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【ウインターカップ2018 コラム】無口でクールな人間性を持っていた中村が、キャプテンとしてチームの新たな歴史を作ることに貢献
バスケットボールレポート by 青木 崇今年の中部大第一は、インターハイに続いての決勝進出を果たしたという点で、チームに新たな歴史を作った。福岡第一との決勝戦は、2Q序盤まで2点差で食らいつくシーンがあったものの、厳しいディフェンスからの速攻、オフェンス・リバウンドを奪われての失点が積み重なり、予想以上の大差がついてしまう。
ファイナルスコアは42対85。
「ミスしてしまって相手の流れになったところはあったんですけど、自分がキャプテンとしてやってきたので、最後まで他の選手に声をかけてあげたいなと思った」と語った中村拓人は、中部大第一のキャプテンとしてリーダーシップを発揮しながら、最後の最後までコートに立ち続けた。しかし、試合終了のブザーが鳴った直後、悔しさを含めたいろいろな思いが頭の中をよぎったことで、涙を我慢することはできなかった。
2015年にベスト4に進出したチームでプレーしていた兄の浩陸(現大東文化大3年)が「普段は家でも無口」と語るくらい、中村は基本的に物静かな少年であり、試合中もあまり表情を変えず、黙々とプレーし続ける選手。常田健コーチは次のように話す。
「教室でも今日は欠席か? と思われる子。いるのかいないのかわからない。多分無理して喋っている。喋ることが得意じゃない。ガードをすることも、キャプテンをすることも、彼にとってはナチュラル・ポジションじゃないし、不得意な部分をやっている。それをさせる理由は、彼が今後もずっとバスケットを続けていくからです。小さい子でリーダーシップをとる子は山ほどいる。あのような感覚でキャプテンをやってポイントガードというのは、中部大第一だけの問題でなく、将来の日本のためにもなるんじゃないかなと」
1年生の時からガードとして試合に出場し、2年生でスターターとなった中村は、アンダーカテゴリーの日本代表にも選れるなど、将来を嘱望されている。巧みなボールハンドリングを駆使してのドライブは、8月にタイで行われたU18アジア選手権でも十分に通用していた。福岡第一の厳しいチームディフェンスに対して、持ち味を発揮できない時間帯が多くなったといえ、ドライブからユーロステップでディフェンスを抜いてフィニッシュするなど、チーム最多の15点を奪ったのは、キャプテンとしての意地だったと言っていい。
また、言葉の少ないタイプから脱却しようと1年間努力を続けた中村は、コート上でできる限りチームメイトとコミュニケーションを取ろうとしていた。点差がどんどん開いていく中で心が折れそうになっても、キャプテンとしての責任感を果たそうという姿勢を維持し続けたことは評価に値する。
「コーチも言っているように、自分はあまり話すキャラクターじゃなかった。でも、チームをまとめなければいけないという自覚は出てきたので、このような結果になってしまったけど、少しは変われたと思います。常田コーチからずっと声を出せというのを、日頃の練習から引っ張っていけと言われていたので、自分も変わらなければいけないと思っていました」
キャプテンとして過ごした1年間について、中村はこのように振り返る。代表活動でチームを離れていた時には、留学生との間に起こっていたコミュニケーションのトラブルを解決するために、キャプテン代理を務めていた青木遥平を助けた。
「チームにとって一番の強みなので、そこがぶれてしまうとチームとしてもぶれてしまう。そこのメンタルの部分をコントロールしなければいけないなと思ったので、あの2人には特に声かけをしていました」と語る中村自身も、チームにいる間はブバカー・ンディアイエとバドゥマニ・クリバリとできる限り対話するようにしていた。表彰式後の記念撮影が終わった後、同級生であるンディアイエとお互いに涙を流しながらハグをしながら話していたシーンは、キャプテンとして成長したことを示すものだったと言っていい。
全国制覇という目標を達成できなかったといえ、中村は新たな歴史を作ったチームのキャプテンを務めたこと、兄の浩陸がいた2015年の4位を超えたことに誇りを持っていいだろう。3年間厳しい指導をし続けた常田コーチも、最後は「キャプテンにした甲斐はあったと思う。胸を張ってほしい」とねぎらった。
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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