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2日連続でディラン・フルーネウェーヘンがスプリントを制し、6日連続でグレッグ・ヴァンアーヴェルマートはマイヨ・ジョーヌを身にまとった。石畳突入前の静かなステージだったが、集団落車やスプリント降格処分で、最終盤はカオスだった。
「もしも強い風が吹いていれば、パリ~トゥールのような激しいレースになったかもしれないけどね」(ヴァンアーヴェルマート、記者会見)
前日に続いて、この日もまた、選手たちはお休みモードに入った。キャトーズジュイエ、つまり7月14日の革命記念日だというのに、フランス選手たちによる恒例のアタック合戦さえなかった!
スタートから20kmほど静かに走った後、ようやく3人が前方へと飛び出した。プロトンは追いかける素振りさえ見せなかった。しかも真っ先にアタックをかけ、本日のエスケープを作り出した張本人のローレンス・テンダムが、すぐに足を止めてしまう。こうしてフランス人ファビアン・グルリエとオランダ人マルコ・ミナールトだけが逃げを続けた。
「スタート前から飛び出すつもりだったけど、逃げるなら、少なくとも3人は必要だと考えていた。最初はその通り3人だった。でも、どうしてなのかは分からないけど、テンダムは逃げから降りてしまった。残念だ。そもそも彼がアタックしたのに、変じゃないか。それでも僕にとっては良い1日だった。なにより前で走れたことを幸せに思っている」(グルリエ、ミックスゾーンインタビューより)
ちなみにテンダムが減速したのは、単にチームカーから後方集団に戻るよう指示があったから。ともかく前に取り残された2人は仲良く協力し合い、最大で6分半ほどのリードを奪った。2つの4級山岳では、それぞれが1回ずつ先頭で山頂を越えた。中間ポイントは両者激しく競り合って……珍しく判定はフォトフィニッシュにもつれ込んだ。グルリエが先頭を取った。
ただし平地における逃げの運命は、始まる前からほぼ決まっているようなもの。スプリントチームが追走をしかけ、ステージ終盤、じわじわと差は詰まっていく。ミナールトの努力は、残り11kmで非情にも打ち止めとなった。
初めてのツールで、第6ステージに続く2度目のエスケープに乗ったグルリエは、最後まで抵抗を止めなかった。2日前もミュール・ド・ブルターニュで粘ったように、持てる力を全て尽くした。ついにはフィニッシュまで6.5kmを残してプロトンに飲み込まれたが、ステージの終わりには敢闘賞の赤いゼッケンを手に入れた。おかげでフランスのナショナルデーに、ツールの表彰台に上った唯一のフランス人となった。
2人の逃げが吸収される前に、早くも混乱がプロトンを襲った。残り17.5km地点で、巨大な集団落車が発生し、多くの選手が地面に転がり落ちた。マイヨ・ア・ポワ姿のトームス・スクウィンシュ、9秒差で総合4位につけるジュリアン・アラフィリップ、なにより第6ステージ区間覇者のダニエル・マーティンが犠牲となった。
「僕らの前でブレーキがかかった。そして誰かが横に動き、僕の前輪をひっかけた。僕にできることなど何もなかった」(マーティン、チーム公式リリースより)
ジャージはボロボロになり、左ひじから流血しながらも、マーティンはすぐに走り始めた。昨大会を総合6位で終え、今年は総合表彰台を狙う絶対唯一のチームリーダーのために、アシストたちも全員集結して集団を追った。しかしプロトンの走行速度は極限まで上がり切った後で、もはやその尻尾を捕まえることなど不可能だった。フィニッシュラインには区間勝者から……、つまりはあらゆる総合ライバルから、1分16秒遅れでたどり着いた。
そのフィニッシュも、カオスに満ちていた。なにしろラスト6km間に直角カーブ4つとS字シケイン1つ。カーブのたびに道幅は狭まったり広まったり。さらには残り3.5kmで、フィリップ・ジルベールが特攻に出た。普段ならきっちり隊列を組んでスプリントへと向かうクイックステップフロアーズが、この日は奇襲に転じた。ライバルチームたちは必死の追走を余儀なくされた。残り1.6kmで謀反者は捕らえるころには、集団前方にはもはや秩序も統制もなくなっていた。
ラスト600m、この日最後のカーブを先頭でこなしたのは、グルパマ・エフデジの発射台2人だ。しかしエースのアルノー・デマールは、とっくの昔にアシストの後輪から滑り落ちていた。フィニッシュ地からほんの50kmほどの町で生まれ育ち、たしかに「道は熟知していたし、カーブが難解なのも分かっていた」(フィニッシュゾーンインタビューより)。しかし2018年大会初の地元フランス人勝利を、革命記念日にもたらすことは出来なかった。
ペーター・サガンは仕掛けるタイミングが早すぎた。さすがの世界チャンピオンでも、ピュアスプリンターたちを敵に回しての、300m近いロングスプリントは無茶だった。
また「先頭を突っ走っていたから、背後でなにが起こっていたかなんか知りっこないよ」(ミックスゾーンインタビューより)とサガンが語ったように、がむしゃらにもがくマイヨ・ヴェールの真後ろでは、アンドレ・グライペルとフェルナンド・ガビリアが互いの体をぶつけ合った。グライペルは肩を、ガビリアは頭を、ライバル側に突き出した。
「僕はグライペルの背後につけていた。その彼がガビリアと肩をぶつけ合うのを見て、思ったんだ。『今だ!』って」(フルーネウェーヘン、公式記者会見より)
グライペルとガビリアは、ラスト150m、サガンの背後から左右に分かれて前方へと飛び出した。すぐにドイツの大ベテランスプリンターが最前列を奪った。そのグライペルの後輪から、さらに、フルーネウェーヘンは飛び出した。残り50mで並び、そして残り25mでとうとう先頭に立った。
「本当に最後の最後で追い抜けた!今日のスプリントはすごく遠くから始まったし、体のぶつかり合いも多かった。でも僕はうまく前方へ浮上することが出来た。タイミングよく加速も切れた。美しい勝利だ。とても誇らしい」(フルーネウェーヘン、公式記者会見より)
パワフルなスプリントで2連勝を上げ、マイヨ・ヴェール争いでも3位に浮上したフルーネウェーヘンだが、「今年は狙わない。区間だけに集中する」ときっぱり。
表彰台終了後、大会審判団からグライペルとガビリアに対する処罰が発表された。それぞれフィニッシュラインを2番目と3番目で越えたが、「イレギュラーなスプリント」を行ったとして、同一集団の最下位(92位と93位)に降格された。
落車で遅れたマーティン以外、総合有力候補は揃って先頭集団で1日を終えた。2日間に渡ってしっかり体力温存に努めた彼らは、いよいよ休息日前のクライマックス、石畳の激闘へと進みゆく。そのパヴェが大好きなヴァンアーヴェルマートは、この日のボーナスポイントでも着実に3位通過=1秒収集を行い、マイヨ・ジョーヌ姿で晴れの日を迎える。
「大会前は、1日くらいはマイヨ・ジョーヌを着られたらいいな、となんとなく思っていた。まさかこんなに長い間着用できるなんて考えてもいなかった。マイヨ・ジョーヌで過ごす一瞬一瞬を、心の底から楽しんでいる。このジャージで石畳を走れるなんて最高だ。願わくば、あと1日、マイヨ・ジョーヌを守りたい」(ヴァンアーヴェルマート、公式記者会見より)
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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