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仙台大附明成・山崎一渉
仙台大附明成と桜花学園の優勝で幕を閉じた2020年のウィンターカップ。例年同様にいろいろなドラマやストーリーを生み出した今大会について、筆者が印象に残ったことを男女5つずつピックアップしてみた。
オールラウンダーとして来年がさらに楽しみな仙台大附明成・山崎一渉
本来先発だった菅野ブルースと加藤陸を故障で欠きながらも、見事6度目の頂点に立った仙台大附明成。エースの山崎一渉は東山との決勝戦で大きな期待に応え、決勝点となるジャンプショットを決めるなど25点、10リバウンドをマークした。非凡な運動能力と素晴らしいシュート力は、日本のバスケットボール界にとって宝と言えるもの。佐藤久夫コーチの下であと1年、より高いスキルを身につけることですごいオールラウンダーに成長する可能性を秘めている。卒業後は大先輩八村類に続き、NCAAディビジョン1の大学でぜひプレーしてほしい選手だ。
多くの選手を起用できるチームを見事に作り上げた東京成徳大
桜花学園との決勝戦で敗れたものの、東京成徳大は女子で最も印象に残ったチームだった。ウィンターカップのような一発勝負の大会では、どうしてもスターターの5人が長い時間出場するチームがどうしても多くなる。しかし、準決勝の札幌山の手戦における東京成徳大は、出場した9人全員が得点とアシストを記録。山田葵のゲームメイク、須田理恵と佐坂光咲のシュート力を武器に、どの選手もしっかり仕事ができるチームを作り上げた遠香周平コーチの手腕は称賛に値する。最長身が177cmと決して大きいチームでないながらも、ボールと選手が連動するオフェンスが素晴らしかったことは、平均96点、6試合で65本の3Pショットを決めていたことでも明らかだ。
男子ベストゲーム:仙台大附明成対福岡第一
仙台大附明成と東山の決勝戦は素晴らしいゲームだった。しかし、点差が2ケタに広がることがなく、最初から最後まで拮抗した展開という意味では、準々決勝で対戦した2校の戦いをベストにした。福岡第一の持ち味である厳しいディフェンスからの速攻を限定させ、チームを牽引してきた山崎一渉を4Qになってから3年生の越田大翔、山内ジャヘル琉人、山内シャリフ和哉がビッグプレーを連発して勝利をゲット。これが大きな自信となって、仙台大附明成は頂点に駆け上がったと言えるだろう。
女子ベストゲーム:東京成徳大対安城学園
3Q中盤までは完全に東京成徳大が主導権を握っていたゲームだった。しかし、安城学園はゾーンプレスで東京成徳大のリズムを崩すことに成功すると、4Q残り6分43秒で最大で17点あった差を78対78の同点に追いつく。その後は終盤までシーソーゲームが続き、1点リードで迎えた残り15秒、安城学園はボールをキープするかファウルをもらってフリースローを決めれば、勝利は決定的と思われた。しかし、東京成徳大の粘り強いディフェンスによってターンオーバーを犯してしまうと、左コーナーに走っていた佐坂光咲が逆転ブザービーターとなる3Pを成功。安城学園の金子寛治コーチが思わずフロアに倒れ込んでしまうくらい、衝撃的な結末であり、見ている人たちをワクワクさせる試合だった。
ハードワークと緻密さに加え、3Pショットでベスト8に進んだ尽誠学園
渡邊雄太を擁して2年連続で決勝進出を果たした時に比べれば、今年の尽誠学園は明らかに身長が小さなチームだった。しかし、色摩拓也コーチの下、ハードワークと緻密さを兼ね備えたチームでベスト8まで勝ち上がった。準々決勝の北陸戦では、チーム最長身の一村舞人(189cm)に3Pショットを打たせることで留学生をアウトサイドへ誘き出し、ペイント内にスペースを作って得点を狙うオフェンスを展開。一村はその期待に応え、4本の3Pショットを決めていた。佐藤涼真と高村駿佑の2人で15本のアシストを記録するなど、尽誠学園はサイズで優位に立つ北陸相手に互角の戦いを演じた。81対86で競りませたとはいえ、14本の3Pショット成功は見事。3試合の平均成功数が12本、成功率が50%という数字を残したことが、ベスト8進出の原動力になったのは明らかだ。
高知中央初のベスト4進出
