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第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ) プレビュー | 優勝候補筆頭・東海大学の牙城は崩されるのか!?
バスケットボールレポート by 片岡秀一第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)
12月7日(月)から13日(日)にかけて、第72回全日本大学バスケットボール選手権大会が開催される。本来はオリンピックイヤーとなるはずだった2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止策に伴い、各地域、各大学で競技活動に制限を余儀なくされ、別の意味で特別なシーズンとなった。
混乱と混沌が包む中、全国各地のチームが活動を模索し、春先以降に段階的に活動を再開してきた。その、全国の大学バスケットボールチームの代表が本選手権の出場チームである。本記事では、優勝争いを軸に見所を紹介するが、それぞれの環境や状況に合わせ、話し合いを重ね、決して歩みを止めず、苦境を乗り越えた全チームが注目に値し、次年度以降へと続く確かな礎を築いているであろう事を冒頭で述べておきたい。
本大会の優勝候補筆頭には、オータムカップを優勝した東海大学が挙げられるだろう。変則的な大会の中、拓殖大学、専修大学、白鴎大学、大東文化大学に勝利して優勝を掴んだ大会では、完成度が際立った。昨シーズンは、準々決勝で専修大学に敗退。悔しさを乗り越え、伝統のディフェンス力に磨きをかけて、勝ち取った勝利には、優勝以上に、東海大学の存在感を改めて知らしめたインパクトがあった。
脚力やフィジカルコンタクトの強さ、また、献身性だけではなく、DFにおけるチーム戦術の遂行能力も極めて高く、ゴールを狙う相手チームに立ち塞がった。対戦チームにとっては、屈強で、統率の取れたディフェンスに屈するシーンも多く、戸惑いが漂う時間帯も多かった。また、高いレベルでパフォーマンスを発揮できる選手も多い為、一試合を通じてディフェンスの強度も下がらない事も東海大学の強みである。
また、相手のミスを見逃さないのはオフェンスでも同様だ。オータムカップでは、ピック&ロールを起点にゴールへ攻め込む際、DF側の対応を見極め、攻め手を瞬時に切り替える判断力が光った。戦術眼と技術を多くの選手が携えている為、DF側の連係ミスの歪みを見逃さない。少しのミスを突き、得点を重ねていった。
最上級生であり、主将を務める#28津屋一球、2020年度男子日本代表候補選手にも選出されている#19西田優大らの最上級生に加え、インサイドでの存在感を光る#86八村阿蓮、得点力のある司令塔の#11大倉颯太、ルーキーの#5河村勇輝とアウトサイド陣も豊富。
対抗馬としては、オータムカップで準優勝の大東文化大学を推したい。決勝戦では、東海大学に32点差となる47−79で大敗を喫するも、決勝の舞台に辿り着き、2017年度優勝、2019年度3位と安定した戦績を誇るチームの勝負強さを証明した。毎シーズン、優勝を目指して努力を重ねているチームにとって、決勝戦での大敗も、インカレの舞台に挑む上での大きな糧になっている事は想像に難くない。仮に両チームが決勝戦で相まみえるとしたら、オータムカップの決勝戦から約1か月後の再戦となる。最上級生の#2飴谷 由毅を中心に、3年生の#3星野 京介、#1深渡瀬 海、突破力のある#12中村拓人、ルーキーの#1バトゥマニ クリバリらがチーム一丸となり、悔しさを決意へと転換し、積み上げてきた時間の質の高さを証明し、勝機を見出したい。
昨年に続いて優勝の栄冠を掴み取りたい筑波大学は、#27山口颯斗、#8菅原暉の最上級生が鍵となるのではないか。下級生時より主力として活躍し、準優勝、4位、優勝と、常に大舞台の中で筑波大学の歴史を紡いできた。共に、走力と、得点力のある選手であるが、下級生インサイドが加入して厚みを増したチームにあって鍵となるのはリーダーシップだ。昨年、チームを優勝に導いた牧隼利(現・琉球ゴールデンキングス)、増田啓介(現・川崎ブレイブサンダース)らと同様にコート内外でチームを牽引する力が求められる。
第4シードの白鴎大学も、得点、アシスト等で万能なプレーを見せる#23荒谷裕秀が鍵。順当に勝ち上がって東海大学との対戦した際には、オータムカップで1得点に抑えられた第3ピリオドの借りを挽回し、勝利を掴みたいところ。元日本代表の網野友雄HCが就任後、2019年度にはスプリングトーナメントでも優勝を掴んでいる。インカレでも、近年ではベスト4の常連チームであるが、悲願の初優勝に向けた仕上がりに期待したい。
上記以外には、昨季、東海大学を準々決勝で退け、2年連続のファイナリストである専修大学も面白い存在。得点力があるオールラウンダーの#12西野曜を中心に、勢いに乗ると対戦チームにとっては怖い存在である。
昨今の戦績を鑑み、優勝争いについては関東大学リーグに所属するチームが中心となった。しかし、B.LEAGUEを見ても、他地域で腕を磨いた選手が活躍しているケースも多い。インカレの舞台では、打倒・関東を目指して乗り込んでくるチームの戦いにも注目だ。
また、昨今では、大学バスケットボールを取り巻く環境も大きく変わりつつある。B.LEAGUEの特別指定選手制度や、有望選手の在学中のB.LEAGUE転向も珍しくなくなった。また、3x3日本代表チームにも何名かの大学生選手が候補選手として選出されている。大学生選手にとっては、自分の軸足とする選択肢が増えたともいえる。
バスケットに関するキャリアの展望や選択肢も、各選手のビジョンに応じ、多様性に富むようになってきた。各チームにとって、チームのマネジメントにも、これまでとは違った形が求められる。そうであるからこそ、本選手権には見所があるのではないか。
「大学でバスケをするしかないので大学でバスケをする」はなく、「自分の意思で大学でのバスケットボールを選択」している選手の集合体が、本選手権の出場チームである。
特に、今シーズンのように、長期の期間、活動に大きな制限が課された環境下の中でチーム力を高めていくには、未曽有の事態でも、先頭に立って、覚悟を持って前を向いて進む選手の存在が欠かせなかったはずである。それに呼応する選手にも、勇気と、覚悟、そして、各々の創意工夫が欠かせなかったはずだ。
その結晶が発露されるコートでは、大学バスケ特有の熱気を伴い、観る者の心に残る戦いとなるはずである。
文:片岡秀一
片岡秀一
埼玉県草加市出身。1982年生まれ。 ゴールドスタンダード・ラボの編集員としてクリニックレポート、記事の企画・編集や、クリニックなどの企画運営をし、EURO Basketball Academy運営も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。
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