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高校バスケットボールのファンであれば、“冬の洛南”という言葉を一度は耳にしたことがあるはずだ。比江島慎(宇都宮ブレックス)が在籍した2006年からの3年間で3連覇を成し遂げただけでなく、数多くの日本代表選手を輩出している名門校。しかし、ここ数年は留学生のいる東山に勝てない状況が続き、昨年のインターハイから全国大会に縁のない状況に直面していた。
洛南にとって2年ぶりとなった今回のウインターカップ出場は、東山に次いで京都府2位の成績で手にしたもの。とはいえ、6月の近畿大会準決勝で報徳学園を破り、東山と決勝を戦うことができたことによって京都府代表の枠を2つにできたのは、洛南が力のあるチームであることを示すものだった。吉田裕司コーチは、この1年を次のように振り返る。
「星川を中心にやる気が出てきたが、ただインターハイ予選で負けてしまい、やはりチームが沈んだ。近畿大会で報徳を破って(ウインターカップの)出場権を2枠取れたというところから、もう一度頑張ろうという雰囲気は出てきたかなと思っています。留学生のいるチームがインターハイベスト4に入るような状況を見ていると、チャンスはあるんじゃないかと…」
指揮官のコメントに出てきた星川堅信は、1年生の時からレギュラーとして活躍してきた190cmのオールラウンダー。2年前の予選決勝では東山撃破に大きく貢献していた。しかし、ウインターカップ3回戦の明成戦では、8本のリバウンドを奪ったものの無得点に終わり、チームも3点差で惜敗。悔しさと不甲斐なさが入り交じった星川は試合後、涙が止まらなかった。以来、自身とチームのレベルアップに力を入れてきたものの、東山の壁を打ち破れないまま時間が経過してしまう。それでも、どんな形であれウインターカップの出場権を獲得し、2年前の悔しさを晴らすチャンスがあることに、星川の気持は前向きだ。
「1年生の最初から試合に出してもらっていて、冬(東山)勝ててウィンターに行けました。でも、出してもらっていたのにチームから求められていることを表現できずに終わってしまって、今年は全国で活躍するぞというモチベーションで2年生に入ったんですけど、東山に夏も冬も負けてしまい、自分は何をしているんだろうって感じになりました。3年生になっても夏に負け、冬もこのような形(61対90で敗戦)であっても出場できることになったので、チームに対しての感謝や恩返しという形で活躍して勝てたらなと思っています」
北橋岳洋キャプテンは2年前、ベンチから先輩たちのプレーを見てきており、星川の悔しさも理解できる選手。「3年生がとにかく偉大で、その姿を今度は自分が見せて、後輩たちにそう思ってもらえるように頑張りたい」と話すキャプテンについて、吉田コーチは「(部員が)なかなか難しい性格の子たちなので、うまく乗せてあげないと自分で腐っていく。そういうメンタルを持つ中で(チームを)一番引っ張れるのはキャプテンの北橋。彼はそういう意味でいつもアグレッシブで、前向きにプレーできるようになっている」と大きな信頼を寄せている。
そんな3年生をサポートするのが、U18日本代表候補の小川敦也、浅野ケニー、松山雄亮という2年生トリオ。将来を嘱望されている3人の活躍は、洛南がウインターカップで名門復活を全国にアピールするために欠かせない要素。「僕ができることは3Pシュートとか、ドライブとか、オフェンスとディフェンスのリバウンドなので、2年生ですが先輩たちを助けられように頑張りたいです」と、浅野はウインターカップでの飛躍に強い意欲を口にする。吉田コーチに2年生トリオの現状について質問すると、次のような答えが返ってきた。
「ケニーは順調によくなってきている。シュートエリアも大分広がってきたし、ドライブもできるようになってきた。松山が日韓中の前に足のケガをして1か月ほどプレーできなかった。それから回復してきたけど、まだ6~7割くらいかな。(ウインターカップまでに)なんとか8~9割まで戻してくれれば、星川をアウトサイドに出せる。それが理想であり、サイズに対応していけるチームになれると思う。(バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ参加後)小川はものすごくアグレッシブにオフェンスをやるようになりました。自分のペネトレイトで突破する能力は高いし、スピードに乗った時はいいプレーが出る。トランジションの速いチームが多いと思うので、彼の脚力は十分通用すると思っている」
初戦の相手は、公立校でも強いチームと呼べる川内。全国大会の経験がない選手ばかりという不安材料があることは、「やはり全国の経験がないので、彼らには大きなビハインドになる」という指揮官の言葉でも明らか。しかし、1勝すれば大きな自信を手にできるだけでなく、「全国の舞台で洛南という過去の伝統をもう一度上乗せできるんじゃないかなと…」という吉田コーチの思いが現実になっても、決して不思議なことではない。
文:青木崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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