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井上ひかる
高知中央は昨年のウインターカップで初のベスト4進出。その原動力となったのが、ポイントガードの井上ひかるだ。留学生のンウォコ・マーベラス・アダクヴィターとのピック&ロールは、八雲学園も昭和学院も止めるための答えを出せないまま、高知中央に敗れていた。
準決勝の相手は、練習試合で大敗していた桜花学園。ベスト4進出という目標を達成したことで、女王を倒して優勝したいという思いはメンバー全員が強くなっていたという。結果は悔しい敗戦となったが、そのころの心境や桜花との試合についてなど、井上にいろいろ振り返ってもらった。
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井上ひかる
Q ウインターカップでプレーしてからもうすぐ1年が経過しますが、去年の今ごろはどんな心境で日々を過ごしていましたか?
「インターハイがなくて、最後の学年になって初めての全国大会だったので、すごい緊張感を持って練習していたし、ウインターカップでベスト4という目標をずっと掲げてやってきていた。それを達成できるような気持で、ずっと練習はしていました」
Q ウインターカップを経験した今だから伝えられるアドバイスみたいなものを、もう一つ、二つ深掘りしたものがあればありがたいんですけど…。逆に、当時の自分に今だから言えるアドバイスを言うとしたら何と言いますか?
「自分は緊張しいなんで、1回戦とか緊張しまくっていて、ボールが手につかないとか、自分のプレーができないとかだったので、自分のプレーをするのが一番大事だと思うので、リラックスして緊張せずにやってほしいと思います」
Q 緊張をほぐすためのルーティン、方法はありましたか?
「自分は試合会場へ行くとき、その時期に好きだった曲を延々とリピートして聴くというのをずっとやっていました」
Q ちなみにどんな曲でしたか?
「全然応援歌とかじゃないんですけど、あの時はドライフラワーという曲がめちゃくちゃ好きで、それをずっと聴いていました」
Q 強豪の八雲学園と昭和学院を撃破しての準決勝進出。練習試合で圧倒された桜花学園相手に、自分たちはやれるという自信を持って試合に臨めた感じでしょうか?
「そうですね、3回戦、4回戦で段々とチームの流れというのが持ってくることができていて、自分のプレーというのも出せるようになって自信もついてきた。桜花さんと練習試合をさせてもらった時からずっと自分たちのダメなところとか、もっとやらなければいけないところを見直してずっと練習してきたのが、すごく自信になっていました。自分たちなら勝てるとかみんなで言い合ったり、負ける気はしないという気持で臨んでいました」
Q 負ける気はしないという自信は、どこから来ていましたか?
「3、4回戦で(相手を)圧倒していたと自分は思っていたので、それが自信につながっていました」
Q チームメイトたちの雰囲気はどうでしたか?
「みんなノリノリだったのでその時は。これは勝てるだろうとテンション上がりまくりという感じでした」
Q ディフェンスはゾーンで入ったと思います。ゾーンで対応するという吉岡コーチの意図を井上さんはどう捉えていましたか? ゲームプランに対する印象は?
「最初はゾーンでしたかね? ウインターでずっとゾーンをやるというつもりはなく、桜花戦までに何回か試して成功していたので、そのままゾーンで行こうとなっていた。自分たちはマンツーよりもゾーンのほうが使えるだろうとわかっていたので、吉岡さんの考えならば行けるだろうという気持でやっていました」
Q 桜花のツインタワー(アマカと朝比奈)は意識しましたか?
「練習試合をした時からあの2人は目立っていて、自分たちにとってもすごい大きな壁だった。うちも留学生がいますけど、留学生同士でもずっと勝てていなかった。留学生も外からプレーするというのを心がけて練習したりはしていました」
Q チームはショットがなかなか入らない試合のスタートでしたが、井上さんの3Pが2本決まったことで、これなら巻き返せるという感触はありましたか?
「自分のスリーが当たっていて、このままならば同点まで追いついて、勝ちに行けるんじゃないかなと思っていました」
Q そこから点差がなかなか詰まらなかった理由とは?
「やはり江村(優有)さんのところを止めきれなかったところが、一番の原因だったかなと思います」
Q 江村さんは後にU19代表で世界と戦ったわけですが、あの試合で実際にマッチアップしてみてどうだったのですか?
