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【パリ~ルーベ プレビュー】全長54.5kmにも渡る石畳の責苦!「クラシックの女王」を射止める幸運な男は誰か?
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかこの春も地獄の門が開かれる。その先に待ち構えるのは、全長54.5kmにも渡る、石畳の責苦。ただ真の強者だけが、257kmのレースの果てに、天国へとたどりつく。
石畳月間の大トリを飾る第117回パリ~ルーベは、2019年4月14日の日曜日、おなじみパリ北部のコンピエーニュから走り出す。序盤約95kmのアスファルト路で、たっぷりと仁義なきポジション争いを繰り広げたプロトンは、いよいよトロワヴィルから石畳バトルへと突っ込む。
コース上に組み込まれた石畳セクターの数は、過去2年と変わらず29。ただし序盤の数区間は、顔ぶれや順番が少し入れ替わった。これは開催委員長のクリスティアン・プリュドムが「レースをより不確定なものにしたい」と望んだからであり、目的はプロトンを早い段階でバラバラに切り裂くこと。
例えば2018年大会は、第28セクター入口から第25セクター出口までが全長22kmで、石畳距離は9.7km。対する2019年大会は..全長13kmで、そこに10kmもの石畳区間がぎゅうぎゅうに詰め込まれている!
第23セクター以降は、使用パヴェも通過順も昨年と全く同じ。第19セクターにおなじみ伝説的アランベールの一本道が、第11セクターには直角カーブが2度登場するモン・アン・ペヴェールが、そして第4セクターにはファンが詰めかけすぎて一寸先さえ見えないカルフール・ド・ラルブルが、難度「5つ星」の評価とともに待ち受けている。
ただし、石畳路そのものが、去年までと全く同じ表情をしているわけではない。おなじみ「パリ~ルーベ友の会」の尽力で、石畳は常に申し分のない状態に生まれ変わっている。肝心の今年はアランベールの、全長2300mの石畳路のうち、入り口の500mが完全に敷き直された。
以前の状態のままでは、大雨が降ると、大きな水たまりができてしまったそうだ。もちろん開催委員会の本音は「どんな天候だろうがルーベのコースを変更したくない!」。だったら水たまりができないようにすればいいじゃないか、とほんの少し道の傾きを修正したのだとか。
その副産物として、石畳の隙間にびっしり生えていた草が取り払われ、滑りにくくなった(来年には草が生えているだろう)。代わりに、今までより石畳と石畳の間隔が広がったため(水はけを良くするためだろうか?)、振動の幅が大きくなり、ついでに隙間に車輪が挟まれやすくなった。スピードは出るが、ハンドル操作は難しくなったようだ。もちろん敷き直した500mを過ぎれば、残り1800mは今まで通りにつるつるの危険が潜んでいる。
こんなあらゆる地獄をかいくぐり、ルーベの自転車競技場で、「クラシックの女王」を射止める幸運な男は誰なのか。
ディフェンディングチャンピオンのサガンは、この春は不気味なほどに姿を潜めている。ダウンアンダー第3ステージで両手を上げて以来、勝ち星はゼロ。サンレモで4位に入った以外は、フランドル系クラシックで一度もトップ10にさえ食い込んでいない。元世界選手権3連覇の王者は、今年初めてリエージュ~バストーニュ~リエージュに挑戦する。調子のピークを、いつもよりほんの少し遅めにもってくるつもりなのかもしれない。
2019年は既にモニュメント1勝、ワールドツアー登録クラシック3勝、セミクラシック3勝と、相変わらずのクラシック精鋭軍団っぷりを見せているドゥクーニンク・クイックステップは、ルーベ2位2回のシュティバルを中心に、5年ぶりのタイトル奪還を狙う。全モニュメントが欲しいジルベールや、念願叶って与えられたエース格を成績に結びつけたいランパールトなど、誰が勝ってもおかしくない。
ちなみに5年前のルーベ覇者テルプストラは、1週間前の落車のせいで、この日曜日はお休み。新しいジャージ姿でーーチーム名はルーベ時からトータル・ディレクトエネルジーと変更し、ジャージも黒・黄基から水色・白・青に衣替えーー石畳トロフィーを天に突き上げることはできない。
もちろん2年前のルーベ覇者ヴァンアーヴェルマートは、新しく生まれた変わったCCCに、初のモニュメントをもたらしたいと熱望する。2週間前のE3ハーレルベーケは3位と、体調は決して悪くない。また4年前に石畳の栄光を、3年前に大事故の地獄を、そして1年前にツールで再び石畳の天国を味わったデゲンコルプも、ヘント2位で調子の高まりを実感している。
ユンボの絶対的リーダーに指名されたワウト・ヴァンアールトは、2度目のルーベ挑戦。10回目の出走となるクリストフと初出場ガビリアのUAEコンビは、今季ここまで凄まじい活躍を見せてきたが、ルーベの石畳でも威力を発揮するか。
毎年ルーベと言えばお天気も気になる。予報によれば、幸か不幸か、雨の心配はそれほどなさそう。ただし朝晩は摂氏0度ほどにまで気温が下がり、スタート時の気温はわずか4度。日中でも10度程度にしか上がらず、冷たい風の吹き付ける、そんな北の地獄となりそうだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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