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小園海斗(カープ)
小園海斗がプロ7年目で初タイトルとなる首位打者に向けて躍進しています。投高打低の傾向が顕著な今季は、史上初となる打率2割台の首位打者の誕生も懸念された中、セ・リーグで唯一の3割打者となることも濃厚になっています。
小園は高卒3年目の2021年に自身初の規定打席到達を果たし、最終打席で安打を記録すれば打率3割を達成という状況で空振り三振に終わり、打率.298でシーズン終了と悔しい思いをしていますが、初の大台クリアがタイトルにつながる結果になりそうです。
タイトルホルダーとなれば、球史に名前が残る存在になるわけですが、カープ歴代の首位打者にはどんな選手がいたのか、調べてみました。
球団史上初の首位打者となったのが1962年の森永勝治で、打率.307でタイトル獲得となりましたが、この年も今季と同様にセ・リーグは3割打者不在で、2位の近藤和彦(大洋)は打率.293でした。
ただ、パ・リーグは打率.374で首位打者のブルーム(近鉄)を筆頭に、打率ベストテンの全員が3割台を記録しており、現在のような全体的な投高打低というわけでもなかったようです。
球団創設25年目で初のリーグ優勝を果たした1975年は、山本浩二が打率.319で首位打者を獲得。ミスター赤ヘルと呼ばれた山本は、本塁打王4回、打点王3回と長距離打者のイメージが強いスラッガーでしたが、初タイトルは首位打者でした。
1968年ドラフト1位入団の山本ですが、この年は前年に1位でカープに入団し、1973年に中日へ移籍していた井上弘昭と激しいタイトル争いを繰り広げ、最終的にわずか1厘差でのタイトル獲得となっています。
1978年の水谷実雄は、球団歴代シーズン最高打率の.348でタイトルホルダーになっています。この年のライバルは、生涯打率.319で首位打者2回と、タイトル争いの常連だった若松勉(ヤクルト)で打率.341とハイレベルな争いでした。
水谷はその後、阪急に移籍して打点王とパ・リーグでもタイトルホルダーとなり、引退後は打撃コーチとして、江藤智や前田智徳を指導するなど、名伯楽としても知られています。
1987年と1988年に球団初となる2年連続首位打者に輝いたのが正田耕三です。1987年は打率.333、1988年は打率.340と高い数字を残していますが、特に印象的だったのが1987年で、篠塚利夫(巨人)と最後まで激しいタイトル争いを繰り広げ、同率での首位打者を決めた最終打席のバントヒットは今も語り継がれる名場面となっています。
正田は89年に盗塁王も獲得していますが、この年も最終戦で1試合6盗塁を決めてタイトル奪取と、土壇場での勝負強さが際立つ選手でした。
2004年の嶋重宣は、打率.337で首位打者のタイトルを獲得。東北高校からドラフト2位入団の大型左腕として期待され、高卒1年目から巨人戦で先発登板も果たしましたが、その試合でもタイムリーを放った打撃力を買われて、翌年には野手転向となりました。
その後は前田智徳や金本知憲など外野手の層の厚さや、持病である腰痛の影響もあり、一軍定着もままならない状況でしたが、プロ10年目のこの年に大ブレイクを果たしました。
シーズン序盤には打率4割台をキープするなど、好調を維持して最多安打のリーグ記録更新も期待されましたが、最終的に189安打とわずか3安打及ばずシーズンを終了。それでもチームメイトで2位のラロッカ(打率.328)に大差をつけて首位打者、さらに最多安打にも輝き、「赤ゴジラ」と呼ばれました。
2019年には鈴木誠也が打率.335で2位のビシエド(中日、打率.315)に大差をつけて首位打者になっています。リーグ3連覇時にもハイレベルな数字を残していた鈴木ですが、タイトルには無縁で、プロ7年目での初タイトルとなりました。その後、2021年にも打率.317で2度目のタイトル獲得となっています。
高卒選手では鈴木に続きチーム2人目、奇しくも同じ7年目で初タイトルとなりそうな小園は、メジャーリーガーとなった鈴木誠也、さらに同じタイトルを獲得した歴代OBの域まで達することができるのか。期待は広がるばかりです。
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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