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全文公開!オータムリーグ出場選手インタビュー:中田嵩基(筑波大学4年 174cm/PG/福岡大学附属大濠高校出身)
バスケットボールレポート by 青木 崇中田嵩基
福岡大学附属大濠高2年時の2017年に日本代表としてU19ワールドカップに出場するなど、バスケットボール選手として多くの経験を積み重ねてきた中田嵩基。筑波大の4年生となった今年は、キャプテンとしてチームを牽引する。今回のインタビューでは、高校時代のことを織り交ぜながら、大学生として最後のシーズンに臨む心境などについて話を聞いた。(取材日:8月8日)
Q あっという間に大学4年生になったという気がしますが、ケガで苦しんだ時期もあったことを含めて、筑波大でのキャリアをどう評価しますか?
「大学4年間で1、2年生のころは菅原(暉:群馬クレインサンダーズ)さんや野本(大智:滋賀レイクス)さんという素晴らしい先輩方がいましたので、なかなかプレータイムがもらえない中で2人からすごく学ばせてもらっていた期間が長かったです。自分がメインになって3年目の時にインカレで3位と、もう少しというところの結果になりました。チームとして最終のインカレでは上位のほうに食い込んでいるんですけど、大学4年間で見ると納得のできるスタッツや結果が出ていないのかなという印象です」
Q 昨年のウインターカップで後輩たちが頂点に立ったとき、どんな心境で見ていましたか?
「今は(岩下)准平がチームに入ってきていて、あの試合は僕も見ていたんですけど、気持ちよかったですね。大濠のスタイルは日本人だけでやっていますが、ウインターカップやインターハイを見ても留学生がすごく多いと思います。その中でも日本人だけで工夫して、いろいろな戦術を用いてやっているのを見て、僕たちも負けてられないなとすごく感じたのと、うれしかったのが率直な気持ちです」
Q 中田選手はライバルの福岡第一に予選決勝で負けて、3年生の時はウインターカップに出られませんでした。あれはこれまでのキャリアで一番悔しい負けであったと同時に、今の自分を駆り立てるモチベーションの道具として使ったりするのですか?
「めちゃくちゃあれは忘れられないです。あの試合はターニングポイントじゃないですけど、正直チームとして仕上がっていましたし、結構成長していた時期なので、勝っていたらウインターカップでおもしろい結果だったろうなという風に今でも思うくらいです。でも、逆に1校しか出られないというのが僕たちの中では結構シビアなところでありつつも、成長できるきっかけではあったと思います。どっちが勝ってもおかしくなかったですし、今でもあの試合に負けてしまったというところをふと思い返す時には、“俺ら負けているから勝たないとな”と思うきっかけにもなります」
Q 母校で教育実習をしたそうですが、振り返ってみて何か印象に残ることなどありましたか?
「大濠も試合の期間だったので、“西公園”というきついメニューがあるんですけど、そういったことをやるのかなと思って、正直に言うとちょっと嫌だったんです。そういうのはなかったですけど、練習の雰囲気が締まっている、高校生でこんなに締まっているのは珍しいなと思いました。4年生でキャプテンにもなって、チームの運営とか接し方で悩んでいることもあったので、そういったところを片峯(聡太)先生とかに相談しました。練習の雰囲気作りというのも、大濠は1個1個のプレーに対してすごく求めているレベルが高いし、一つのミスに対しても許さない雰囲気があります。そういったところを僕たちも真似する必要があると風に学ばせてもらいました」
Q 高校時代の自身を振り返ってほしいのですが、大濠に進もうと思った理由は?
「本当は(福岡)県外に出ようかなと思っていたんですけど、片峯先生が飯塚出身ということもあって、飯塚での試合を見に行った時、片峯先生からお話をいただきました。その時には決め切れなかったんですけど、亡くなられてしまった田中(國明)先生から“お前うち来いよ”と軽い感じで言われました。おもしろい人だなと思いつつも、1回だけでなく何回も話をする機会があって、片峯先生の人柄と日本人だけで戦うところに興味を惹かれたので、そこが結構大きかったと思います」
Q 大濠では1年生の時から出場機会をもらっていたと思いますが、上級生の競争に勝ってより多くの出場機会を得るために、取り組む姿勢で大事にしてきたこととは?
「インターハイに負けて、そこからウインターカップに向けてという期間にちょくちょく出始めて、試合に出られるようになりました。最初の頃はまったく出られなかったんですけど、その中で考えたこととしては、同期の土家(大輝:早稲田大)であったり、永野(聖汰)さん、兒玉(修)さんというすごいガードがいた中で、“同じことをしていたらダメだな”という風に僕は考えていて、持ち味であるシュートやゲームの組み立てというところであまりミスをせずに、西田(優大:シーホース三河)さんや他のプレーヤーを活かすということにフォーカスすることを意識してずっとやっていました。
それが他の違うポイントガードとして先生の目に留まったではないですけど、ちょっと評価が変わった部分なのかなと思います。そのところはすごく意識しましたし、他のメンバーとコミュニケーションを取ることでスタッツには残らないスムーズさだったり、ほしいタイミングでパスを出すというのが結構あって、それが西田さんや他のプレーヤーがスムーズに進められるようにしていたことは、自分の工夫点だったというのがあります」
Q これこそが大濠というカルチャーとは?
