人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

野球 コラム 2025年8月28日

社会人野球で輝く元プロ野球選手たち:投手編。都市対抗野球大会

野球好きコラム by 大島 和人
  • Line

都市対抗に出場する元NPB選手

社会人野球には、様々なバックグラウンドを持つ選手がいる。元プロ野球選手も「1チーム2名以内」「社員契約」という条件はあるものの、在籍が認められている。8月28日に開幕する第96回都市対抗野球大会でも、「元プロ」が東京ドームの大舞台に立つはずだ。

もっとも元プロの肩書が、社会人での活躍を保証するわけではなく、ほとんどチームに貢献できずチームを去る選手もいる。

一方で社会人入り後に輝きを取り戻す選手もいて、NPB時代より明らかに伸びている人材がいるのは嬉しいこと。熱心な野球ファンならば、都市対抗を見て「この選手がまだ現役なのか」と驚くこともあるだろう。

今回は独立リーグ、メジャーリーグも含めた「元プロ」の中から、特に注目される人材を紹介する。今回は投手5名を取り上げよう。

田川賢吾(日立製作所)

◆田川賢吾(日立製作所)
・31歳 右投左打 189センチ・92キロ
・NPB経験:東京ヤクルトスワローズ(2013~20年)

日立製作所に入社して5年目。今大会の2次予選は勝負どころのリリーフを任され、4試合に登板している。チーム最多の9イニングを任され、防御率0.00と好投した。

高知中央高校からドラフト3位でプロ入りし、本格派右腕として潜在能力を大きく評価されていた。NPB時代は二軍で安定した成績を残していたものの、一軍登板は5試合にとどまり、8年で戦力外となった。

ヤクルト時代を知るライター仲間が「プロ時代よりずっと良くなっている」と称賛していたが、150キロ前後の速球は健在で、スライダー、フォーク、カーブといった変化球も一級品。これがあと10歳若ければ「ドラフト上位候補」と騒がれていただろう。

吉田大喜(東邦ガス/ヤマハ補強選手)

◆吉田大喜(東邦ガス/ヤマハ補強選手)
・28歳 右投右打 175センチ・81キロ
・NPB経験:東京ヤクルトスワローズ(2020~23年)

大阪府立大冠高校3年時は府立高校のエースとして大阪のベスト4に進出。日本体育大学に進学し、ドラフト2位でプロ入りをしている。

大学時代は最速150キロ台の速球を持ちつつ、スライダー、フォークなどの変化球もよく、さらに「試合を作る上手さ」がある先発投手だった。ヤクルトではルーキーシーズンは1軍で14試合に先発するなど期待を受けたが、実働4年でNPBを去った。

社会人では大学、プロの「いい状態」を取り戻してフル稼働を見せている。今回の東海2次予選では東邦ガスのエースとして、5試合中4試合の先発を任された。チームは第4代表決定戦でヤマハ、第5代表決定戦で王子に敗れて東京ドームにあと一歩届かなかったが、彼自身はヤマハの補強選手として大舞台に向かう。

桜井俊貴(ミキハウス/大阪ガス補強選手)

◆桜井俊貴(ミキハウス/大阪ガス補強選手)
・31歳 右投右打 181センチ・87キロ
・NPB経験:読売ジャイアンツ(2016~22年)

立命館大学のエースとして巨人の1位指名を受けてプロ入りした右腕。ドラフト後の2015 年11月に開催された明治神宮野球大会では、東北福祉大学から18奪三振を奪う快投も見せている。巨人では通算110試合に登板していて、NPBにもしっかり爪痕を残している。

2022年限りで引退し、巨人のスカウトとしてセカンドキャリアに進む……はずだった。近畿・中国地区を担当し、泉口友汰の獲得にも尽力している。

しかし、現役への思いを断ち切れず、ドラフト会議後にトレーニングを再開。1年のブランクを経て入社したミキハウスでは、すぐさまエースとなり、2024年の2次予選は2試合連続完投勝ちを収める活躍。本大会出場の立役者となった。

第96回大会の近畿地区2次予選でミキハウスがNTT西日本、三菱重工West、大阪ガスと強豪に敗れて出場を逃したが、桜井自身は3試合すべてに登板している。大阪ガスからの補強を受けて、この夏も2度目の都市対抗に臨む。

田澤純一(ENEOS)

◆田澤純一(ENEOS)
・39歳 右投右打 180センチ・94キロ
・MLB経験:ボストン・レッドソックス(2009, 2011~16年)/マイアミ・マーリンズ(2017~18年)/ロサンゼルス・エンゼルス(2018年)
・独立リーグ経験:埼玉武蔵ヒートベアーズ(2020年)
・CPBL経験:味全ドラゴンズ(2021年)
・メキシコ経験:ドゥランゴ・ジェネラルズ(2022年)

社会人球界的には2008年、第79回都市対抗野球大会の橋戸賞投手だ。横浜商大高校から入社して4年目だった田澤は、新日本石油ENEOS(現・ENEOS)のエースとして全5試合に登板。4勝を挙げ、28回1/3を4失点で抑えた。

「150キロ腕」がほとんどいない時代に最速156キロの速球を投げ、豊富な球種や制球力を兼ね備えた彼は、当時のアマチュア球界でも突出した存在だった。

「元プロ」だが、NPB経験はない。ただし、これだけプロ経験が豊富な社会人選手も他にいない。2008年の12月に彼はメジャーリーグのボストン・レッドソックスと契約する。MLB球団と直接契約した選手の帰国を制限する「田沢ルール」なるものが誕生するほどの「事件」だった(※田沢ルールは廃止済み)。

MLBでは3球団に在籍し、主に中継ぎとして388試合に登板。他にもアメリカのマイナー、日本の独立リーグ、台湾、メキシコと様々な経験を積んでいる。

2023年秋には「古巣」のENEOSへ15年ぶりに復帰。現在の肩書は「コーチ兼任投手」で、登板機会は減っており、今大会の2次予選も登板していない。ただ、彼の経験は大きくチームに還元されていることだろう。

近藤壱来(JR四国)

◆近藤壱来(JR四国)
・27歳 右投右打 176センチ・70キロ
・独立リーグ経験:香川オリーブガイナーズ(2020~22年)

彼も元プロだが「元NPB」ではない。鳴門渦潮高校3年の夏には徳島県大会決勝まで勝ち進み、社会人の三菱自動車倉敷オーシャンズに進んだ。「1度目」の社会人野球は在籍2年で退部し、1年のブランクを経て、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズに移籍している。

香川では2021年に15勝3敗と大活躍を見せた。しかし、在籍3年間でNPBからの指名はなく、2023年からはJR四国に移り、社会人に復帰した。

同年の都市対抗では前年の準優勝チームだった東京ガス相手に好投し、11回を投げ切って勝ち投手となる鮮烈な「東京ドームデビュー」を飾った。

その年の社会人日本選手権も3試合に先発し、JR四国のベスト8入りに貢献している。制球力が高く、最速152キロの速球とフォーク、スライダーのコンビネーションも優れた右腕は社会人でも十二分に通用した。

2024年は前年に比べて結果を残せず、今回の2次予選も代表決定戦の先発は後輩に譲っている。とはいえ「社会人→独立リーグ→社会人」という珍しいルートの成功者として、注目に値する人材だ。

文:大島和人/写真提供:小学館

大島 和人

大島 和人

1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
野球を応援しよう!

野球の放送・配信ページへ