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「本当に強い」
白鴎大の網野友雄コーチと大東文化大の西尾吉弘コーチが口を揃えたように、10勝1敗で1巡目を終えた早稲田大の強さは本物だ。各校の力が拮抗するオータムリーグにあって、首位を走る存在となった。だが、2巡目は対戦相手が対策を練って挑んでくるだけに、勢いを維持できるかが注目される。
9月28日には7勝3敗と上位につけ、ディフェンスで勝ち星を積み重ねてきた日本大に108対75のスコアで大勝。成功率50%で20本の3Pショットを沈めるなど、オフェンスの爆発力がスローダウンする気配はまったく見られない。
下山瑛司(中部大第一3年)が先発の司令塔を務めるが、岩屋頼(洛南4年)、堀陽稀(東山4年)、三浦健一(洛南3年)、松本秦(洛南1年)はいずれも得点機会をクリエイトできるのが強み。堀田尚秀(東山4年)と高田和幸(洛南4年)に加え、故障で離脱していた城戸賢心(福岡第一3年)の復帰によって、シューターの層も厚くなっている。
2巡目の最初に対戦する白鴎大は、佐藤涼成が抜けた影響で3連敗のスタートを切ったが、東海大や日本大を破るなど6勝5敗と巻き返しに成功。佐伯崚介(土浦日本大4年)を軸に本来のアグレッシブなディフェンスを発揮できる試合が増えてきているだけに、10月4日の一戦はオータムリーグの今後に影響を及ぼす試合になるかもしれない。
東海大は白鴎大と早稲田大に逆転負けしての2連敗を喫したが、その後の試合でクロージングとディフェンスの質を向上させて5連勝、8勝3敗の2位で1巡目を折り返した。オフェンスを牽引しているのはシュート力に定評のある赤間賢人(藤枝明誠2年)だが、司令塔の轟琉維(福岡第一3年)を筆頭に選手層の厚いチーム。チームとしての完成度が高まってくれば、早稲田大を脅かすことは十分に考えられる。
早稲田大に唯一の黒星をつけた日本体育大だが、首位争いの最中に9月13日の大東文化大戦をきっかけに3連敗を喫して順位を落とした。藤田コーチは「連敗の経験がほとんどないので、メンタル的に落ち込んでいた。練習の質も良くなかった」と振り返る。しかし28日の白鴎大戦ではエナジー全開でプレーし、持ち味のアップテンポな展開に持ち込んで81対69で勝利。連敗を止め、7勝4敗で日本大と並ぶ4位で2巡目に臨む。
白鴎大と明治大が6勝、青山学院大と筑波大と大東文化大が5勝と、2巡目では試合ごとに順位が変動することになりそうだ。最下位の専修大は11連敗と厳しい状況が続いているものの、リーグ戦序盤に比べると圧倒されるような試合は減っている。早稲田大が頭一つ抜け出した印象は否めないが、実力伯仲の戦いはこれからさらに激しさを増していくだろう。
半年越しの復帰戦 筑波大・ルカルパンチエ金子天郎がもたらした勝利の力
筑波大にとって、ようやくチームに戻ってきた「待望のピース」がいる。9月27日、バイウィーク明けの中央大戦。そのスターターの中に、ルカルパンチエ金子天郎(シャンドラフォンテーヌ3年)の名前があった。
実は、ルカルパンチエ金子は春先からなかなか試合に出られない状況が続いていた。仲澤翔太コーチは理由をこう語る。
「本当は彼をずっとスタートにしたくて、(スプリング)トーナメントからずっと思っていたんですけど、肉離れをしてしまったんです。戻ってはまたというのが続いたので、1回しっかり治させようということで半年くらいかかりました」。9月に入ってから練習に戻ってきて、2~3週間したらフィットしてきました」
9月に練習へ合流し、数週間でようやく勘を取り戻した。そして迎えた復帰戦が、中央大との大一番だった。
試合は前半、筑波大が2ケタのリードを奪われる苦しい展開。だが3Qに入ると、ルカルパンチエ金子がその存在感を示し始める。192cmの長身に加え、長いウイングスパンと跳躍力を活かしたディフェンスで中央大を9点に抑え込むのに貢献し、流れを引き寄せた。ブロックにスティール、リバウンドでの奮闘。気づけば3Qまでに8点、8リバウンド、3ブロック、2スティールというスタッツを残し、攻防両面でチームを活気づけた。
