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強い相手を自分の手で破りたかった。小さなエースは、意地を張っていた。ウインターカップ2018第71回全国高校バスケットボール選手権大会は24日に第2日を行い、女子の昌平(埼玉)は68-72で長崎女子(長崎)に敗れた。最終ピリオドだけで12点差から1点差に追い上げたが、最後は届かなかった。加藤祐介監督は「追いつくまでに時間がかかり過ぎた。その前の時間に少し焦ってミスが出てしまったのが、もったいなかった」と悔しがった。
苦戦の要因は、まず177センチの長身を誇る長崎女子のエース大村早和(3年)を止められなかったことだ。大村のパワフルなアタックに守備網を破られ、リバウンドも取られた。平均身長の低い昌平は、彼女を止められなかった。攻撃も対策に苦しんだ。相手のベンチからは「7番(石垣優衣・3年)と9番(菅野奈月・3年)だ」と声が飛び、得点源となる2人を厳しくマークをされた。
その中で、闘志を燃やしていたのが、石垣だった。相手ベンチ側のコートでボールを持つと「ドライブしかないよ」という声が聞こえて来たが、エースが引くわけにはいかない。石垣は何度もトライした。試合中に左足首を痛めたが、しばらくするとコートに戻って、再びドライブ勝負を挑み続けた。
試合は、第4ピリオドに急展開を見せた。昌平は、長崎女子の大村に高さでの対抗を止めて、小さな選手でアタック。大村が4ファウルとなって一度ベンチに退くと、一気に追い上げを見せた。12点差があっという間に1点差。猛追の原動力はもちろん、菅野と石垣だ。2人を中心に個人技勝負が増え過ぎ、持ち前のパスワークが途絶えた時間もあったが、エースが牙を抜かれていたら、相手が焦ることも、最後にパスワークで点を取ることもなかったかもしれない。
最後に4点差届かず敗れると、石垣は涙が止まらなかった。仲間が気持ちを切り替えようと笑顔を作って見せても、なかなか一緒に笑うことができなかった。
「1回戦も2回戦も、痛いところを相手に守られた。自分の思うようにプレーできず、周りが支えてくれた。自分の武器は、ドライブ。でも、うまく点を取れず、ターンオーバーが増えてしまった」(石垣)
強い相手を自分の力で破って、チームを勝たせたかったというエースの自負が言葉ににじんでいた。それでも、個で勝負できる石垣がいたから勝ち上がって来たチームなのは、間違いない。インターハイで全国出場を逃した後は、3年生の紅白戦で、ドライブを仕掛けるとファウルも辞さない激しいマッチアップを繰り広げて、互いを高め合ってきた。思い出話になったところで、石垣はようやく「あのときは、本当にバチバチで嫌でした」と少し笑った。惜敗の後は、悔しさしかない。それでも「1年生の頃は、正直、全国と言われてもピンと来なかった」という舞台にたどり着いたこと自体には、大きな価値がある。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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