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春季キャンプでの今永、来季もカブスのユニホームを着る
カブスからフリーエージェント(FA)になった今永昇太投手(32)は、クオリファイング・オファー(2202万5000ドル=約34億円)を受諾し、2026年は1年契約で残留を決めた。
球団と今永の双方にある契約延長の権利は、両者が行使しなかった。どちらが契約延長の権利を使うかで契約年数、年俸にさまざまなパターンがあったが、ひとまず来季はカブスで3シーズン目を過ごす。
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『MLB.com』のカブス担当、ジョーダン・バスティアン記者は「この2年間の充実に対し、終盤の不本意な終わり方を上書きする機会にもなる」という。どういうことか。
2シーズンを合計して、24勝11敗、防御率3.28は先発ローテーション投手として素晴らしい数字だ。今季は、左太もも裏の負傷があり、約2カ月間戦線離脱したが、25先発で144回2/3を投げ、9勝8敗、防御率3.73でポストシーズン進出に貢献した。
復調して26年オフを迎えたい。チームのためはもちろん、己の契約にも重要だ。来オフは、労使交渉が控える。MLB機構(球団オーナー側)と選手会で、2027年から5年間の労使協定の合意を目指す。メジャーの最低年俸などに加え、最も難題とされるのが年俸に上限を定める「サラリーキャップ制度」の導入だ。
昨今、上がり続ける選手の年俸は経営者としては、対策したい最重要課題だ。一方で選手会は、得られる報酬が制限される制度は断固として反対。ゆえに交渉は難航が予想され、最悪の場合はシーズンが中断される「ロックアウト」の可能性がある。
再びFAを控える今永としては、去就が決まらず不安定なまま2027年に備えなければいけないかもしれない。だからこそ、今オフのFAから1年契約はリスクも伴う。それを理解した上で今永は“1年勝負”を選んだ。27年以降、メジャーでの複数年契約を狙うならば、明確になった課題を克服しなければいけない。
春季キャンプでキャッチボールで調整する今永
それは、直球(フォーシーム)の球質改善だ。
今季終盤、たびたび伝えられたように今永は本塁打を多く打たれた。今季は投球回144回2/3で31本、昨季は173回1/3で27本だった。特に今季の終盤12先発では20被弾、防御率5.17と一気に調子を崩した。左太もも裏を痛めた負傷者リストから明けた直後の5先発は防御率1.78とケガの影響はないと思われたが、球速の低下やコントロールの精度が悪化した。
詳しい投球データの解説は専門家に任せるが、ここではごく単純化する。今永の直球は簡単にいえば、「昨季より遅くなり、伸びがなくなった」状態だった。
2024年は平均球速91.7マイル(約147.6キロ)、縦変化(ボールの落ち幅)14.4インチ(約36.6センチ)。25年は90.8マイル(約146.1キロ)、15.5インチ(約39.4センチ)だった。直球の出力が落ちたことは、決め球のチェンジアップ(MLB公式サイトの表示はで「スプリット」)のキレも悪くなってしまったことが予想される。
今永の直球はメジャーでは、決して速くない。それでも空振りを奪い、ファウルでストライクカウントを稼ぐことができるのはスピンの効いた伸びる球、だからこそ。シーズン終盤の失速とは対照的に春先には、直球に手応えがあった。東京ドームで開催されたドジャースとの開幕戦では4イニングで無失点と好投した。直球の伸びを感じられたからだ。
「きょう(開幕戦)の直球に関してはものすごく自分の中で手応えがありましたし、これくらいの真っすぐを最低ライン保っていれば、いつでも自信もって投げられるということは勉強になった」
独特の浮き上がるようなストレート、「ライズボール」を取り戻す。それが今永の復調の条件だ。その魔球の復活は、メジャーキャリア継続へのキーになるはずだ。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
X(旧:Twitter)
@YamadaMLB
Instagram
yukiyamada_mlb
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