲となった。2回の山で千切れながらも、下りを利用してメイン集団への再合流をなんとか果たしたというのに……。自転車を交換してすぐさま走りだすも、猛スピードで遠ざかっていくプロトンに、もはや追いつく術はなかった。

「これほどのアンラッキーに見舞われるなんて、本当に残念だ。まあ、結局のところ、今日は13日の金曜日だから」(キッテル、チーム公式リリースより)

ラスト2kmからは、ユルゲン・ルーランツが引っ張る番だった。すでに2日前にも驚異的な仕事を見せた最終発射台は、連続して登場する90度カーブを、全て先頭で突っ込んだ。もちろん背中には、グライペルを連れて。

「強いスプリントをするには、強いチームが必要だ。僕にもすごく強いチームがついている。チームメート全員が互いに信頼しあっているし、1人1人が自分のやるべき仕事に100%を注ぐ。今日もチームのみんなは、僕を集団先頭に留めるために、素晴らしい仕事をしてくれた。さらに最終6kmは、ドゥビーとルーランツが素晴らしい仕事をしてくれた。ただ……、2人が仕事をするタイミングが、ちょっと早すぎたかもしれない」(グライペル、ゴール後TVインタビューより)

おかげでステージ最後の曲がり角、つまりフィニッシュ手前400mの右方向へのカーブで、グライペルは閉じ込められてしまう。その隙に21歳のカレブ・ユワンがスプリントを仕掛け、ジャコモ・ニッツォーロとサッシャ・モドロが続いて加速した。ゴリラはすぐには動けなかった。

「でも、隙間を、見つけたんだ。まんまと抜けだせた。他の選手がスプリントの軌道を変えなかったのも、実に幸運だった。普段の僕にとっては『遅すぎる』スプリントスタートだったけれど、なんとかフィニッシュラインに先頭で滑り込んだ。経験の勝利?むしろ、ラッキーな勝利だった」(グライペル、ゴール後TVインタビューより)

2日前は300mの上りロングスプリントを成功させた。この日は、ほんの50m程度の超短距離スプリントを制した。過去3回のジロは区間1勝ずつで満足してきたけれど、今回はついに2つ目の勝利を手に入れた。同じく区間2勝のキッテルを、ポイント総計で13pt上回り、ポイント賞の赤いジャージもまんまと手に入れた。

チームのロット・ソウダルにとっては3日連続の3勝目。13日の金曜日つながりで言うと、2011年5月13日の金曜日、やはりジロの第7ステージで、ロット(当時のチーム正式名はオメガファルマ・ロット)のバート・デクレルクが区間を制した。しかも5年前のこの快挙を例に上げて、「だからロト・エクストラを買おう!」と、ベルギーロット公社は大々的に宣伝を打った。すると次の13日の金曜日には、グライペルの快挙が宣伝材料に使われるのだろうか?ちなみに、この次にジロ現場に13日の金曜日が訪れるのは、2022年となる。

普段の日に比べて3000万ユーロ売上が伸びるというエフデジは、デマールの区間「13位」に、おそらく肩を落としているに違いない。総合勢に関しては、運の不公平な分配はなかった。みな平等に、平穏に、1日を走り終えた。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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