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27.8kmの全力疾走の果てに、上位2チームのタイム差は、0.28秒差だった。公式記録では、首位チームスカイにも、2位モヴィスターチームにも、30分37秒の同タイムが与えられた。しかし順位付けは残酷だ。モヴィスターの永遠のリーダー、アレハンドロ・バルベルデは0秒差の総合6位に泣き、スカイの忠実なアシスト、ピーター・ケノーに2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ最初のマイヨ・ロホが与えられた。
参加全22チームの中で、真っ先にずば抜けた好タイムを叩きだしたのは、16番スタートのオリカ・バイクエクスチェンジだった。2013年ツール、さらに2014年&2015年ジロでも集団ストップウォッチ競争を制した、いわゆる「グランツールのチームタイムトライアル(TTT)スペシャリスト」は、30分43秒で、一気に首位の座を奪い去った。長らくトップポジションをキープしてきた2012・2013年世界選手権TTTチャンピオン、エティックス・クイックステップを、一気に16秒上回った。また直後にフィニッシュした、世界TTT2連覇中のビーエムシーレーシングチームさえ、わずか1秒差で退けた。
しかし、すでに2012年と2014年の2回、ブエルタの初日TTTをもぎ取ってきたモヴィスターが、コース終盤に驚異的な追い上げをみせた。中間計測ポイントの遅れをひっくりかえし、20番スタートのスペインチームが、6秒リードでフィニッシュラインを越えた。
過去2回と違ったのは……、先頭通過者がヨナタン・カストロビエホではなかったこと。誰が先頭を通過するか決めずに、ひたすらぎりぎりまでスピードを落とさないことをモットーに走った過去2回は、最終牽引役が自動的にマイヨ・ロホを身にまとった。ただし今回は、バルベルデがいの一番にゴールへと飛び込んだ!36歳にして、生まれて初めて年間3つ全てのグランツールのスタートラインに立った大ベテランは(ジロ総合3位、ツール総合6位)、自身30枚目のグランツールリーダージャージ(これまでツール2枚、ブエルタ27枚)に王手をかけた。
21番スタートのスカイが、残念ながら、「エル・インバティド(無敵男)」の夢を打ち砕くことになる。モヴィスターの30分37秒69を、ほんのわずか100分の28秒だけ上回る、30分37秒41というタイムを記録して!
7月の王者クリス・フルームを乗せた黒い列車は、初日マイヨ・ロホではなく、ただマドリードのマイヨ・ロホのためだけに走っていた。9人全員が一丸となってペダルを回した。3選手が全力を尽くして千切れていったあと、トラックスペシャリストのピーター・ケノーが最終牽引役を見事に果たした。トップスピードを最大限に保ったまま、ためらわずフィニッシュラインを先頭で駆け抜けた。
そして、最終出走チームのティンコフに逆転されなかった時点で、スカイのステージ優勝と、ケノーのマイヨ・ロホが確定した。英国チャンピオンジャージなら、ロードでもトラックでも、ジュニア時代から何枚も身にまとってきた。世界チャンピオンジャージだって、2012年団体追抜で手に入れた。4年前の夏には、五輪でも、やはり団体追抜で金メダルに輝いている。女王陛下から勲章だって授けられた。しかしグランツールのリーダージャージに袖を通すのは、ケノーにとっては、初めての体験だった。
フルームはチームの快挙に興奮し、チームメートのリーダージャージをまるで我がことのように喜び、なにより好タイムに満足した。チームの前から5番目で1日を終え。自動的に総合5位の座も確保した。ベルナール・イノーが1978年に達成して以来となる(ただし当時のブエルタは春開催)、38年ぶりのツール&ブエルタ同一年優勝を狙うフルームは、いわゆる総合優勝を争うGCライダーの中で、早くもトップに躍り出たことになる。
もちろんモヴィスターの2大リーダー、バルベルデ(総合6位)&ナイロ・キンタナ(総合10位)とは「同タイム」だ。ツールで長らく総合2位を守り続けたアダムと双子のサイモン・イェーツと、この春のジロを総合2位で終えたエステバン・チャベスのオリカコンビも、6秒差でぴたりとつけている。そのジロで、閉幕2日前にマリア・ローザを失ったスティーヴン・クライスヴァイクは、27秒遅れで被害を「最小限」に食い止めた。
一方で「ツールのリベンジ」にやってきたアルベルト・コンタドールは、とてつもなく大きく出遅れた。7月のフランスで2度の落車の犠牲となり、第9ステージで途中リタイアした後、目標を4度目のブエルタ制覇に切り替えて、再調整に励んできたはずなのだが……。スカイとモヴィスターのライバルから、初日の27.8kmだけで、なんと52秒も失った。過去グランツールを7回(+剥奪された2回)も攻略してきた大チャンピオンの、8度目の頂点獲りに、早くも黄信号が灯ってしまった。
<選手コメント>
■ピーター・ケノー(チーム スカイ)
「このジャージを身に着けて夢心地だけれど、こうなるなんて全く考えていなかったんだ! 昨日までのぼくはブエルタを走るただの選手に過ぎなかったのに、突然レッド・ジャージ(マイヨ・ロホ)に放り込まれたんだから。現実のことじゃないみたいだったよ。
走り出す前は、首位のチームに引き離されずに終われればいいと思っていた。チームのみんなも、例えば何人かはリオからここに来ていたり、ぼくはケガから復帰したばかりだし、それぞれレースのスケジュールもシーズンの目標もばらばらだったから。
最初からハードにいったのがよかったね。少し慎重に、最初はイージーに、と思ってしまうときもあるけれど、そもそもチームトライアルはそういうものじゃない。最初の5kmで10秒を失ったとしたら、それは決して取り戻せないんだ。うまくいかないことを恐れてはいけないし、自分を痛めつけることを恐れてもいけない。今日のぼくたちにはそれができたんだ」
■ナイロ・キンタナ(モヴィスター チーム)
「チームの走りには満足だけれど、スカイとほぼ同タイムでゴールしながら勝つことができなかったのはちょっと残念だった。ぼくたちはスペシャリストの集団ではないけれど、固く結ばれていて強力な、コンパクトなグループ。今日は、自分たちの力を存分に発揮して、とてもいい結果を出すことができた。ぼく自身について言えば、感触は良かったよ。今日の好調を、ブエルタの期間中ずっと維持していけるといいね」
■アルベルト・コンタドール(ティンコフ)
「1週間のスローなトレーニングのあと、チームTTでレースをスタートするというのはいつも難しいものだけれど、それでも調子はとてもいいよ。チームはベストの走りをしたと思う。100%の力を出し切って、何かこれ以上できたことがあったとは思わない。
ライバルたちに50秒遅れでブエルタを走り始めるのは簡単なことじゃないけれど、自分たちの走りには満足している。ブエルタは長いし、まだ20のステージがぼくたちを待っている。これから目の前に現れるすべてのチャンスを掴んでいくつもりだよ。とにかく一日、一日ずつ進んでいって、何ができるか見ていきたいと思う」
出典:チーム公式サイト/コメント翻訳:寺尾真紀
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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