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サイクル ロードレース コラム 2017年8月20日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第1ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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古代ローマ時代には剣闘士たちが死闘を繰り広げた円形競技場を、自転車に乗った戦士たちが全力で駆け抜けた。ほぼ満員の観客席では、ブラスバンドが闘牛の音楽を勇ましく奏で、地元ファンたちは手拍子とウェーブで盛り立てた。2017年ブエルタ・ア・エスパーニャが「フランスで最もスペイン風の都市」ニームで戦いの幕を開け、アメリカ籍のBMCレーシングが、初日チームタイムトライアルで15分秒58秒34のトップタイプを叩きだした。その中でも先頭でフィニッシュラインを越えたオージーのローハン・デニスが、嬉しい大会最初のマイヨ・ロホを身にまとった。

全長13.7kmの市街地コースで、「元」チームタイムトライアル世界チャンピオンチームが真の実力を発揮した。現役世界チャンピオンチームのクイックステップと、今年のグランツールを席巻し続けているチームサンウェブとを、それぞれに6秒ずつ退けた。ブエルタ初日TTTの勝利は2015年以来2度目で、グランツールにおけるTTT勝利は2015年ツール第9ステージを含む3度目。本来出場予定だったサムエル・サンチェスが、レース外ドーピング検査で禁止薬物の成長ホルモン陽性となり、開幕わずか2日前にロイック・ヴリーヘン急遽招集という騒動を乗り越えての、見事な勝利だった。

やはり2日前には、バルセロナとその近郊を、残忍なテロ事件が襲った。ブエルタ一行も3週間の長旅を始める前に、1分間の黙祷を捧げた。皮肉なことに、昨今のフランスでは、重装備の警察や軍隊が町中を巡回するのは「日常」だ。しかしフランスの内務大臣が緊急に開幕地に訪れ、開催委員に追悼の言葉を述べ、現場で警備にあたる警察・軍隊関係者を激励し、スタートも見ないで大急ぎで帰っていったのはちょっとした一大事だった。


幸いにも夏のバカンスの終わりのお祭りムードに、それほど暗い影を落とすことはなかった。ブエルタには欠かせない、強烈な太陽が照り付けたおかげかもしれない。チームバス前のウォーミングアップエリアでは、巨大な扇風機がうなりを上げた。ツール総合4勝のクリス・フルーム擁するスカイに至っては、排熱ダクト付きの冷風機を6台もずらりと並べた!

高速でペダルを回す選手たちにとっては、暑さより、敵はむしろ細くて曲がりくねった旧市街の道だった。UAEエミレーツやロットNLの数選手が、地面に激しく叩きつけられた。隊列も大きく乱れた。それぞれに総合上位入りを狙うルイ・メインチェスとスティーヴン・クライスヴァイクを擁しているというのに、手痛いタイムロスは避けられなかった。UAEは47秒、ロットNLは40秒の遅れで1日を終えた。

「非常に難しいコースだった。スタートからあらゆる課題を突き付けてきた。パワー、テクニック、スピード、そしてハンドル捌きと、全てにおいてハードだった。そして僕らは完璧にやりこなしたのさ」(ローハン・デニス、公式記者会見より)

完璧にやりこなせず、出遅れてしまった総合リーダーも存在する。この夏のツール総合3位ロメン・バルデと、ジロで総合トップ10入り5回のドメニコ・ポッツォヴィーボの「ダブル総合リーダー」で臨んだAg2rは、46秒ものタイムを失った。2015年ブエルタ覇者ファビオ・アルもまた、41秒と大きく遅れている。

人生最後のレースを走り出したアルベルト・コンタドールは35秒遅れ、優勝候補の中で唯一「ツールを走らなかった」ヴィンチェンツォ・ニーバリは31秒遅れ、ツールを落車による負傷で途中棄権したラファル・マイカは21秒遅れ、オリカ・スコットの3強エステバン・チャベス&イェーツ兄弟は17秒遅れ..そして、結局のところ、7月のツール覇者クリス・フルームがわずか9秒遅れで総合勢の中では早くもトップに立った。


ちなみに2015年ツールの初日個人タイムトライアルを制しマイヨ・ジョーヌを着用したのに続いて、生まれて初めて赤いジャージも手に入れたデニスは、「今大会に関しては総合順位はそれほど重視していない」のだそうだ。

「今年のジロは総合狙いで乗り込んだ(落車により第4ステージでリタイア)。でも今回のブエルタは、単純に、ステージ勝利を狙いにきた。もしも調子が良ければ、最初の目標はアンドラでフィニッシュする第3ステージ。総合争いの選手たちが本気の走りを見せるだろうから、出来る限り食らいついていきたい。でも、それが出来なくとも、それほど問題ではないんだ。たとえ明日ジャージを守れなくてもOKさ。今夜はチームのみんなとステージ優勝を楽しみたい。だって、今日の勝利で、すでに僕はハッピーなんだから」(デニス、公式記者会見より)

第2ステージは地形的には一切難所はない。ただしデニスも語る通り、「横風が吹いてきたら難解になるだろう」。特に横風巧者のクイックステップがわずか6秒差につけているから、何かとてつもない動きを仕掛けてくるかもしれない。少なくともニコラ・ロッシュの山岳ジャージだけは、山岳ポイントが存在しないから、あと1日は安泰だ。

☐ ブエルタ・ア・エスパーニャ2017
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 8月19日(土)~9月10日(日)
全21ステージ独占生中継!

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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