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【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ プレビュー】フレンチ山岳戦に、ツールのマイヨ・ジョーヌ候補が全員集合!別府と新城も参戦だ!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか7月の本番に向け、自己を知り、チームを知り、ライバルを知る。6月4日から11日までの8日間、フレンチアルプスを舞台に巻き起こる激闘は、マイヨ・ジョーヌを狙う男たちにとって最後のテストマッチだ。なにしろクリテリウム・デュ・ドーフィネが終わったら、わずか3週間後には、ツール・ド・フランスがやってくる!
今年で70周年を迎える伝統あるステージレースは、なにより「プレ」ツール・ド・フランスとして、シーズンの中でも極めて重要な位置を占めてきた。「ドーフィネ勝者=同年ツールの総合勝者」の方程式が成り立ったのは、実に過去14回にも上る。特に近頃はこの傾向が強い。2012年のウィギンスはもちろん、クリス・フルームは2013・2015・2016年と3度ドーフィネを勝ち、同じ夏に3度ツールを勝った。
もちろん2017年も例外ではない。来るツールの総合表彰台候補たちが、スタートラインにずらりと並ぶ。ディフェンディングチャンピオンのフルームを筆頭に、昨ドーフィネ&ツール総合2位ロマン・バルデ、グランツール総合7勝アルベルト・コンタドール、さらにはリッチー・ポート、ファビオ・アール、エステバン・チャベス、果てにはアレハンドロ・バルベルデという大ベテランからサイモン・イェーツという若手まで..。つまり、7月の主役たちが、ほぼ全員集合状態だ!
ちなみに、スタート地のサンテティエンヌと言えば、黄色ではなく..グリーン。この地のASサンテティエンヌは、かつてミシェル・プラティニを筆頭とするスター選手を次々と輩出し、しかもUEFAチャンピオンズリーグ決勝進出で人々を熱狂させた伝説のサッカークラブである。トレードカラーは緑。1976年には応援歌「アレ・レ・ヴェール」が、フランスのヒットチャートを賑わせた。だから当然ではあるけれど、町の人々は、マイヨ・ヴェール争いに大いに関心を寄せているらしい。
残念ながら現在5年連続ポイント賞獲得中のペテル・サガンはお休みだけれど、アレクサンドル・クリストフ、ナセル・ブアニ、アルノー・デマール、ブライアン・コカールと実力派スプリンターは揃っている。また昨ドーフィネで緑ジャージをもぎ取ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが、今年は5月上旬ツアー・オブ・ノルウェー区間2勝&総合優勝、続けてツール・デ・フィヨルド区間3勝&総合優勝と超がつくほど絶好調。2年連続の「ドーフィネ緑」もあるかもしれない。
開催委員会の予想によると、スプリントフィニッシュ向けなのは3日目。かろうじて2日目も、「上れる」スプリンターに幸運が舞い込むかも。また来るべき7月1日のドイツ開幕タイムトライアルで区間優勝&マイヨ・ジョーヌが欲しいトニー・マルティンのために、第4ステージには、ほぼフラットなタイムトライアル23.5kmが用意された。
すなわち、それ以外の4日間は、起伏と山岳に満ち溢れている。初日から早くも、8つの山岳ポイントが仕掛けられた。しかも最終盤はサンテティエンヌを中心に3周回×3級ロシュタイエ峠3回登坂。総合系選手たちの脚を軽く観察しつつ、パンチャーや大逃げ巧者が、魅せてくれるだろう。そうそう、ツール最終日の夜に自転車を降りるトマ・ヴォクレールにとっては、人生最後のドーフィネとなるから、初日から面白い動きを見せてくれるかもしれない。
第5ステージは前半に軽い起伏が集中し、後半は比較的平坦だから..やはり元気なスプリンターたちに微笑むだろうか。むしろ日本の自転車ファンたちが期待したいのは、「地元」別府史之の雄姿だ。そう、5日目全体と6日目前半のコースは、別府のフランスでの本拠地のほんのすぐそばを走る。コンタドール護衛役という重大な任務を負っているけれど、この2日間はもしかしたら、自由なカードを切ることができるかもしれない。日本選手としては新城幸也も、実に6年ぶりにドーフィネに帰って来る。
選手たちの走りはもちろん、地形にもじっくり注目したいのは、第6ステージである。フィニッシュの最後に聳え立つ超級峠モン・デュ・シャ、日本語に訳すと「猫の山」は、ツールの第9ステージに最終峠として登場する。登坂距離8.7km・平均勾配10.3%・最大勾配15%となかなかの激坂だ。ツールで使用されるのは1974年大会以来2度目であるからして、ほぼすべての選手にとっては未体験の上りとなる。ただしAg2rの選手だけは例外。なにしろ本拠地の隣にある山で、バルデにとっては練習路のひとつ。フィニッシュまでの激坂ダウンヒル(ドーフィネはフィニッシュまで15km、ツールは25km)も、きっと慣れたものだ。
大会締めくくりの週末には、山頂フィニッシュ2連戦が待ち受ける。土曜日は5つの山を経て、最後はご存知ラルプデュエズ。日曜日は3つの巨大峠をひたすら上り下りして、未知なるプラトー・ド・ソレゾンへ。
ただしラルプデュエズに関しては、実のところ、かの有名な21のつづら折りを麓から登るわけではない。2013年ツールで、史上初めてラルプデュエズ2回登坂が行われた際に、ダウンヒルで使われた山道、つまりサレンヌ峠の方角から攻めるとのこと。ラスト4kmだけはヘアピンカーブも搭乗する。またソレゾンは、2014年ツール・ド・ラヴニールに出場した選手なら、実践で上った経験のある山だ。大会覇者のミゲルアンヘル・ロペスは残念ながら欠場だけれど、この山で好走を見せたサム・オーメンとピエール・ラトゥールはやって来る。山道の全長は11.3km、平均勾配9.2%。ひどく見晴らしのいい高台へ上り詰めた果てに、2017年のクリテリウム・デュ・ドーフィネの争いが全て決するとともに、2017年ツールの総合争いのパノラマも見えてくる。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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