仲澤コーチはそんなルカルパンチエ金子を高く評価する。
「ウイングスパンがすごいのと、運動能力がめちゃくちゃ高い。その2つがすごい武器ですけど、一番はメンタリティ。このチームがよくなるために自分の役割を120%で遂行してくれる選手です」
ルカルパンチエ金子の歩みは少しユニークだ。日本で生まれた後、間もなく父の祖国フランスに移住。パリのクラブチームでバスケットボールを学び、高校を卒業してから筑波大へ進学した。理由は二つ。自身が将来学びたいと考える「スポーツ開発」を専攻できること。そして大好きなバスケットボールを続けられることだった。
復帰初戦という緊張感もあったが、本人は切り替えを口にする。
「試合序盤は緊張していました。2Qの頭くらいから結構緊張がほぐれて、“もう頑張るしかない”“やるしかない”と思えました」
2Qにカットインからのジャンプショットを決めてからリズムを掴むと、3Qにはディフェンスのローテーションから3Pショットをブロック。コートを縦横無尽に駆け回り、持ち味のエナジーを存分に発揮した。
試合は土壇場までもつれて延長に突入。ルカルパンチエ金子は延長でもフローターを1本決め、トータルで10点をマークした。31分9秒間の出場後に足を攣ってベンチに下がったものの、筑波大が76対73で中央大に競り勝った要因の一つとなったのは間違いない。
「勝ててうれしいです。中央とは(成績が)並んでいたので…。一つ上がったので、この調子で明日の試合(神奈川大)も頑張っていければと思います」
復帰戦で示したのは、数字以上に大きなインパクトだった。筑波大がリーグ後半で白星を積み重ねるために、ルカルパンチエ金子天郎の存在はこれからますます欠かせないものになりそうだ。
★オータムリーグで2巡目で注目したい選手5人
早稲田大・松本秦(洛南1年)
白鴎大との開幕戦で24点を記録するなど、1巡目を終えて平均16.7点がランキング3位タイ。自身やチームメイトの得点機会をクリエイトでき、成功率が44.9%と3Pショットでも相手の脅威になるオールラウンドな能力を持つ。首位を走る早稲田大の中心選手になるべく着実に成長しており、倉石平コーチからの信頼も厚い。
神奈川大・玉井心(愛知工業大名電2年)
エースの山本愛哉(飛龍4年)が故障で離脱したあと、玉井心(愛知工業大名電2年)はスコアラーとして一気に存在感を増した。1巡目を終えた時点で得点ランキング3位。開幕戦の専修大戦で9点にとどまった以外は、9月6日の中央大戦での27点を含め10試合連続で2桁得点を記録している。ドライブ、3Pショットと得点パターンも豊富で、神奈川大の攻撃を支える存在だ。
東海大・轟琉維(福岡第一3年)
1巡目では昨季のような爆発力や土壇場での勝負強さを発揮する場面は限られた。それでも、クイックネスを生かしたゲームメイクやディフェンスは健在だ。2巡目で東海大が勝ち星を積み上げ、オータムリーグのタイトル奪回を狙うためには、轟がスコアラーとして存在感を取り戻すことが欠かせない。
日本体育大・朝田健心(金沢学院3年)
春のトーナメントでは出場機会の少ないローテーション外の選手だったが、小澤飛悠のBリーグ入りによってチャンスを得たガード。中国で行われたAUBLで高いレベルの相手に経験を積み、明治大戦と専修大戦で18点を記録している。いまや日本体育大に欠かせないベンチスコアラーとなりつつある。
日本大・山田哲汰(白樺学園3年)
2022年にU18日本代表としてアジアカップを経験するなど、高校時代から能力を高く評価されてきた。3年生となった今季はスターターに定着し、1巡目を終えた時点のスタッツが8.2点、4.6リバウンド、4.1アシスト(全体で2位)。9月14日の日本体育大戦では13点、10リバウンド、8アシストをマークし、188cmの大型ポイントガードとして将来性を強く印象づけた。
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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