「泥臭さですかね。これはずっと言われていて、この間練習に行った時もそれを言われていました。大きかったり能力の高い選手が揃っている中で、それだけでは勝てないってところがあると思うので、ルーズボールであったり、シュートであったり、ディフェンスであったり、一つ一つのことを大切にして泥臭くやっていくところがしっかりしている代は勝つと思うし、そこが疎かになっている代は負けるというのがあると思います。そこが大濠のカルチャーとして根付いているものじゃないかと思います」
Q 片峯コーチはどんな存在?
「片峯先生は目標としている選手でもあり、年代も近いので良き相談相手というのが結構あります。自分も先生の下で学ばせてもらった3年間というのは、人間的にも成長できたと感じるし、プレーヤーとして考える幅も広がったので、僕のバスケットボール人生にとって欠かせない人物という感じがします」
Q 中学の時からトーステン・ロイブルコーチに評価され、アンダーカテゴリーの代表として2017年には高2でU19代表のメンバーとなり、世界と戦いました。アンダーカテゴリーの代表活動での経験は、現在の中田選手にとってどう活かされてしますか?
「あの時は(八村)塁さんや西田さんという日本を代表するような選手とアンダーカテゴリーで一緒に戦うことができて、自分の中ではいろいろなことが起きても動じなくなりました。あのとき代表に入って自分の力があったかと言うと、もちろん足りない部分があったと思いますけど、選ばれたことに対して“何が評価されたのかな?”というところから入って、それを常に自分へ矢印を向けて考えることがあれから続いています。
もちろん、伸び悩む時期だったり、自分のプレーやいろいろなことで悩む時期もあったんですけど、あの時に経験したことが今に生かされているなと思っています。スタンダードを上げ続けることや自分に矢印を向けるというのを常に意識できるのも、あの時に経験できたことあるので、自分に“まだまだだな”という風に思いを向けることが今のキャリアにつながっているのかなと思います」
Q 筑波大学に進む前にNBAを見に行きましたね。その時の思い出やバスケットボール選手として何か感じたことはありましたか?
「アメリカに行くのは初めてだったのですが、なんか世界が広がったというか、いろいろなところを回ったり、NBAの試合を見たりしました。この前まで憧れという感じだったのですが、“このプレーをするためにどこまでやったらいいんだろう?”という視点で見られるようになりました。どんどん自分がステップアップしていくにつれて、一つの何気ないプレーについて、ここまで捉え方が変わるんだと感じた機会でもありました。自分がもっと、ただ努力しているだけではダメだと、NBAの試合を見て感じました」
Q 4年生となった今年、吉田健司コーチから求められているところは?
「健司さんとよく話すのですが、自分はキャプテンでもあり、ポイントガードでもあります。他に能力の高い選手や身長の高い選手がいっぱいいる中で、チームをまとめられたり引っ張ったりする存在が必要不可欠であって、今年のチームは調子のいい時はすごくいいのですが、流れが悪い時にすごく崩れてしまうという脆い部分もあります。そういった部分で自分を含めた4年生がチームを安定させることは、(コーチから)求められていることです。
プレー的には今年から少しスタイルが変わっていまして、全員で点を取り、全員で守って、全員で走るというスタンスになってきて、的を絞られないようにするというのがコンセプトとしてあります。昨年まではボールを散らすことが多かったのですが、自分でも積極的に得点を取ったりする機会が増えてくると思うので、得点やディフェンスという部分が求められているのかなと」
Q プレーで絶対の自信を持っているものは?
「僕は大学に入ってからディフェンスが好きになったので、ディフェンスと言いたいところですが、3Pは負けないと思います。結構(ステフィン)カリーが好きなんですけど、小さい選手ほど3Pが入ると、(ディフェンスも)そこまでケアしなければならなくなりますし、プレーの幅も広がると思います。そういった部分でもシュートは欠かさず打ってきたので、そこに関しての自信が僕にはあります」
Q 大学に入って以降、最も成長したと感じる部分はディフェンスですか?
「そうですね。菅原さんとマッチアップして、1年目ですごく衝撃だったというか、フィジカルにディフェンスされますし、総合的に見てレベルが違うと感じました。そこでディフェンスに対する考え方、取り組み方が変わったと思います」
Q 練習試合もほとんどできず、ほぼぶっつけ本番で臨んだ春のトーナメントは4位という結果になりました。そこで実感できた課題として、リーグ戦までに改善したいと感じた部分を話してもらえますか?
