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開志国際の富樫英樹コーチは5年前、長年の夢だった高校で指揮することを実現させた。2008年と2010年に本丸中を全国制覇に導いたのに続き、高校でも日本一になることを目指していた。転身してから4年間は帝京長岡が大きな壁となって立ちはだかってきたが、今年は新潟県予選で大勝してのインターハイ出場権獲得。小池文哉と小栗瑛哉のキャプテン2人を軸に、留学生2人が攻防両面でハードワークをし、197cmのフォワード和田蓮太郎、シューターの1年生ジョーンズ大翔らタレントを揃えた。
初戦でコザを破り、U18アジア選手権に出場中の日本代表に選ばれた3人を欠くといえ、強豪である福岡大附大濠を3回戦、続く準々決勝で北陸を倒した。準決勝では富樫コーチがリスペクトする佐藤久夫コーチが率いる明成との対戦になったが、ゾーン・ディフェンスを攻略して20点差の快勝。フロントラインの大半が1年生という若いチームに対し、10アシストを記録した和田から留学生へのハイローが何度も決まっていた。
開志国際と決勝で対戦したのは、地元愛知代表の中部大第一。大黒柱の中村拓人をU18代表選出で欠きながらも、青木遥平や矢澤樹ら能力のある選手たちを軸に、留学生2人の出場時間をシェアさせる形を常田健コーチが構築してきた。3回戦の東山戦を1点差でモノにすると、準々決勝の八千代松陰戦はサイズで勝るインサイドで主導権を握って快勝。準決勝では東海大諏訪の質の高いオフェンスを4Qでスローダウンさせ、控えポイントガードの井戸光邦がステップアップして4点差で競り勝った。
そんな2チームの戦いは、両チームとも留学生がファウルトラブルに直面。前半で和田が14点と活躍した開志国際が7点リードで前半を終えるも、中部大第一は3Qで青木の3Pや矢澤のドライブで反撃し、終盤でバドゥバニ・クリバリのティップインで一度は46対44と逆転に成功する。4Q序盤にもクリバリはドライブからフィニッシュしたものの、中部大第一にとってのリードはこれが最後。48対48の同点という局面から、厳しいディフェンスからの速攻で和田が2本続けてレイアップを決めて逆転する。
さらに4ファウルだったジョフ・ユセフがフックショット、小栗からのアシストで小池が3Pシュートを決めて一気に勢いに乗った開志国際は、最後の7分間で14?5というチャージで中部大第一を引き離し、創部5年目でインターハイのタイトルを獲得した。
準決勝で16点、10アシストのダブルダブルを達成した和田は、決勝でもチーム最多の18点、11リバウンド。富樫コーチから「うれしい誤算は和田でしたね。昨日は盆と正月とクリスマスが一緒に来たので、今日はもう終わりかなと思ったら続いていました。今日は大晦日でした」と揶揄されたが、U18代表候補にもなった才能を大舞台で発揮したのはまちがいない。また、小池が15点、小栗が12点、7リバウンド、4アシストとガード陣が期待通りの仕事をし、ユセフはファウルトラブルながら7点、11リバウンドで貢献した。
「留学生へのダブルチームに行くかどうかの判断をどこでするかと思ったけど、向こうが先にファウルが混んでくれたので、これはちょっと助かりましたね。(オフェンスは)ディフェンス・リバウンドを頑張って走ろうと。結局その離れたところはブレイクだったので、こっちがやっていた通りになったかな」 決勝戦をこう振り返った富樫コーチは、男子で初となる中学と高校の両カテゴリーで全国制覇を達成した指揮官となった。
地元開催で準優勝となった中部大第一は、中村不在でも戦えることを十分に証明。決勝戦の終盤でオフェンスが失速したところは、中村がいたら違ったかもしれない。クリパリのファウルアウトになっただけでなく、ブバカーン・ンディアイエも4ファウルだったため、インサイドでアグレッシブなディフェンスができなかったのも誤算だった。
しかし、井戸が東海大諏訪戦で勝利の原動力となったのに続き、決勝でもアグレッシブさとタフなシュートを決めてチームに活力を与えていたのは大きなプラス。準決勝と決勝で波のあった2年生コンビ、深田怜音と仲宗根弘のさらなる成長があれば、ウィンターカップで頂点に立てるだけの力は十分にあると言っていい。
中部大第一に4点差で惜敗しての3位となった東海大諏訪は、北村孝太と黒川虎徹のガードコンビを軸に勝ち上がった。特に黒川の巧みなボールハンドリングと視野の広さを生かしたアシスト、フローターでフィニッシュできる得点力は、ポイントガードとして大きな魅力。八王子戦では完全に試合を支配し、21点、11リバウンド、8アシストとあわやトリプルダブルの数字を残した。
フロントラインにはポストプレーのできるセンターとして張正亮、フィジカルの強いパワーフォワードの米山ジャバ偉生がおり、もう一人のフォワードには身体能力が高い高原伊吹がいるなど、戦力はそろっている。入野貴幸コーチの緻密な戦術を選手たちが理解し、高いレベル遂行できることからも、ウィンターカップでは優勝候補の一角にあげていいだろう。
明成は田中裕也以外スターターが総入れ替えで、フロントラインが1年生頼りという状況ながらも、3位まで勝ち上がった。191cmの越田大翔は将来、オールラウンダーとしてチームをけん引する存在となりうる逸材。浅原紳介と加藤陸でローテーションしたセンターは、留学生のいる開志国際戦でフィジカルの差を見せつけられた。しかし、「メンバー選びが大変になるな」と佐藤コーチが話したように、ベンチ入りできなかった1年生にも有望な選手がいることからも、今後が非常に楽しみなチームなのはまちがいない。
U18代表のアジア選手権出場で主力を欠いた福岡第一は実践学園相手にまさかの初戦敗退、福岡大附大濠も3回戦で開志国際に行く手を阻まれた。福岡県からウィンターカップに出られるのは1校になるが、出場権を手にしたチームは、インターハイの4強を脅かす優勝候補になると言ってもいいだろう。
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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