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野球 コラム 2025年9月9日

九谷瑠、柴崎聖人、相羽寛太。都市対抗野球大会で評価を上げたプロ注目選手たち

野球好きコラム by 大島 和人
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橋戸賞を受賞した九谷瑠(王子)

第96回都市対抗野球大会は9月8日(月)に決勝戦が行われ、王子(春日井市)の優勝で幕を閉じた。決勝は王子と三菱自動車岡崎(岡崎市)の東海対決で、ヤマハ(浜松市)も4強に入るなど、「東海勢」が存在感を見せた大会だった。主要個人賞も東海勢が独占している。

・橋戸賞(MVP):九谷瑠投手(王子)
・久慈賞(敢闘賞):秋山翔投手(三菱自動車岡崎)
・打撃賞:吉岡郁哉外野手(王子)
・首位打者賞:相羽寛太内野手(ヤマハ)
・若獅子賞(新人賞):柴崎聖人外野手(王子)

都市対抗野球は色々な楽しみ方のできる大会だが、多くのファンにとって「どの選手がプロに来るか」が気になるポイントだろう。プロの評価は年齢、伸びしろなど「活躍」以外が大きく反映される。そこも踏まえて、今回の都市対抗で評価を上げた、プロに近づいた3選手を紹介したい。

橋戸賞を受賞した九谷瑠(王子)は25歳で、11月に26歳の誕生日を迎える社会人4年目。通常の社会人選手だと、プロ入りが既に難しくなったタイミングだ。ただし。彼は大阪大谷大学を卒業後、クラブチームの「矢場とんブースターズ」でプレーしていて、王子では新人だった。

矢場とんはクラブチームの強豪だが、フルタイムで勤務しつつ野球をするチーム。大阪大谷大学も関西5連盟の中では影の薄い近畿学生野球連盟で、しかもその2部で投げていた。王子入社後に、練習やコンディション維持の環境が良くなったことで、彼は25歳にして急成長を遂げた。

今大会は1回戦(9月1日:パナソニック戦)と準々決勝(6日:JFE東日本戦)に先発し、準決勝(7日:ヤマハ戦)と決勝はリリーフで登板。4試合23イニングを自責点5で投げ切り、3試合で勝利投手になった。

東京ドームで151キロを記録するなど、球威にも恵まれているタイプだが、チェンジアップやスライダー、フォークといった変化球が高レベル。与えた四死球は「5」と制球力も安定していた。なおかつ、3連投の決勝でも疲れをまったく感じさせない「タフネス」が強烈だった。

178センチ・80キロと決して大柄ではないし、右腕なので「希少性」もない。ただ、そのようなキャリアから這い上がった選手がプロでどうなるのか、行く末をぜひ見届けたい。その成長曲線、そして厳しい環境から這い上がり、大舞台で動じなかったメンタリティも含めて、プロに行く資格はある。

同じ王子の柴崎聖人は、「なぜ、去年プロに行かなかったのか」と、不思議になるようなプレーを見せていた。今大会は5試合で21打数7安打3打点の活躍。2本塁打、3盗塁とパワーやスピードも印象的だった。

大阪経済大学時代も「プロ注」で、大学日本代表候補への召集歴があり、プロ志望届も出していた。柴崎は173センチ・85キロの中距離打者だが、ただ「左打ちの外野手」は日本球界の中でも人材が多い属性。

同じ連盟、同じ学年、同じ外野手の渡部聖弥(右打者/大阪商業大学→埼玉西武ライオンズ)はドラフト2位でプロ入りして、既に活躍を見せているが、柴崎は指名から漏れた。

柴崎が都市対抗の大舞台で守備、走塁も含めてはっきり「結果」を出したことは、次につながる。入社1年目のためドラフトは「2026年以降」となるが、今秋の日本選手権や来年の活躍も楽しみだ。

相羽寛太(ヤマハ)は178センチ・76キロの右打者で、守備位置はショート。入社5年目だが、大学でなく静岡高校から入社しているため22歳と若い。今大会は15打数7安打、打率.467と好調で、チームのベスト4進出に貢献した。

相羽は入社1年目から主力として起用され、「将来のNPB入り」を期待される存在だった。U-23の国際大会でも、日本代表として参加して活躍している。

もっとも彼が評価されていたのはショートの守備力で、ヤマハでの打順は下位だった。源田壮亮(トヨタ→西武)のように、社会人の9番打者がプロで台頭した例もあるが、とはいえそれはレアケース。相羽はドラフトの対象となる3年目、翌4年目と指名を受けられず、そろそろ「プロ」の声は聞こえなくなるタイミングだった。

しかし、今大会は打順が6番に上がり、首位打者賞も受賞。その「内容」をNPBのスカウトがどう評価するかは別の話だが、NPB入りの可能性が上がる活躍だったことは間違いない。

他にも谷脇弘起(右投手/日本生命)や竹丸和幸(左投手/鷺宮製作所)は2度の先発登板で悪くない内容を見せた。ただ、彼らは「元からの高評価を保った」という言い方が適切だろう。九谷、柴崎、相羽の3人がチームの好成績とともに「個」としても評価を上げた大会だった。

文:大島和人

大島 和人

大島 和人

1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty

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