「中学校の時から知っていて、一度ジュニア・オールスターで少しだけマッチアップさせてもらったときに、すごく上手で、この人すごいなという印象がずっとありました。高校に入ってから練習試合をしてもレベルが違ったけど、ウインターまでに自分も江村さんに追いつけるようにと思って練習し続けて、ウインターの準決勝でコートに入ったんです。やっぱり自分が努力していているけど、江村さんも努力しているんだなと分かるくらいすごく上手で、シュート力も全然違って歯が立たないというか、自分じゃ追いつけない存在だなという感じはしました」
Q シュート以外の部分で、彼女を抑えるのは厄介と感じたところは他にありましたか?
「チームを落ち着かせるのがすごく上手だなというのは感じましたし、自分とは違う部分だなと思いました」
Q この24時間であったちょこっとした幸せを教えてください。
「今日のお昼においしいハンバーガー屋さんに行ったことが幸せでした。行きつけのお店でよく行っています」
Q ピック&ロールを使っての展開よりも、自分でアタックして得点するシーンが多かったと思いました。キャプテンとして自分が引っ張らなくて誰がやるんだという心境だったのですか?
「それはずっとありましたね。2Qにブザービーターを決めたところがあったんですけど、あそこは自分が決めて少しでも点差を縮めてやろう、自分がやるしかないという気持でシュートを打ちました」
Q 3Q以降に離されてしまったけど、チームが落ち込まないように、パニックにならないように自分のプレー以外のところでも気を遣っていたと思うのですが、いかがでしたか?
「声を出すというのが自分の仕事だったと思うので、コート上でも声を出したり、ベンチに戻ったときは“大丈夫”“まだ行ける”とずっと声をかけることは意識していました」
Q 最終的には桜花の壁に阻まれてしまったわけですが、自分たちの代でベスト4を目標に頑張ってきた成果が出たことをどう感じていますか?
「ラスト1年はキャプテンになってしんどいし、大変だったんですけど、ずっと目標にしていたベスト4を達成して、今までの努力が報われたというか、今までにない感情が出てきて、3年間頑張ってきて本当によかったなと思ったのと、桜花に勝って優勝したかったなという気持もあります」
Q 試合後、吉岡コーチの言葉で今も印象に残っているものはありますか?
「吉岡さんが泣きながら“悔しいよな”と言ってくれたとき、その言葉を聞いたら吉岡さんも自分たちと一緒にずっと戦ってくれていたんだなと改めて感じました。それが一番印象に残っています」
Q 兵庫から高知に一人で渡って過ごした3年間はどんなものでしたか?
「親元を離れたので、今まで自分でやってこなかったことも自分でやらなければならないという状況の中、いろいろ成長することもできました。いろいろな県から集まってきた子たちと毎日一緒に生活して仲良くなってというのは、普通の人だとあまり経験できないことだと思うので、自分にとって高校3年間というのはいい経験をさせてもらえたし、大切な思い出になりました」
Q ウインターカップの経験で得たもの、学んだことで現在の自分に活かされていると思えることはありますか?
「負けたことでプレー面でも気持の面でもいろいろ学んだことがあって、それを忘れずに大学の練習や生活で生かすようにはしています」
Q 大学でのバスケットボール生活は充実していますか?
「難しいことばかりですけど、楽しくやっています」
Q 難しいこととは?
「高知中央のときは留学生がいて、自分中心で攻める感じでしたけど、今はエイトクロスとか巻き込みとかいうプレーを使っていて、ガードよりもフォワードという感じなのです。パスの部分とか今までしてこなかったので、すごく難しいなというのはあります」
Q ピック&ロールに慣れていたから、そこへの順応で苦労されているわけですか?
「そうですね」
Q エイトクロスできない局面では、自分でピックをやってみたいな状況はありますよね?
「あります」
Q 大学を卒業したらWリーグでやりたいという気持ははありますか?
「ないです」
Q 大学が選手として最後という感じですか?
「そうです」
Q 将来は教える側ですか?
「教師として教えたいです」
Q コーチとして活動したら、どんなふうに指導したいか、自分なりのビジョンはありますか?
「バスケットのことを教えるのはもちろんなんですけど、人間性とか、社会に出たときに通用するような人材を作っていきたいというのは、ずっと思っています」
Q 高知中央の後輩と今大会に参加する選手たちに何かメッセージがあればぜひ。
「ウインターカップというのは大きな舞台で、すごい緊張すると思うし、プレッシャーもあって大変だと思うんですけど、大きい舞台でプレーできるのはいい経験だし、負けた人たちもいるということを考えて、自分のできる精一杯のプレーをして、頑張ってもらいたいと思います」
文:青木崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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