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都市対抗の注目選手(写真提供:小学館)
社会人球界でプレーする選手は、大卒なら「入社2年目以降」、高卒は「入社3年目以降」でないと、ドラフトの指名を受けられない。なので「新人」はどんなにレベルが高くても、この秋のドラフト会議で指名されることはない。
今回は第96回都市対抗野球大会に出場する選手たちから、「2025年の候補」とは違う視点で、ドラフト適齢期に限定せず注目してほしい選手、話題性のある選手5名を紹介する。
梅田健太郎(ヤマハ)
◆梅田健太郎(ヤマハ/投手)
・22歳 右投右打 181センチ・90キロ
・横浜隼人高校→立正大学
立正大学から入社して1年目の本格派右腕だ。大学時代から評価はされていて、4年秋には東都2部のベストナインに選出されている。ただし、プロ志望届は出さず、社会人に進んだ。
ヤマハでは入社早々から起用され、6月17日の東海2次予選・第1代表決定トーナメント準決勝のトヨタ自動車戦では、先発に抜擢された。梅田は社会人最高レベルの打線を相手にしつつ、最速153キロの速球を武器に6回無失点と快投を見せている。
チームはトヨタに惜しくもタイブレークで敗れ、最終的には「東海第5代表」にとどまった。ただ。梅田は東海2次予選で3試合、14回1/3を投げ切り、エースの左腕・佐藤廉に次ぐ投球回数を記録している。
大学時代に比べると明らかに出力が上がり、コンスタントに150キロ台を記録できるようになった。さらにカーブやスライダーのキレは別の魅力で、フォークも「使える」レベルに達しつつある。「2026年」の上位候補として、ぜひ名前を覚えておいてもらいたい。
印出太一(三菱重工East)
◆印出太一(三菱重工East/捕手)
・23歳 右投右打 185センチ・91キロ
・中京大中京高校→早稲田大学
第95回大会を制した三菱重工Eastが、新たに迎え入れた大物ルーキーだ。チームが予選免除の推薦出場となるため、いきなり開幕戦の大舞台を経験することになる。
しかし、中京大中京高校、早稲田大学と名門の出身で、大舞台や国際試合の経験も豊富。決して浮足立つことはないだろう。
高校3年時はコロナ禍で甲子園の通常開催はなかったが、2年秋の明治神宮大会はエースの高橋宏斗(中日)とバッテリーを組み、全国優勝を果たしている。
大学では2年春から捕手の定位置を確保し、3度のベストナインを経験。4年時は春季リーグが打率.375、秋季リーグが打率.360と打力を発揮し、チームの六大学連覇に貢献した。4年次は大学日本代表の主将として、2つの国際大会で優勝も経験している。
昨秋はプロ志望届を提出したものの、NPBからの指名はなかった。ただ、その打力と「チームを勝たせるリーダー」としての資質は、社会人の大舞台を経験する中で、さらに磨かれるはずだ。
福井章吾(トヨタ自動車)
◆福井章吾(トヨタ自動車/捕手)
・26歳 右投左打 167センチ・76キロ
・大阪桐蔭高校→慶應義塾大学
「チームを勝たせる捕手」ならば、アマチュア球界の中では真っ先に福井章吾の名前が挙がる。トヨタ自動車に入社して4年目を迎えているが、その経歴は圧巻だ。
まず、大阪桐蔭高3年時の選抜大会ではキャプテンとして優勝を経験している。根尾昂(中日)や藤原恭大(千葉ロッテ)、山田健太(日本生命)ら、1学年下の後輩を引っ張り、ライバル岩本久重(Honda)の負傷というアクシデントもあった中で「扇の要」の役割を十分に果たした。
慶應義塾大学4年次は春夏のリーグ戦を制し、6月の大学野球選手権では日本一に輝いた。2023年の都市対抗制覇時は控えだったが、昨年秋の日本選手権制覇には正捕手として貢献している。
体格は小柄で、そこまで打力があるわけでもない。ただ、投手の強みを引き出し、チームをまとめるところに彼の本領があるのだろう。こういう人材の存在も、社会人野球の奥深さだ。
山田健太(日本生命)
◆山田健太(日本生命/内野手)
・25歳 右投右打 183センチ・87キロ
・大阪桐蔭高校→立教大学
2022年のドラフトでは「時の人」になった。大阪桐蔭高校3年次は甲子園春夏連覇を達成。根尾昂(中日)、藤原恭大(千葉ロッテ)ら4名がプロ入りした黄金世代の一員で、2年時からチームの主力だった。
立教大学でも1年春から主力となり、8季通算打率.291、9本塁打と申し分のない成績を残している。大学日本代表ではキャプテンも任されるなど、プレー以外の部分も評価されていた。
大卒時のドラフトは、攻守ともに申し分のない即戦力として、指名が確実視されていた。だからこそ、彼の「指名漏れ」は大きなニュースとなった。社会人2年目となる昨秋も、ドラフトの指名はなかった。
ただ、チームの主軸として徐々に存在感を増している。今夏の2次予選も4・5番を任されつつ、4試合で打率.313の活躍、チーム最多の3打点を記録した。3年目はドラフトの指名を得るためには「ギリギリ」のタイミング。いわば「ラストチャンス」の夏に懸ける思いは強いはずだ。
◆藤澤涼介(東京ガス)
◆藤澤涼介(東京ガス/外野手)
・23歳 右投右打 187センチ・87キロ
・佐野日本大学高校→横浜国立大学
東京ガスの出場権獲得に大きく貢献したルーキーだ。Hondaとの東京第2代表決定戦では、決勝本塁打を放つなど、2次予選の4試合で3本塁打。打率.375、7打点と圧巻の活躍だった。
典型的な長距離打者で、体格やパワーに恵まれている。さらにバットに「乗せる」上手さや手首のしなやかさがあり、逆方向にも大きな当たりを打てるタイプ。しかも走塁、送球も素晴らしい万能アスリートで、センター/ライトの守備も強みだ。プレーにひと目でわかる「華」のある逸材だ。
佐野日大高校時代は「特進クラス」に所属しながら野球部でプレーし、大学も国立(横浜国立大学)に進んだ文武両道タイプでもある。
神奈川大学リーグ1部でプレーし、「知る人ぞ知る」存在ではあったが、プロ志望届を出さず東京ガスに進んだ。入社後のレベルアップブぶりを見ると、都市対抗野球だけでなく、その先の活躍もイメージできるレベルにある。
文:大島和人/写真提供:小学館
大島 和人
1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty)
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