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トロフィーを掲げる京都精華学園の選手たち
桜花学園と対戦した昨年の決勝戦とは対照的に、京都精華学園は札幌山の手の速い展開に動じることなく、ハイスコアのゲームで主導権を握った。柴田柑菜の3Pを皮切りに、イゾジェ・ウチェのオフェンシブ・リバウンド、八木悠香のジャンプショットなど、1Q4分18秒で20点に到達するという質の高いオフェンスを遂行し、ハーフタイムまでに65点を奪う。後半は少しペースが落ちたものの、20点以内になる時間帯が少ないなど、最後まで試合をコントロールした京都精華学園は、99対81のスコアでウインターカップ初優勝を成し遂げた。
ハイスコアの展開でも京都精華学園が試合を優位に進められたのは、視野の広さを武器に巧みなゲームメイクで得点機会をクリエイトできる堀内桜花の存在が大きい。ゴール下でのフィニッシュだけでなく、カットからの合わせや速攻で走って得点できるイソジェ・ウチェの機動力は、他校の留学生にない京都精華学園の武器になっていた。
48年の指導歴を持つ山本綱義コーチは、1995年に中学校が設立されてからは中高一貫でチームを強化。札幌山の手の対策はあまりできなかったとそうだが、桃井優以外は中学校から一緒にプレーしてきたことによってケミストリーが構築されているのは、「やはり阿吽の呼吸というのがありますので、それがよかったのかなと思います」という指揮官の言葉でも明らかだ。
しかし、ウインターカップの頂点に立つまでの間には浮き沈みがあった。留学生のウチェをキャプテンにしたことでチームメイトが不安を感じたことなど、チームの一体感という部分で山本コーチは不満を感じる時期に直面したことを否定しない。しかし、選手たちの成長を楽しみに中高一貫でコーチングしてきた成果が、今年ようやく実を結んだ。山本コーチは次のように話す。
「ちょっとバラバラだったと思います。“そんなことで勝てるか!”とばかり言ってきました。そういう部分があるからこそ、逆にそれを克服しよう、解決していこうということが、チームが一つになっていくプロセスじゃないかと思います。外部から来た子もすごく打ち解けようと努力してくれました。そういったことがミックスされて、チームの結束が生まれてきたと思います」
中学2年でナイジェリアから来日してから山本コーチが天塩にかけて育てたウチェが35点、18リバウンドとチームを牽引。八木が22点、11リバウンド、堀内が17リバウンド、8アシストを記録するなど、昨年の決勝でも先発していた3人が期待に応えた。3年生としてキャプテンのウチェを支え、22点と決勝の大舞台でステップアップした柴田は、「ウチェがキャプテンになって自分たちも不安になったんです。日本語がうまく伝わらないこともあったけど、ウチェが一生懸命伝えようとしてくれていることに自分たちもわかりました。この1年間を通してウチェがキャプテンでよかった」と語る。
「才能を信じてやってきました」という山本コーチによる中高一貫での強化が結実し、ウチェだけのチームでないことを証明した京都精華学園は、インターハイとウインターカップの二冠を達成した。
最長身の選手が174cmと決して大きくなく、全員が道産子という札幌山の手の決勝進出は称賛に値する。「組み合わせて恵まれましたから」と謙遜した上島正光コーチだが、U18代表の森岡を軸に活発なボールムーブからカットでフィニッシュすることや、キックアウトからの3Pショットで次々と強豪校を倒してきた。決勝戦は京都精華学園のサイズと完成度の高さに対応し切れなかったが、東京体育館に駆けつけた人たちを魅了したのは間違いない。
文:青木崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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