人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
【ツアー・オブ・カリフォルニア/プレビュー】11回目を迎えるアメリカ最大のレース!ペテル・サガン「カリフォルニアからツールの準備に取り掛かる」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかイタリアでばら色の戦いが熾烈さを増す頃、地球の反対側では、自転車乗りたちがビッグウェーブを乗りこなす。南のサンディエゴから、北のサクラメントへと向かう8日間。どこまでも続く青い海岸線と、いつも晴れた青い空。緑のぶどう畑に、荒涼と煤けた山々。プロモーションビデオか、はたまたヒーリング映像かと見間違うほど、美しき雄大なカリフォルニアの大地で、明るく激しい戦いが巻き起こる。
世界中の自転車ファンにとっては、楽しいながらも、寝不足の1週間でもある。ちなみに日本とイタリアの時差は+7時間、日本とカリフォルニアの時差は+16時間。夜にジロを見て、朝にカリフォルニアを見て……。早起きは三文の得!落車は厳禁だ!
昨年に第10回大会を祝い、年々レベルも評判も上げているツアー・オブ・カリフォルニアに、今回はワールドチームが10チーム参戦する。つまり昨年より2チーム増え、プロトン内のトップ選手の密度もぐっと濃くなった。
ゼッケンナンバー1番は、当然、ディフェンディングチャンピオンのペテル・サガンが背負う。プロ入り初年度の2010年から1年たりとも欠かさず西海岸に飛び、6年連続で区間勝利をもぎ取り、トータルで区間13勝+総合1勝を誇る現役世界チャンピオンにとって、今やカリフォルニア入りは「ルーチーン」なのだという。北クラシック転戦後に一旦休養を取り、「カリフォルニアからツールの準備に取り掛かる」。それがサガンのお決まりのシーズンプログラムだ。
ツール・ド・フランスの準備とは、すなわち、5年連続のマイヨ・ヴェールを取るための準備。初日サンディエゴの「ウォーターフロント」ステージと、最終日サクラメントの市内サーキットは、間違いなく大集団スプリント勝利を狙いに行くだろう。
サガンの前には、マーク・カヴェンディッシュとアレクサンドル・クリストフという、強力なライバル立ちはだかる。1月チーム合宿中の自動車事故からついに帰ってきたジョン・デゲンコルプは、かつてのトップスピードを取り戻しているだろうか?ブライアン・コカール、ダニー・ファンポッペル、ジャスパー・ストウィヴェンなど、さらに一皮剥けたい若きスプリンターたちも、背後に控えている。
少しくらいの起伏なら、へっちゃらなのがサガンの強み。ツール中は、山岳ステージで緑ポイント収集の旅に出るという、奥の手も持っている。だから序盤150kmは延々と登り基調で、後半は緩やかな起伏が続く第5ステージや、さらに6つの山岳を越えた後でラスト30kmはド平坦という第7ステージでも、なにを仕出かすか分からない。
フィニッシュ間際に登坂1.1km・平均10.3%の激坂が待つ第4ステージだって、もしかしたら勝ちに行けるかも……?
純正パンチャーたちが、もちろん、簡単に勝利を許さないだろう。昨年のアルデンヌクラシックでめざましい成長を遂げ、カリフォルニアでは総合2位に飛びこんだジュリアン・アラフィリップは、今年も手強い相手となりそうだ。しかもズデネック・シュティバル&ペトロ・ヴァコッチという頼もしい味方もついている。またBMCもグレッグ・ヴァンアーヴェルマートとサムエル・サンチェス、2人のクラシック巧者を揃えている。
本格的な山越えは、ヒルクライマーたちに任せておこう。第2ステージは序盤に1級峠越えが組み込まれる。さらに第3ステージは最難関ステージ。「アメリカンリヴィエラ」サンタバーバラへの素晴らしき眺めを楽しみながら、登坂12km・平均勾配8%の山頂フィニッシュを迎える。
地元アメリカの星アンドルー・タランスキー、2014年ジロ山岳賞フリアン・アレドンド、第一線を退いたらカリフォルニアの小さな自転車チームで走りたい……なんて夢を抱く35歳ローレンス・テンダム、ツール総合4位2回のユルヘン・ヴァンデンブロック等々が、山での戦いを盛り上げてくれるに違いない。
いや、世界中の自転車ファンが(怖いもの見たさ半分で)山での走りを見てみたいのは、やはり……「サー」と呼ばれる男ではなかろうか。
ブラッドリー・ウィギンスは2012年ツール・ド・フランス総合覇者にして、2014年ツアー・オブ・カリフォルニアの王者である。ただし2015年パリ〜ルーベを最後に、ロードレースからはリタイアした。現在はリオ五輪金メダル目指してトラック競技に集中している。ただ、自らの主催チーム「チーム・ウィギンス」のプレイングコーチとして、英国の若者選手たちを率いつつ、年間数回だけロードレースに出場している状態だ。つまり「僕が優勝した時代と比べると、12kmも体重が重いんだ。だから、もはや、ヒルクライマーたちと競り合って山を登ることなんてできないよ」とのこと。
それじゃあ、第6ステージ、全長20.3kmの個人タイムトライアルはどうだろう。2012年ロンドン五輪個人TT金メダリスト&2014年世界選手権個人TTチャンピオンで、2015年6月に史上最高のアワーレコード(54.526km)を樹立したウィギンスにとって、ストップウォッチとの孤独な勝負は得意分野である。これもまた「14ヶ月タイムトライアルを走っていないからなぁ……」と語っているそうだけど。
もちろん2015年世界選手権個人TT覇者ヴァシル・キリエンカ、 2015年5月に52.491kmのアワーレコードを樹立したローハン・デニス、ウィギンスと並ぶトラック界のエリートで、2014年夏の恐ろしい怪我から本格復活を果たしたテイラー・フィニー等々、現役で活躍するタイムトライアルスペシャリストたちが、老体の思い通りにはさせておかないはずだ。
果たして総合優勝の行方を左右するのは、難関山岳か、個人タイムトライアルか、それとも昨年のサガンに微笑みかけたように、スプリントの果てのボーナスタイムか?いずれにせよ、8日間の短くも長い戦いを全力で駆け抜けた本物の強者こそが、最後に黄色に青のアクセント入りのリーダージャージを勝ち取るのだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース
9月29日 午後5:25〜
-
Cycle* J:COM presents 2024 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
11月2日 午後2:30〜
-
10月12日 午後9:00〜
-
11月11日 午後7:00〜
-
【先行】Cycle*2024 宇都宮ジャパンカップ サイクルロードレース
10月20日 午前8:55〜
-
10月10日 午後9:15〜
-
Cycle* UCIシクロクロス ワールドカップ 2024/25 第1戦 アントウェルペン(ベルギー)
11月24日 午後11:00〜
-
【限定】Cycle* ツール・ド・フランス2025 ルートプレゼンテーション
10月29日 午後6:55〜
J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!