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昨年のウインターカップで準優勝となった鳥取城北は、万能型のビッグマンであるハロルド・アズカ、ガードの新美鯉星、フィジカルの強さが持ち味の豊村豪仁が軸のチームとして今年度を迎えた。6月の中国大会決勝で広島皆実に大苦戦を強いられたことや、アズカが足を痛みで万全から程遠く、出場時間の制限を設けるような状況。3回戦の柳ヶ浦戦では終盤にミスが続き、逆転負けの危機に陥ったほどだ。
チームを率いる河上貴博コーチは柳ヶ浦戦後、「そんな力のあるチームじゃない」とコメントにしていた。しかし、準々決勝では帝京長岡に73対53で快勝。準決勝の仙台大附属明成戦は、柳ヶ浦戦同様に終盤のゲームコントロールでミスが出たものの3点差で競り勝った。「シューターが当たれば強い」という河上コーチの言葉を象徴したのが永田惺雅であり、帝京長岡戦で16点、仙台大附属明成戦で20点とステップアップ。八王子との決勝でも、4Q残り3分15秒にリードを4点に広げる3Pショットを決めていた。
優勝候補の筆頭と呼ばれた福岡大附属大濠を倒した八王子学園八王子は、撹上颯斗コーチがガード陣の機動力を最大限に活かしたゾーン・ディフェンスで対戦相手を苦しめた。福岡大附属大濠には10本の3Pショットを決められたが、ペイント・アタックからのオフェンスを簡単に展開させなかった。ポゼッションごととに1-3-1、1-2-2、2-3で対応し始めるというチェンジング・ディフェンスのように見えるが、撹上コーチは「私からはチェンジングの指示をしていないんです。あのゾーンは彼らの判断で動いている。何をやっているのかわからないというのが魅力なので、皆さんがそう思えてもらえるのであれば、うまくいっているんだな感じです」と話す。相手のオフェンスがカオスな状態に陥ることが、八王子学園八王子の狙いだったのである。
鳥取城北のハロルド・アズカ
ところが、鳥取城北が福岡大附属大濠や準決勝で勝った北陸と違ったのは、アズカが大黒柱として素晴らしい仕事をしたことに尽きる。足の状態が良くないこともあり、インターハイでは1年生のフィリモン・タルモンにスターターの座を譲っていた。決勝戦でのアズカはだれよりも「日本一になりたい。金メダルがほしい」という思いを持ってプレー。準決勝までの4試合で2ケタ得点は一度だけだったが、決勝戦というビッグゲームでは24点とチームを牽引した。
ゾーン・ディフェンスで戦い続ける八王子学園八王子は、留学生がペイント内を固めてあまり動かないことに加え、アウトサイドに出て対応する能力に欠けていた。アズカはフィジカルの強さや身体能力に加え、大半の留学生にないシュート力を持つ。八王子学園八王子のガード陣がプレッシャーをかけ続けても、その上から躊躇することなく3Pショットを打ち続けた結果、8本中5本という高確率で成功させたのである。
残り21.9秒に左ウイングから決めた5本目は、インターハイ制覇を決定的にするビッグショット。八王子学園八王子の撹上コーチは次のように悔やんだ。
「一度同点に追いついたんですけど、行けるか!という時に向こうの3Pショットがあったり、アズカ君に外からポンと打ったのを決められてしまったので、点数が詰まらなかった」
最後の最後まで粘り強く戦い続けた鳥取城北は、64対58のスコアでインターハイ初制覇。河上コーチは、「勝ち切るということはどういうことか?というのは、ウインターカップで勝ちを重ねていって、チームとしても僕としてもすごく処理できている。できることを全部やるというのがもちろん大事ということは、本当にウインターカップで学んだこと。このインターハイでは新美、豊村、アズカを中心に、そこの共通認識ができていたかなと思います」と振り返った。
八王子学園八王子は惜しくも準優勝に終わったが、「ディフェンスはうまくハマっているという印象は今大会を通じてありました。ゾーンで脚を動かして守る練習は相当しましたので」と、撹上コーチはウインターカップに向けて大きな手応えを感じている。ニャン・セハセダトがポストプレーでペイント内にカットした選手のレイアップ、キックアウトから3Pショットというオフェンスは、非常に精度が高かった。
仙台大附属明成は、佐藤久夫コーチの後を引き継いだ畠山俊樹コーチの下で初の3位。アグレッシブなディフェンスとパッシングを軸にしたオフェンスは、畠山コーチになっても脈々と引き継がれ、着実にレベルアップしていることをこのインターハイで証明した。1年生から出場機会を得ている小田嶌秋斗は、準々決勝の東山戦で30点を記録するなどチームを牽引。今野瑛心、荻田航羽という190cmを超える選手たちがインサイドで奮闘したことも、準決勝まで勝ち上がれた要因と言える。
北陸は2回戦で藤枝明誠を破った北陸学院に勝利してのベスト4進出。八王子学園八王子のゾーン・ディフェンスに後半苦しめられての敗戦という結果になったが、細根悠雅を筆頭にした3Pショットの爆発力と留学生の攻防両面における献身的なプレーは北陸の強みであり、ウインターカップでより質の高いパフォーマンスを見せられるかに注目だ。
インターハイ展望で有力校の実力が拮抗と記述したように、第4シードの藤枝明誠が北陸学院に初戦で敗退し、福岡大附属大濠と東山というトップ2シードも、相手のゾーン・ディフェンスに対応しきれなかったことが要因となって準々決勝で姿を消した。上位校は今後トップリーグで対戦することになるが、年末のウインターカップはインターハイ以上に実力拮抗、どこが頂点に立つか予測不能な大会になりそうだ。
文:青木崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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