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【パリ~ニース:プレビュー】豪華さだけならグランツール「以上」?2019年ワールドツアー本格幕開け!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか世界最高峰のメンバーが、「ミニ・ツール・ド・フランス」のスタートラインに集結。ついに自転車の本場ヨーロッパに戦場を移した2019年ワールドツアーが、パリ~ニースの8日間で、本格的に加速を切る。
今年で第77回目を迎える伝統ある大会は、パリから遠い郊外のどこか……ではなく、実に12年ぶりに「グラン・パリ」と呼ばれる首都経済圏から走り出す。開幕の地に選ばれたのはサン・ジェルマン・アン・レー。そう、かつてフランス国王の宮廷が置かれ、現在はサッカークラブのパリ・サンジェルマンが本拠地を構える町だ!
黄色いユリの紋章が輝く地からスタートする序盤3日間は、ずばりスプリンター向き。おかげで強豪たちがこぞってパリ~ニース行きを選んだ。デマールにフルーネウェーヘン、イーウェン、カヴェンディッシュ、グライペル、Sベネット、クリストフ、トレンティン、コロブレッリ、マシューズ、デゲンコルプ、コカール、ラポルト、ヤコブセン...。いわゆるピュアスプリンターから上れるスプリンターまで。来る春クラシックの優勝候補者たちも名を連ね、豪華さだけならグランツール「以上」かもしれない。
ただし「太陽へ向かうレース」の大会序盤は、例年通り、寒さと悪天候が予想される。単純に「速い」だけでは、栄光を手にすることは出来ない。
軽い起伏を大好物とする選手たちは、4日目と6日目に照準を合わせる。いずれもステージ終盤に短めのアップダウンがたて続けに登場するが、第4ステージはむしろパンチャー向きで、第6ステージは大逃げに有利だろうか?ちなみに昨パリ~ニース山岳賞のデヘントは、今季は3大ツール全出走・全完走を目指す。今大会でもきっと、トレードマークの逃げを披露してくれるに違いない。
最終的な総合争いの行方は、おそらく第5ステージ・個人タイムトライアルの終わりに見えてくる。前日のフィニッシュ地から一気に200km南下した選手たちは、南フランスの暖かな陽気に包まれて、25.5kmの全力疾走。コース中盤にはサン・ミシェル・ド・フリゴレ修道院へと向かう軽い上り坂が組み込まれる。しかもフリゴレ(=南仏語でハーブの「タイム」)の香り立ち込める林を貫く道は、ひどく細く曲がりくねり、一瞬たりとも気を抜くことは出来ない。
もちろんアルプスでの直接対決こそが、2019年大会最大の山場だ。特に第7ステージは、すべての選手にとって、今季初の「本格的な難関山岳ステージ」。全長181.5kmのコースに、峠は6つ。ニースの海辺から走り出すと、すぐに道は登り始める。文字通り1mたりとも平地はなく、ラスト約30kmには厳しい1級峠が2つ待ち構える。そして大会初登場のテュリニ峠の、標高1607mの頂きでフィニッシュ。ツール・ド・フランスでは過去3度(しかし最後は46年前)使用されたことのある1級峠は、登坂距離14.9km、平均勾配7.3%。中盤には11%近い勾配が続くゾーンあり。
グランツールで総合優勝を狙う選手たちにとっては、格好の実践テストとなりそうだ。5月のジロでマリア・ローザを争うSイェーツ、ロペス、ベルナル、ザカリンや、7月のツールでマイヨ・ジョーヌを追い求めるバルデやキンタナ、ウランが、3月に早くも直接対決でしのぎを削る。ディフェンディングチャンピオンのソレルや、2年前の総合覇者エナオ、さらには復調からの復活を誓うチャベスに、今季絶好調のイザギレ兄弟の動きにも注目したい。
忘れてはならないのは、過去3年のパリ~ニースは総合覇者と2位の差が4秒以内と、とてつもない僅差の戦いだったこと。しかも2015年と昨2018年には、最終日に首位交代劇も行われた。今年も地中海岸「英国人の散歩道」のフィニッシュラインを切るまで、決して結果は分からない。
なにしろニース発ニース着の第8ステージは、まさにジェットコースター。110kmの短距離走に、6つの峠がぎゅうぎゅうに詰め込まれた。上りの厳しさもさることながら、トリッキーでスピードのでる下りが特徴的。しかも1年前にソレルが46秒差をひっくり返し栄光の黄色いジャージを手にした時と……まったく同じコースが用意されている!
スプリンターや総合ライダーたちの激戦と並行して、フランスのプロコンチネンタルチームによる、残されたツール・ド・フランス招待枠をめぐる争いからも目が離せない。グライペル&バルギルのダブルリーダーで挑むアルケア、テルプストラ&カルメジャーヌ&ボニファシオと最強布陣で臨むディレクト・エネルジー、ローランの骨折欠場が痛いヴィタルコンセプト……。候補3チームに対して、残り枠は2つしかない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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