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優勝候補に挙げられていた3選手が、予想通りトップ3に居並んだ。中でも1年前の初日チームタイムトライアルの終わりにマイヨ・ロホを手にしたローハン・デニスが、2018年ブエルタでは初日個人タイムトライアルを制し、2年連続で赤き衣を身にまとった。
シーズン3つ目にして、最後のグランツールが始まった。誰が勝ってもおかしくない、誰が勝つのか分からない。そんなブエルタ独特のスリリングな緊張感を、例年以上にまき散らしながら、3週間の戦いは幕を開けた。なにしろ2018年の序盤2つのグランツールを盛り立てたフルームもトーマスもデュムランもいない……だけでなく、代わりにその3人「以外」のGCライダーがほぼ全員、開幕の地マラガに集結したのだ!
ただその全員が、マイヨ・ロホ獲りを高らかに宣言しているわけではない。たとえば7月のツールで落車し、鎖骨骨折で泣く泣くリタイアしたリッチー・ポートがそのひとり。序盤2週間はひたすら調子を上げることに専念し、3週目で区間勝利を1つ取りたい……と控えめに願うオージーは、全176選手中19番というかなり早い出走順を選んだ。上りあり、下りあり、石畳ありの全長8kmのコースを、10分30秒で走り終えた。
ヴィンチェンツォ・ニバリもまた、ツールを胸椎骨折で去った。8月11日に練習再開宣言を出し、その直後にブエルタ出場も発表したが、「あくまで狙いは世界選手権へ向けて調子を上げること」だと繰り返してきた。幸か不幸か、昨大会総合覇者フルームの欠場のせいで、総合2位だったニバリにゼッケン1番が与えられた。自ずと開幕TTの最終走者の席も回ってきた。結果は10分19秒。自分の3分前に走った区間覇者よりも、40秒遅いタイムでフィニッシュした。
たしかにデニスからは、ポートもニバリも、決して小さくないタイムを失った。ただニバリが「最終的な総合優勝候補たちと肩を並べるタイム」(チーム公式リリースより)とコメントしたように、肝心の総合ライバルに対する損失は嘆くほど大きくはない。
総合勢の中で最も好タイムを記録したのが、区間10位のウィルコ・ケルデルマン。昨ブエルタで4位に食い込んだ27歳は、デニスからは22秒遅れで初日を終えた。さらにアレハンドロ・バルベルデが24秒遅れ、バウケ・モレマが27秒遅れと続く。
総合優勝「大本命」たちの中では、サイモン・イェーツの29秒差れがトップ。ナイロ・キンタナとイルヌール・ザカリンが30秒差、ミゲル・アンヘル・ロペスは35秒差、ファビオ・アルが39秒差、ティボ・ピノーが40秒差。やはりツールを負傷リタイアしたリゴベルト・ウランは45秒差で終えた。つまりニバリとサイモンの差はわずか11秒でしかない。総合候補の中では最も遅い51秒差というタイムを記録したポートの実質的な遅れも、30秒以内に留まる。
3週目の結末が予想もつかない代わりに、初日の区間争いの結果は大方の予測通りだった。2年連続で個人TT欧州チャンピオンジャージを手に入れたヴィクター・カンペナールツが7秒差の3位に、ツール直後にツール・ド・ポローニュ総合優勝を果たし好調のまま大会に乗り込んできたミカル・クヴィアトコウスキーが6秒差の2位に食い込んだ。
ちなみにカンペナールツはこの5月のジロでも、初日TTで区間3位に泣いている。その時はデニスも区間2位で、わずか2秒差で初日マリア・ローザ獲りを失敗させたのだが……。
「今日はただひたすら、今ブエルタの第1目標である『今区間を勝つ』ことを確実に成功させることだけに集中した。僕にとっては、なにかひどく特別なモノだったんだ。ジロで失敗した後だけに、なおさらね」(デニス、優勝後インタビューより)
そうは言っても、出走前は、他の選手たちがもう少しスローペースで走ってくれるといいなぁ……そうすれば自分もストレスなく走れるのに、なんて密かに願っていたらしい。ところがクヴィアトコウスキーが好走を実現させたものだから、決してうかうかなどしてはいられなくなった。大いにプレッシャーを感じたそうだ。
「それでも無理なものは無理なんだ、と腹をくくって、とにかく全力を尽くした。上り切った地点で、戦いがほぼ決することは分かっていた。そこから先は、タイムを失ったとしても、ほんの1、2秒程度でしかない。だから序盤に全精力を注いで、後は出来るだけ速くフィニッシュへとたどり着くよう努力した」(デニス)
望み通りにデニスは中間計測地点を5秒リードで首位通過すると、その後はタイムを失うどころか、テクニカルなダウンヒルでさらに1、2秒を稼いだ。フィニッシュラインでは9分39秒の圧倒的なトップタイムを叩きだし、念願のブエルタ区間初勝利を手に入れた。つまりは2015年ツール初日個人タイムトライアル、2018年ジロの第16ステージ個人タイムトライアルに続く、3大ツール個人タイムトライアルステージ全制覇を成し遂げた。
3大ツールの全総合リーダージャージ着用という快挙なら、すでに2015年ツールの黄、2017年ブエルタの赤、2018年ジロのピンクで達成済み。ただし2年連続でブエルタ初日にリーダージャージを手にするのは、1975年以来の離れ業!
「初日にこうして再びジャージを着られるなんて、素敵な気分だよ。今日を逃したら、この先でマイヨ・ロホを取るのはかなり難しいだろうと考えていた。だから今日が、僕にとっては、唯一のジャージ獲得チャンスだった。たとえ明日ジャージを失っても、何の問題もない。……クヴィアトコウスキーはどうやら絶好調のようだから、明日の終わりにはジャージを着ているんじゃないかな」(デニス、優勝後インタビューより)
たしかに翌日には、平坦ステージと言う名の上りフィニッシュが待っている。最終登坂は7.5km。6秒差など簡単にひっくり返せる距離だ。しかもステージ上位3選手には、最大10秒のボーナスタイムもついてくる。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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