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【リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ / プレビュー】気になる現役世界チャンピオンにして、リエージュ現役最多4勝を誇るバルベルデ。「無敵男」は油断禁物!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか1892年生まれのラ・ドワイエンヌ(最古参)が、27年ぶりに、原点に回帰する。昨春までのようにリエージュで走り出し、リエージュ郊外のアンスでフィニッシュするのではない。2019年大会は、正真正銘の、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュが争われる。フィニッシュラインが引かれるのはリエージュ中心地を南北に貫く、アヴロワ大通りだ。
春のクラシック月間を締めくくるのは、第2次世界大戦の激戦地を駆け抜けるアップダウンコース。2019年大会は、全長256kmのコースに、11の上りが待ち受ける。そのうち9つがラスト約100kmにぎゅうぎゅうに詰め込まれ、ひたすら上っては下り、上っては下りを繰り返す。
特に残り80kmのストクー坂から、本格的なプロトンのふるい落としが始まる。てっぺんに偉大なるエディ・メルクスの記念碑が立つ伝統坂は、登坂距離こそ1kmと短いが、平均勾配は12.5%、最大勾配は15%にも達する。しかも極めて細く曲がりくねった下りを、ほんの2kmほどこなすと、すぐさま距離の長いオートルヴェ坂(3.6km、5.6%)→ロジエ峠(4.4km、5.9%)の連続登坂に取り掛からねばならない。
もちろんその後は伝統のラ・ルドゥット峠(残り37km地点、登坂2km、平均8.9%)、水曜日にも使用したフォルジュ坂(残り25km地点、1.3km、7.8%)、そして近年の重要な勝負地ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(残り15km、1.3km、11%)と、ひときわ難しい上りが選手たちの脚を試す。
ちょっぴり残念なのは、このラ・ロッシュ・オ・フォーコン(鷹岩)の上りが、2019年大会における最後の難関であること。直後に2kmほどの無名の上りも存在するが..昨季まで残り7km地点に待ち構え、数々の勇敢なるアタックが打たれてきた伝統のサン・ニコラ坂は、コース上から姿を消した。またアンスでの締めくくりはラスト1.5kmが上りだったのに対して、今年のリエージュフィニッシュは、ラスト4kmはほぼ完全なる平坦!
中集団によるスプリントフィニッシュになるのでは?という疑念の声も上がる。しかし開催委員会は「その逆だ」と自信を持つ。彼らの主張によれば、アンスの上りフィニッシュに向けて、多くのパンチャーがラストギリギリまで力を温存してきたという。つまりは平坦フィニッシュだからこそ、早めにアタックを打たねばならぬ。
自ずと各チームの採用する戦術は変わり、勝者に求められる脚質も変わってくるはずだ。たとえば水曜日にユイの壁を最速で上り切ったアラフィリップは、旧リエージュでは2位に食い込んだ経験を持つが(2015年)、新リエージュは「自分にとって有利ではない」と語る。
ただしアラフィリップが今季9勝と絶好調である上に、忘れてはならないのは、やはり平坦フィニッシュのミラノ〜サンレモを鮮やかに勝ち取ったこと。そもそも今季早くも25勝のドゥクーニンク・クイックステップは、いつも通り、複数の切り札を揃えている。ディフェンディングチャンピオンのユンゲルスは、今春フランドル系ではとてつもない独走力でライバルたちを震え上がらせたし、8年前のリエージュ覇者ジルベールは、2週間前のルーベで改めて究極のモニュメントハンターっぷりを見せつけたばかり。
ちなみに「ウルフパック」のユンゲルスは、5月にはジロで総合争いに挑戦する。またフレッシュ・ワロンヌで同僚の優勝を見事にお膳立てし、リエージュにも乗り込んでくるマスは、昨ブエルタ総合2位。今年は総合優勝を狙ってツールに乗り込む。そう、5大モニュメントの中でも屈指の起伏コースを誇る今大会は、ワンデーシーズンから本格的ステージレースシーズンへの移行レースでもある。だからこそ来るグランツールで総合争いを繰り広げるであろう強豪たちも、こぞってスタートラインに並ぶ!
マリア・ローザ争奪戦を繰り広げるデュムランにニバリ、ザカリン、さらにはツールで連覇を狙うトーマスに、悲願のマイヨ・ジョーヌ獲りに向かうキンタナ等々が、リエージュに脚だめしにやってくる。フレッシュ・ワロンヌは途中棄権に終わったものの、3年連続ツール総合ひと桁代のマーティンは、6年ぶりのリエージュタイトルを熱望しているし、またツール総合表彰台2度のバルデは、アルデンヌ前半2戦ですでに調子の良さを証明済み。昨ブエルタ優勝のサイモンに続き今年こそは自分が..とツールに乗り込むアダム・イェーツは、水曜日の落車リタイアのリベンジを誓っているに違いない。ご存知、アラフィリップと今季すでに3度も直接対決を繰り広げてきたフグルサングも、ツールで総合エースを張る予定だ。
アルデンヌ前半2戦で存在感を見せたロット・スーダルは、またしても闘いをかき回してくれるはずだし、リオ五輪金メダリストのヴァンアーヴェルマートは、アムステル後に、急遽リエージュ参戦を決めた。一方で元世界王者サガンは、シーズン前から宣言していたリエージュ挑戦を、長引く体調不振により中止。幸いにもボーラ・ハンスグローエには、フレッシュ・ワロンヌ5位シャフマンや7位コンラッドといった勝てる選手が揃っている。
気になるのが現役世界チャンピオンにして、リエージュ現役最多4勝を誇るバルベルデの動向だ。この春の初体験ツール・デ・フランドルでは8位に食い込み、衰えぬレースセンスを証明したが、過去5勝のフレッシュ・ワロンヌでは、7年ぶりにトップ10圏外(11位)に落ちた。39歳になって初レースとなるリエージュには、果たしてどんな調子で乗り込んでくるのだろうか。もちろんバルベルデはバルベルデ。決して「無敵男」を油断してはならない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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