「おっしゃられた通り練習試合がほぼできていない状況でぶっつけ本番だったのですが、留学生がいるチームに対してハーフコートのバスケットボールに持ち込まれると、やはり主導権を握られてしまうところがあります。そこをいかにハーフコートの時間を削ったり、ペリメター陣にいいプレーをさせないところを40分間やり続けることが、まず課題として上がってきます。
大東文化大と準々決勝を行って、3点差で勝つことができました。その時は前から時間をかけさせながらハーフコート・バスケットをさせないようにすることができたんですけど、残りの準決勝と3位決定戦は自分たちの思うような組み立てができず、留学生にオフェンス・リバウンドやゴール下を支配されてしまうパターンが結構ありました。
その反省を基に、この夏はずっと留学生に対する守り方、ピック&ロールに対する守り方を徹底して、そのプラスアルファでスタンダートを上げることをやってきました。前からプレッシャーをかける、一人一人のディフェンス力であったり、ローテーションのところをいかにミスなくこなすかというところをすごくフォーカスしてこの夏取り組んできました。そこは課題として取り組んでいた点だと思います」
Q 昨年のU19ワールドカップには、後輩でチームメイトの木林優、小川敦也、浅井英矢、岩下准平が日本代表としてプレーしました。リーグ戦とインカレの頂点を目指すうえで、世界を体感した彼らに対し、チームに何をもたらしてほしいと期待していますか?
「木林は(ケガで)試合に出られるかわかりませんが、他の3人に求めることとしては、練習中からアンダー19とかを経験して、“日本で通用しているプレーが通用しない”とわかっていると思うので、そういったところをみんなに還元するというか、スタンダードを上げられるように促すという行為を僕は彼らにしてほしいと考えています。
取り組み方というのも、このままじゃダメだとよく聞かれると思うんです。“海外とやってこのままじゃダメだ! フィジカル面がどうだ”とか言われるかと思いますが、それはわかりきっていることですので、彼らは取り組み方というところをいい意味で影響を与えてほしいです。プレー面に関しては、この3、4人は自分の個が強い部分がああります。チームで戦っていく中で個で打開する場面も出てくると思うので、この4人は必ず個で打開することを求めていきたいと思っています」
Q 最上級生としてチーム全体にアプローチするうえで大事にしていることは何ですか?
「アプローチとしては、今年に入って4位、2位と優勝という形ができていませんが、かつポテンシャルがすごくあると思っています。もう一つ上の練習だったり、取り組み方をしていかなければいけないという話になっています。大学生で筑波もそうなんですけど、上下関係がなくて、いい雰囲気で取り組めている半面、緊張感というところが足りていない。先ほどの大濠の話でもありましたが、一つにミスであったり、一つのミスに対しての責任感といったところができていないと思うので、そういったところを最上級生としての雰囲気作り、取り組みというところをいかに僕が言えるのかというところが、すごく大切だと思っています。
僕が1年生のころ、今琉球(ゴールデンキングス)にいる牧(隼利)さんがキャプテンをしていたのですが、牧さんは怒ったりすることができないタイプで、根が優しすぎてできなかったんです。やはり、このままの練習じゃ勝てないという風にリーグ戦の時に気付いて、そこからチームに対して求めるスタンダードがすごく上がり、インカレですごくいい結果を残せたという背景がありました。練習の強度や質が高くないと、勝てない時は勝てないし、逆にできている時は勝てるというのが僕の4年間における経験です。僕が4年目になった時はそういったところ、嫌な発言になるかもしれませんが、それをやるのがキャプテンの役目ですので。そういったところを取り組んでいきたいと思います」
Q この人にはどうしても負けたくないと意識してしまう選手などはいますか?
「同期の土家や日大の飯尾、大東の中村拓人ですかね。その3人は同世代でも注目されていた選手でしたし、ラストイヤーということもあって彼らも並々ならぬ思いで取り組んでいるはずです。その3人とはマッチアップすることになるので、負けたくないなという風に思っています」
Q リーグ戦に向けての意気込みをお願いします。
「ここ4年間でリーグで勝っているという結果はないですし、今年から26試合というとても過酷なスケジュールになっています。今いるスタートの5人だけでは勝ち切れない大会になるので、バックアップメンバーを含めたチーム力が必要になってくると思います。現状何人絡めるかわかりませんが、チームとしてどこまで層を厚くできるかは、どの大学も大事にしていることだと思います。そこを早く確立していくことと、今年は横地(聖真)と木林がいない中で、多分2人とも帰ってきたら試合に出られると思いますが、初めてチーム全員が揃った状態で戦いになります。僕たちもすごく楽しみにしているという感じで、化学変化がどう起きるかわからないですけど、いい方向に進むと勝てると思います。そういった意味で楽しみな面もある大会なので、気負いすぎず楽しくやりながらも、優勝できたらと思います」
Q この24時間でちょっとだけハッピーだったこと、何かありますか?
「わー、なんですかね…。昨日筑波ライブというのを日本体育大学さんとうちでやりまして、今までうちの体育館でどこかの大学を呼び、人が入って(試合を)やることがほぼなかったので、人前でプレーできてすごくハッピーだったなと思います」
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中田嵩基(筑波大学4年 174cm/PG/福岡大学附属大濠高校出身)| 第98回関東大学バスケットボールリーグ戦 出場選手インタビュー
文:青木崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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