2年前に吉岡利博コーチが就任した当時、高知中央は「ユニフォームを着たくない」という部員がいるくらい、チームが崩壊しているような状態だった。しかし、司令塔の井上ひかるが起点となり、ンウォコ・マーベラス・アダビクターがスクリーンをかけるピック&ロールを軸にオフェンスを展開。昨年の天皇杯で対戦した紀陽銀行の永田睦子コーチは、「私たちも止められなかった」と語ったくらい、質の高いプレーを見せたのは間違いない。準決勝で桜花学園に敗れたとはいえ、チーム史上最高成績という3位という素晴らしい結果を残した。
能代工として最後のウィンターカップは1回戦で逆転負け
58回の全国制覇を誇る能代工は、来年度から学校統合によって能代科学技術に名前が変わる。能代工として臨む最後のウィンターカップ、九州学院との1回戦は序盤で主導権を握り、1Q途中で15点のリードを奪った。しかし、後半になって九州学院の厳しいディフェンスにオフェンスが停滞し、4Q10分間で奪った得点はわずか8。キャプテンの中山玄己が7本の3Pを決めるなど22点、上村大佐が23点とチームを牽引したものの終盤で力尽き、72対77で競り負けた。
「大会前には能代工の名前が変わるという注目が大きくなり、もしかすると選手たちは目に見えないプレッシャーを持ちながらプレーしていたのかもしれません……」とは、試合後の小野秀二コーチ。能代科学技術に名前が変わる来年度からは、能代工の素晴らしい伝統を継承しながら、新たな歴史の1ページを綴ることになる。
まさかの逆転負けで3回戦で姿を消した岐阜女
桜花学園の対抗勢力と見られていた岐阜女が、3回戦で昭和学院に敗れた。前半は一進一退の攻防になったが、3Qになって持ち味のディフェンスと38点を稼いだイベ・エスター・チカンソ軸にしたオフェンスで最大で16点のリードを奪う。しかし、4Qになって昭和学院のプレス・ディフェンスでオフェンスがリズムを失い、時間の経過とともに点差が詰まっていく。残り1分45秒に65対66と逆転されると、ターンオーバーやフリースローのミスが続いて追いつけないまま、67対70で試合終了。「10点差がついて、早く楽になりたいという気持ちがあったのかなあ。いけるところで消極的になった。大事にいきすぎたところがあった。点が取れなかったのが大きい」と、安江満夫コーチは逆転負けをこのように振り返る。チカンソと松本新湖(16点)以外の選手が、得点にあまり絡めなかったことも、岐阜女にとっては誤算だった。
ここ2年茨城県勢の天敵となっていた羽黒を撃破し、ベスト16進出を果たしたつくば秀英
3年連続4回目のウィンターカップ出場を果たした羽黒は、2年連続で茨城県勢と1回戦で対戦。2018年は1回戦で取手第二を77対65、2019年は有力校と言われた土浦日本大を81対75で倒していた。今年は1回戦で鳥取城北を93対72で破ったつくば秀英が2回戦で羽黒と対戦。前半は1点を追う形で折り返したが、後半になってディフェンスがステップアップし、3Qで羽黒を6点に押さえ込む。20点の根本大、22点、10リバウンドの齊藤雄都、14リバウンド、9アシストの目良健の活躍によって、71対60で茨城県勢の天敵となっていたチームを撃破。3回戦の洛南戦は3Qまで接戦を演じたものの、4Qで力尽きて69対83のスコアでベスト8進出はならず。新型コロナウィルスの影響で出られなかった茨城県の宿敵である土浦日本大に思いを寄せながら、つくば秀英はこのウィンターカップで持てる力を出し切った。
女子留学生選手のレベルアップ
決勝で53点と大爆発した桜花学園のオコンクウォ・スーザン・アマカは、186cmのサイズとフィジカルの強さを生かし、インサイドで絶対的な存在感を示した。井上眞一コーチはポストプレーの教えるのが非常にうまく、数多くの名選手を輩出してきたことでも明らか。しかし、今大会でのアマカは、ウイングからのドライブでフィニッシュするシーンを見せるなど、ゴール下だけの選手でないことも示した。
コール下だけの選手でないという点では、高知中央のンウォコ・マーベラス・アダビクターも当てはまる。ピック&ロールからのダイブに加え、外に出てのポップアウトからショットを決めていたのが印象的だった。岐阜女を破って自信をつけていたはずだった昭和学院が敗れた理由の一つは、ンウォコのプレーだったと言っていい。
文:青木崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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