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サイクル ロードレース コラム 2017年4月25日

【ツール・ド・ヨークシャー プレビュー】海風あり、激坂あり、石畳あり!2014年ツール・ド・フランス開幕の地で、クラシック顔負けの丘陵戦が巻き起こる

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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たった2日間で250万人もの観客が沿道に詰めかけ、文字通り「熱狂」だったツール・ド・フランス通過の翌年、英国に、新たな名物が誕生した。5月最初の月曜日、つまりアーリー・メイ・バンクホリデー(国民の休日)の、直前の週末を利用した3日間の自転車ステージレースである。2017年も4月28日から30日まで、イングランド北部のヨークシャー地方で、美しく過酷な戦いが繰り広げられる。

エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」でも有名なこの土地は、つまり、風がめっぽう強く、丘が多い。しかも牧歌的な耕作地や荒野の間を駆け巡る道は、いずれも極めて細く、勾配は軒並み平均8%を超える。すなわち、全ての起伏が、クラシックの「勝負坂」レベルなのだ!

だからこそツール・ド・ヨークシャーでは、いついかなる瞬間も、油断することは許されない。1日目に早くも、総合争いが決まってしまうかもしれないから。なにしろ2015年に創設されたツール・ド・ヨークシャーの、第1回大会は、初日を制したラーシュペッテル・ヌールハウがそのまま初代タイトルをもさらい取った。昨年こそ最終3日目にトマ・ヴォクレールが区間と総合を一挙に制したが、実はこの2人がステージ優勝を飾った地は、奇しくも同じスカーブラ。そして北海沿いのこの町に、2017年大会の初日フィニッシュは引かれる。


海岸沿いのブリドリントンからスタートするこの日、173kmのコース上に、待ち構える上りは3つ。中でも2つ目のゴースランド坂(ゴール前53km、登坂距離1.3km、平均勾配7.5%)から、戦いは本格化していく。ちなみに映画「ハリーポッター」に登場するホグワーツ魔法学校最寄りのホグスミート駅は、このゴースランドに実在する駅を使用しているから必見!もちろん自転車ファンにとっては、この坂の最大勾配が25%であるらしいことのほうが、重大事件だけれど。

ラスト約40kmで北海岸沿いのホイットビーを通過して以降は、猛烈な海風をも敵に回すことになる。さらには勝負のロビン・フッドズ・ベイ坂へ。2015年大会では運命の最終アタックが決まり、翌年も集団を大きく分断させたこの坂道は、今年はゴール前28kmに待ちかまえている。遠くに海が見える坂道は登坂距離1.5km、平均10.3%、最大20%。果たして2017年も、ここでレースが動くのか。そこから先は小さなアップダウンをこなした後、テクニカルなダウンヒルを経て、海沿いの町でフィニッシュを迎える。

大会2日目だけはかろうじて、スプリンターに勝機が巡ってくる。ただし112.5kmの短距離決戦だけに、エスケープ管理は簡単ではない。道は決して平坦ではなく、コース折り返し地点には、平均勾配11.4%という厳しいロフトハウス坂が待ち構える。

しかもゴールはかなりの上り基調。確かに同ゴール地ハロゲートでの、同じ道でのフィニッシュを、2014年ツールではマルセル・キッテルが制している。それにしても、ツール時のような「完璧な列車」を有するスプリンターが、果たして何人存在するだろうか?

そして、びっくりするほど難しい、最終日がやってくる。間違いなく2017年大会のクイーンステージであり、3年間の大会史上、最も厳しいコースである。全長194.5kmのコースに、8つの丘が登場し、累計標高は……グランツール難関山岳ステージ顔負けの3517mにも達する。

まずは前半に坂が4つ。最初のハイライトは、折り返し地点に訪れる。選手たちの前に立ちはだかるのはシブデン・ウォール。平均勾配13.5%で、上に行けば行くほど勾配は上がっていき、最後は約20%にも達するという、文字通りの「壁」だ。しかも1kmの坂道は、恐ろしいことに、なんとオール石畳!!大会初日の遅れを取り戻そうと、実力派パンチャーたちがこぞって仕掛けた場合、フィニッシュまで100kmを残して、集団が完全にバラバラになってしまう可能性も秘めている。

もっと恐ろしいのは、大会も残り18kmを切ってから。ここからディープカー(1.7km、8.5%)、ウィグツイズル(1.4km、9.1%)、ユーデン・ハイト(1km、12%)、ミッドホープストーンズ(1.4km、10%)という4つの激坂を、連続でこなさねばならない。4つの中で最も厄介なのは、どうやら最大勾配25%のユーデン・ハイトとのこと。

最終坂ミッドホープストーンズのてっぺんは、フィニッシュ手前5km。そこから猛スピードで、シェフィールドのフィニッシュラインまで駆け下りた者こそが――2014年ツールの第2ステージで、やはり最終坂からシェフィールドまで、ヴィンチェンツォ・ニーバリが爆裂ダウンヒルをかましてマイヨ・ジョーヌをさらったように――、第3回ツール・ド・ヨークシャーの覇権をつかみとるのかもしれない。

第3回ツール・ド・ヨークシャーの出場チームは全部で18。うちワールドチームからはチーム スカイ、BMCレーシングチーム、チーム カチューシャ アルペシン、オリカ・スコット、チーム サンウェブ、ディメンションデータ、チーム ロットNL・ユンボの7チームが参戦する。

さらには第1回大会覇者ヌールハウが現在所属するアクア・ブルー・スポーツや、第2回覇者トマ・ヴォクレールのディレクトエネルジー等のプロコンチネンタル5チームが、スタートラインに並ぶ。またサミュエル・サンチェス、オマール・フライレ、さらにはイタリア行き直前のスティーヴン・クライスヴァイクといった山岳巧者に混じって、カレブ・ユワン、ナセル・ブアニ、ディラン・フルーネウェーヘンという実力派スプリンターたちも丘陵戦へ乗り込んでくる。

もちろん英国籍チームのスカイは、5人の英国選手と共に、祖国での栄光を追い求める。ちなみに大会初年度にスカイが総合優勝選手を輩出しているものの、ヌールハウはあくまでノルウェー人であり、英国人の区間・総合勝利はいまだかつてない。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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