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「当たり前」に感謝して、難しい時期すらも力に変える。岐阜女子の新キャプテン佐藤「必ず日本一になる」
バスケットボールレポート by J SPORTS 編集部卒業生が培ってきた強みを生かして今年も戦う
新キャプテンの佐藤果歩
高校生活の全てを捧げて追い求めた夢は、夏に見た景色と重なるように、指の隙間からこぼれ落ちた。
《ウインターカップ2019 女子・準優勝 岐阜女子高等学校》
この年、彼女たちは女王・桜花学園の壁を越えることはできなかった。
「常に桜花さんをイメージしてオフェンスもディフェンスも練習しています」(佐藤果歩)
《全国制覇》のみを追求してバスケと向き合う彼女たちにとって、全国2位という輝かしい結果は満足に値しない。新チームでキャプテンに任命された佐藤果歩は、2年生ながら去年のウインターカップでスターターを務め、コートの上で悔し涙に濡れた一人。「(終盤)点差的には追い上げたと思いますが、勝ちきれませんでした。今年は必ず勝ち切って、日本一になりたいと思っています」
確かに受け継がれた勝利への「覚悟」。名将・安江満夫コーチは「昨年ウインターカップでも負けて、そういう悔しい思いを持っている。いままでの財産をもとに、もう一歩飛躍できるチャンスのあるチームだと思っています」と期待を寄せる。悔し涙に濡れた敗戦の記憶が、岐阜女子の選手たちを支えている。そして、その象徴がキャプテン佐藤でもある。安江コーチは佐藤のキャプテン任命について「私はチームの柱になって欲しいという願望でキャプテンという責任を負わせることがありますが、(佐藤は)そういったものを背負うことができる力を持っていると判断したので、彼女に頑張って欲しい」と話す。
そして、新体制で迎えた2月の第33回東海高等学校新人大会では、再び桜花学園と決勝で激突した。江村優有を筆頭にタレント光る桜花学園に対し、岐阜女子はイベ・エスター・チカンソ、松本新湖らの得点でリズムを掴みかけるもリードを許して前半を折り返す。後半には佐藤の3ポイントを起点に攻勢に転じ、4点差にまで詰め寄るも、最後は67−69と僅か2点差で敗れた。
安江コーチは「(桜花学園は)去年のガードやセンターなどタレントがしっかり揃っていて、隙のないチームだと思っています。だからこそ我々は挑む価値がある。今年も自分たちらしさを出して戦えるチームだと思っています」と現在地を見つめる。佐藤も「「サイズがないので、しっかり相手を抑えてからリバウンドにいくなど、基本的なところをしっかりと身に着けるべきだと思います」と敗戦を振り返った。
同じ東海ブロックにありながら、高校女子バスケ界の双璧をなす桜花学園と岐阜女子。最強にして最大のライバルの存在が、彼女たちを高みへと連れて行く。今年も両校の激しくも清々しい睨み合いは観る者を魅了してやまない。
「生徒たちにも言いますが、勝負は勝とうと思って勝てるわけではなくて、負けると思ったら勝負にならない。じゃあどうしたら戦えるのかというと、やっぱり常日頃からどう取り組むのか。ましてや桜花さんはそう簡単にひっくり返せるチームではありません。だからこそ我々にとっては常日頃の取り組みが結集したなかで、はじめてファイナルで戦えると思っています。卒業生が長年チームとして培ってきた強みを生かして今年も戦うつもりです」(安江)
最後まで諦めない。泥臭いプレーを続ける。
安江満夫監督
一向に収束の気配を見せない新型コロナウイルス。4月の緊急事態宣言発令時には、寮生活を送る選手たちに一時帰省が命じられた。
「一人のアスリートとしてのモチベーションを切らさないように、例えばどんなものを食べたかを写真で送らせて食事の管理を行ったり、あるいはトレーニングの課題を出してその出来具合をチェックしたり、そんな風にチームの絆を途切らせない意図は持って活動はしていました」(安江)
「ウインターカップの映像や新人戦での桜花さんとの試合を見直して、悔しい思いをずっと忘れないようにした。チームとしてもモチベーションが下がらないように、目標は日本一になることで変わらないので、それをみんなに伝えて、みんなにも同じ目標を常に持っていようと伝えました」(佐藤)
そして4月26日、高校アスリートの夏の祭典「インターハイ」の中止が決定された。選手・学生の安全を第一に考慮しての結論だと説明された。
「子どもたちの日頃の取り組みを発揮させてあげられる場がなくなったことは、指導者としても大人としても残念で仕方がないです。なくなったことは仕方がないことですので、次の目標をしっかりと見据えて取り組ませることが大事だと思います。そして、この悔しい思いや、大会がないなかで努力をし続けたことは必ず次につながっていくと思っています」(安江)
予断を許さない状況であることに変わりはない。しかし、彼女たちの目はうつむくことなく、12月の決戦の舞台を確かに見据えている。「自分たちの目標は日本一になることで変わらないので、それに向けてやるだけだと思っています」。キャプテン佐藤のなかで燃える《打倒・桜花》の炎が消えることはない。
「(コロナウイルスは)普段バスケットができることがいかに素晴らしいことであり大切なことなのか。そして多くの人たちにバックアップしてもらっているからこそ当たり前のことができる。その当たり前のことがどれだけ大切なことなのかをある意味では教えてくれたように思います。そういうことを生徒たちとともに見失わないように、バスケットで成長させていきたいと思っています」(安江)
最後に、自分たちの強みを聞かれた佐藤は「最後まで諦めないところや、泥臭いプレーをし続けるところ」と答えてくれた。
華々しい栄光の裏にある、地道な努力と継続。
泥にまみれる岐阜女子は、この逆境を跳ね返す。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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