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昨年は無冠に終わり、今年もチャンンジの多いと予想された桜花学園。東海大会の決勝で安城学園に予想外の大敗を喫し、伊森可琳がひざの大ケガで離脱を強いられただけに、苦戦も予想された。しかし、残り2秒で岡本美優が決めた逆転シュートで昭和学院を倒すと、準々決勝では奥山理々嘉を平下愛佳の厳しいディフェンスでスローダウンさせたことが功を奏して八雲学園に完勝。準決勝では、大阪薫英女学院、東京成徳大を立て続けに撃破した四日市商に大勝して決勝まで駒を進めた。
日本一をかけた戦いの相手は、2連覇を狙う岐阜女だった。「この試合をピークに持って行こうとした」と安江満夫コーチが語ったように、3回戦の安城学園戦ではエース野口さくらを5点に抑え込むなど、持ち味のディフェンスで2Q以降試合をコントール。安江沙碧梨が19点、1年生の留学生イベ・エスター・チカンソが16点、14リバウンドとステップアップもあり、19点差という予想外の差をつけてビッグゲームを制した。昨年のウィンターカップで悔しい思いをした相手を倒した勢いで、岐阜女は津幡、大阪桐蔭を破って2連覇まであと一歩に迫る。
混戦と予想された今年の決勝は、4年連続の同一カード。過去の対戦同様、スローペースのハーフコートゲームが展開され、桜花学園が31対30で前半を折り返す。勝負の行方を分けたのは3Qだった。1年生の留学生オコンクゥオ・スーザン・アマカがターンアラウンドのジャンパーやレイアップ、オフェンス・リバウンドからのフィニッシュが3Pプレーになるなど、10分間で7点をマーク。このインターハイで自信をつかんだ岡本も7点と、フロントラインの奮闘でリードを2ケタに乗せた。
4Qも坂本雅と平下を軸にリードを維持し、岐阜女の池田咲紀が15点と爆発しても、桜花学園は最後まで落ち着きを失わずにプレーしていた。平下の21点を最高に4人が2ケタ得点を記録したバランスのよさと、アマカは岐阜女の留学生2人を相手に17点、21リバウンドという大活躍によって、70対61で宿敵を倒しての頂点に立った。
「昭和学院にあのような勝ち方をしたことで選手が自信をつけて、そのあとの戦い方がインターハイ前と随分違ったなという感じはします。ディフェンスが粘り強くなってリバウンドを頑張るようになり、積極的にみんなが1対1をやろうという気持が現れた」と井上眞一コーチが振り返ったように、桜花学園は試合を重ねるごとにプレーの質を上げていった。指揮官がほぼ素人と言うアマカの著しい成長も、ウィンターカップに向けて大きなプラス材料と言えよう。
岐阜女は惜しくも2連覇を逃したものの、タフなディフェンスが健在。池田、藤田和のガード陣は堅実なだけに、ハディ・ダフェとチカンソの留学生2人がいかに成長するかが、ウィンターカップで桜花学園に雪辱するためのカギになるだろう。直前のエントリー変更でメンバー入りした安江のステップアップは、岐阜女にとって明るい材料と言えるだろう。
このインターハイは東海勢のレベルが他を上回っていることを示す大会となった。四日市商の3位は称賛に値するし、安城学園も桜花学園や岐阜女と並ぶ3強と言ってもいいチーム。浜松開誠館はサイズのないチームながらも、スピードと戦略を駆使した戦いで八雲学園を追い詰めた。組み合わせ次第になるが、ウィンターカップでは東海勢のベスト4独占も十分にありうる。
ただし、ウィンターカップ優勝メンバーが全員卒業し、チームが大きく変貌しながら3位となった大阪桐蔭、強豪校を連破した四日市商、札幌山の手に逆転勝利を収めて準々決勝に進んだ津幡の頑張りは、インターハイを盛り上げたチームと言っていいだろう。
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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