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全長4kmのロングストレートの果ての、ハンドルを投げ合う熾烈なスプリント合戦を、フェルナンド・ガビリアが制した。ツール・ド・フランスデビューからわずか4日間にして、早くも2勝目を手に入れた。グレッグ・ヴァンアーヴェルマートはマイヨ・ジョーヌを危なげなく守り、ペーター・サガンはマイヨ・ヴェールをギリギリで保守した。
スタートと同時に4人が飛び出すと、暑く気だるい午後が始まった。チームタイムトライアルで全力疾走した翌日、大部分の選手は静かに集団内で過ごす方を選んだ。ディミトリ・クライス、アントニー・ペレス、ギヨーム・ヴァンケイスブルク、ジェローム・クザンは軽々と7分半以上のリードを開き、背後ではマイヨ・ジョーヌのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート擁するBMCレーシングが淡々とリズムを刻んだ。
「うんうん、逃げに乗ってすぐにそのことを考えたよ。みんなで『今夜の結果を予想しようぜ』なんて言い合ったりもして!」(ミックスゾーンインタビューより)とクザンも笑ったように、まるでサッカーW杯準決勝の前哨戦のようだった。フランス人2人とベルギー人2人が滑り込んだエスケープは、沿道の観客を大いに楽しませた。
逃げ集団内で繰り広げられたフランスvsベルギーは、中間ポイントをヴァンケイスブルクが先頭通過し、ベルギーが先制点を入れた。山岳ポイントをペレスが収集してフランスが同点に追いつき、ボーナスポイントをクライス先頭通過でベルギーが改めて突き放した。最後は敢闘賞赤ゼッケンを、今大会2度目の逃げのクザンが獲得し、フランスが2-2に戻して……。ちなみに当夜に行われた本物のW杯準決勝は、1-0でフランスの勝ち!
ステージ半ばを過ぎると、いよいよスプリンターチームが追走の主導権を掌握した。中でもクイックステップフロアーズとロット・ソウダルの2つのベルギーチームが、精力的にタイム差を制御した。
かといって前の4人も、簡単に最前列を譲り渡しはしなかった。なにしろステージ終盤、道はフランス国内でも特に自転車人気の高い、ブルターニュ地方へと走り込んだ。沿道の熱狂的な声援に背中を押されるように、逃げ集団はあらん限りの力を振り絞った。
しかもブルターニュの道は難解だ。決して平坦でもなく、かといって起伏とも呼べないうねった田舎道が、集団での追走をひどく困難なものにした。スプリントチームは極限までペースアップを試みるも、4人はわずかなリードを大切に守り続けた。ラスト20kmに入ると総合系チームも前線へと駆け上がった。集団は細道にぎゅうぎゅう詰めになり、当然のように大小の落車が相次いだ。
「落車の理由は、単純に、これがツール・ド・フランスだから。世界最大の自転車レースであり、全ての監督が同じことを無線で叫ぶんだ。『エースを連れて前に留まれ』って。決してコース設定のせいではない。選手たちの肩にのしかかるプレッシャーが、落車を引き起こす」(アーヴェルマート、公式記者会見より)
残り5km地点では大きな集団落車も発生した。数人が地面に投げ出され、アクセル・ドモンが脳震盪と右鎖骨骨折で即時リタイアを余儀なくされた。つまり総合優勝を狙うロメン・バルデは貴重なアシスト役を早くも1人失ったことになる。やはり落車に巻き込まれたリゴベルト・ウランとイルヌール・ザカリンは明暗が分かれた。昨ツール総合2位の前者がすぐにチームメートの助けを得て先頭集団でフィニッシュしたのに対して、昨ブエルタ総合3位の後者は思うような助けを得られぬまま54秒を落とした。
この落車で一瞬プロトンの追走リズムが崩れたが、大西洋に突き出すリュイス半島を貫くラスト4kmの直線に入ると、集団スピードはついにマックスに達した。逃げの4人は最後まで必死の抵抗を続けたが、残り1kmのフラムルージュの下で、巨大な塊に飲み込まれていった。
「僕らにとって有利な小さなくねくね道をこなした後で、4kmのロングストレートでプロトンと真っ向勝負……。しかも我々はたったの4人。抵抗できるはずなんてなかった。でも最後まで力を合わせて戦った。それにしてもやっぱり、あとわずかのところで逃げ切りを逃したのは、悔しいよね」(クザン、ミックスゾーンインタビューより)
吸収と同時に、ガビリアを乗せたクイックステップの最終発射台が、最前線へと突き進んだ。その後輪にはぴったりとサガンが入り込んだ。しかし真っ先にスプリントを切ったのはアンドレ・グライペルだった。昨夏、キャリアで初めて、ツールで1度も両手を挙げられなかった大ベテランは、思い切った300mのロングスプリントで「不意打ち」を仕掛けた。
「今日は自分でイニシアチヴを取ることに決めた。遠くからスプリントを仕掛けた。本当は誰かの背中に入り込めたらと思っていたんだけど、上手くいかなかった。だからラスト100mで再び加速を切った」(グライペル、フィニッシュ後インタビューより)
グライペルの動きに「驚かされた」ガビリアだが、一瞬先行された直後、すぐに抜き返した。もちろん自らの後輪からスプリントを切ったサガンには、決して追随を許さなかった。背後でハンドルを投げたグライペルとサガンを見事に交わして、ガビリアが第1ステージに続く今大会2勝目をつかみ取った。
「初めてのツール・ド・フランスで区間2勝を挙げられるなんて、単純にすごい気分だよ。決して簡単に成し遂げたわけじゃない。もちろん僕らチームは最高の調子で乗り込んできたし、この素晴らしいレースになにか痕跡を残したいと熱望してきた。チームメートたちのファンタスティックな仕事に感謝している。最高に幸せだけど、ここで立ち止まるつもりはない。もっともっと勝利を積み重ねていきたい」(ガビリア、ミックスゾーンインタビューより)
ハンドルを投げたおかげで、サガンは区間2位に滑り込み、大切なマイヨ・ヴェールをギリギリでつなぎとめた。もしも区間3位だったら、6pt差で……ガビリアに緑ジャージを奪われるところだった。2012年から2016年までポイント賞を独占してきた5年間で、サガンは1度つかんだマイヨ・ヴェールを、たった3度しか手放したことがない(もちろん3度ともすぐに取り戻している)。区間をたくさん勝ちたいと意気込むガビリアも、だからこそマイヨ・ヴェール獲りに関しては「サガン相手だから難しいなぁ……」と悩んでいるらしい。
今大会4日目にして初めて、4賞ジャージに変動はなかった。少年時代はサッカーのゴールキーパーで、第3ステージ後のマイヨ・ジョーヌ獲得時に「これはきっとベルギーが勝つサイン!」(ミックスゾーンインタビューより)とはしゃいでいたヴァンアーヴェルマートは、たとえサッカーベルギー代表の優勝の望みが途絶えても、自らはもう少し黄色の日々を満喫したいと願っている。特に翌日第5ステージは、得意な起伏コースだ。
「いわばグランツールの中のクラシック。もしも最終盤まで全てが上手く行ったら、僕もなにか試すつもり。だけどかなり難しいコースだよ。問題は脚がどれだけ動いてくれるかということ。それに誰が勝負を打つかによって展開は変わるけど、うん、間違いなく、総合勢の間でもタイム差がつくはずだ」(ヴァンアーヴェルマート、公式記者会見より)
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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