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サイクル ロードレース コラム 2017年7月23日

ツール・ド・フランス2017 第20ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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写真:事実上、総合優勝を決めたフルーム

得意のタイムトライアルで、クリス・フルームは歴史的僅差の突破口を見つけ出した。南フランスの太陽のように明るく輝く黄色のジャージで、前日誓ったように「勝たなくてもいいけれど、負けてはならない」好走を披露すると、4回目の総合優勝についに王手をかけた。「あとはパリまで無事に帰りつくだけ」とほっと胸をなでおろした。マチェイ・ボドナールは1秒差で歓喜の初ステージ勝利をつかみ取り、ロメン・バルデが1秒差で……現時点では2年連続の表彰台を確保した。

楽しかった夏祭りの、最高に美しい終わり方。いつもならサッカーの応援歌がこだまするスタッド・ド・ヴェロドロームが、この日は、2017年ツールのクライマックスを迎え入れた。大歓声と……ブーイングが競技場に響き渡り、3週間の激闘を生き抜いてきた選手たちの胸を震わせた。とりわけ、自らのスタートとフィニッシュでたっぷり感激を味わった後、ボドナールはさらに2時間半も会場を満たす興奮を肌で感じ続けた。

「たしかに、いつものタイムトライアル以上に、すごい雰囲気だった。フィニッシュ脇のホットシートに2時間以上も座っていたから、たくさんの歓声が聞こえてきたよ。でも、あそこでずっと待っているのは、簡単じゃなかった。特にクリス(フルーム)がTT得意なことを知っていたから、すごくストレスを感じたよ」(ボドナール、公式記者会見より)

167人目の最終走者、つまりフルームが22.5kmのフィニッシュラインを越えた瞬間に、ようやく解放の時がやってきた。なにより精神的に難しかった3週間を、生まれて初めてのグランツール区間勝利で締めくくることができた。

写真:ベストタイムを出したボドナール


2010年からペーター・サガンと苦楽を共にしてきた名アシストは、第4ステージ後にエースが大会失格となった後、モチベーションを保つのに苦労したという。「6年連続マイヨ・ヴェール獲得」という大目標が消え、残されたチームメートたちと一緒になんとか自分たちのツールを救わねばならなかった。だから第11ステージでは、200㎞も前方を突っ走った。栄光までたったの200m、足りなかったけれど……。この日は同国生まれの仲良し、ミカル・クヴィアトコウスキーをわずか1秒差で破った!

「ミカルには申し訳ないけれど、今日は僕の日だった。すごく嬉しい。子供時代の夢はツールに出場することで、すでに5回も出場できた。しかも、今日は、ステージを勝つことができた。僕にとっては、単純に、信じられないような1日だ」(ボドナール、フィニッシュ後インタビューより)

それにしても難解なタイムトライアルだった。気まぐれに吹き付ける海風、旧市街の石畳路、さらにはノートルダム・ド・ラ・ガルド教会へと続く恐るべき激坂。いわゆるスペシャリストたちも大いに苦しめられた。4度の世界選手権優勝を誇るトニー・マルティンさえ、ボドナールに14秒足りなかった。

バルデを苦しめたのは、なにもコースだけではなかった。

「アルプスのステージ後に、少し風邪をひいた。あまり体調がよくなかった。ツール・ド・フランスでの僕はいつもそうなんだけど、良い日もあれば、あまりよくない日もあんだ。プレッシャーが重すぎた、とは言いたくない。でも確かに、今年はたくさんの『初めて』があって、それに慣れていかなければならなかった」(バルデ、公式記者会見より)


写真:走り終えた後、座り込んでしまったバルデ

ひときわ大きな声援に背中を押されたフランス期待の星は、23秒遅れの総合2位として走り出した。その2分後に、最終走者が大ブーイングの中でコースへと飛び出して行った。ちなみにフルーム本人は「だってここはフランスだし、ライバルがフランス人だし、なによりサッカースタジアムなんだから当然じゃない?」(公式記者会見より)とあっけらかんとしたものだ。それどころか、2017年ツールで一番すてきな思い出は、この競技場で作られたと断言する。

「ヴェロドロームへ、目と鼻の先まで追い詰めたバルデと、一緒に入場できたこと!」(フルーム、公式記者会見より)

まさしくバルデがヴェロドロームに走り込んできた、わずか3秒後に、黄色いジャージもフィニッシュラインに飛び込んだ。つまりバルデから新たに1分57秒リードをむしり取り、1985年以来となるフレンチマイヨ・ジョーヌ誕生の夢を、あっさり蹴散らした。本人も周囲も予想していた通り、6秒遅れの区間3位と、総合勢では圧倒的なベストタイムを叩きだした。

バルデはそれどころか、リゴベルト・ウランに対して有していた6秒の黒字も全て使い果たし、1分26秒の赤字に転じた。総合3位・2分20秒遅れに転落し、表彰台だけはかろうじて守るも……。「この総合3位の座を守り通せるといいのだけれど」と、公式記者会見のバルデは、慎重に発言している。なにしろわずか1秒後の、総合2分21秒差には、ミケル・ランダがつけている。

「他のチームと話し合ったわけではないけれど、(チームが最終日にこの1秒差をひっくり返しに行くとしたら)かなり驚きだね。だって今日で、総合の戦いは、終わったんだよ。明日はスプリンターが争う日だ」(フルーム、公式記者会見より)

もちろんフルーム自身の総合の戦いも、パリ到着前夜に締めくくられた。ただ2位に昇格した54秒差のウランによれば、初日のデュッセルドルフで、バトル参加はすでに締めくくられていたらしい。たしかに第1ステージ、14㎞の個人タイムトライアルで、フルームはウランに早くも51秒差をもぎ取っている。過去3度の総合優勝とは違って、1つも区間を制することはできなかったけれど、つまり3週間の戦いの第1日目から、フルームは着実に勝利を積み重ねていったのだ。

「区間を勝てなかった失望はない。グランツールとは3週間どのように努力を重ねていくのかが大切で、1つのステージで争われるわけじゃないからね。なにより僕にとって、素晴らしいツールだった。今大会を制するためには、3週間通して安定した走りを見せ、常に先を読み続けなければならなかった。1つの区間で大差がついてしまうような、そんな大会じゃなかった」(フルーム、公式記者会見より)

スタジアムでの表彰式は。なんだかまるで、決勝戦の後のような雰囲気が漂っていた。もちろん、2017年ツールは、まだ終わりではない。マルセイユで一晩過ごしたら、パリへと大急ぎで向かい、恒例のシャンゼリゼスプリント競走を繰り広げねばならない。7度目のツール完走間近の新城幸也が、世界で一番美しい大通りで、逃げへの意欲も表明している!

☐ ツール・ド・フランス 2017
ツール・ド・フランス2017 7月1日(土)~7月23日(日)
全21ステージ独占生中継!

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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