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野球 コラム 2025年8月26日

プロ注目、東京ドームのマウンドに立つドラフト候補の5投手。都市対抗野球大会

野球好きコラム by 大島 和人
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都市対抗に出場するプロ注目の5投手

社会人野球からNPBに進んで活躍している選手は多い。ただし高卒や大卒とはプロ入りの「条件」が違う。まず社会人球界でプレーする選手は「育成枠」の対象にならない。さらに大卒なら「入社2年目以降」、高卒は「入社3年目以降」でないと、ドラフトの指名を受けられない。

ただ、そんな「ハードル」をクリアして、NPBでも活躍を見せてくれそうな人材が、第96回都市対抗野球大会に出場する選手たちの中にはいる。今大会の出場選手の中から、2025年秋の「ドラフト候補」をピックアップしてご紹介したい。前編はまず5名の投手を紹介する。

竹丸和幸(鷺宮製作所)

◆竹丸和幸(鷺宮製作所)
・23歳 左投左打 178センチ・69キロ
・崇徳高校→城西大学

入社2年目の左腕で、東京第1代表となった鷺宮製作所のエース。成長曲線は「晩熟」で、2025年に入ってから大きく評価を上げた。

最速は140キロ台で、球速で圧倒するタイプではない。一方で「力みのないフォームと球速のギャップ」「出どころの見難さ」といったテクニックがある「ボールが速く見える」タイプ。加えて多彩で細かい変化球を持ち、制球力も高レベルだ。

城西大学時代は4年春まで2部リーグで、入社後も本格的なブレイクは2年目から。2年目の今年は3月のスポニチ大会優勝に貢献し、その後も好投を続けている。晩熟だけでなく体格的にまだ細身で「伸びしろ」も評価できる部分。

ドラフトの上位指名も可能性としてはあり得るだろう。JABA大会では彼目当てにやってくるスカウトが多く、逆に東京第1代表決定戦は、彼の「温存」に落胆している球団関係者を見かけた。

冨士隼斗(日本通運)

◆冨士隼斗(日本通運)
・23歳 右投右打 180センチ・86キロ
・大宮東高校→平成国際大学

入社2年目の本格派右腕。南関東第1代表決定戦は、テイ・エス テックを被安打1で完封する快投を見せた。

彼も晩熟タイプで、埼玉県立大宮東高時代は控え投手。コロナ空けだった平成国際大学3年の春季リーグ戦でブレイクし、最速155キロの速球派としてそれなりの評価を受けていた。

プロ野球志望届も提出していたが、最終的には指名漏れ。昨年の都市対抗も2イニングの登板を経験しているが、今年は「エース」として独り立ちしている。

大学時代からの成長を感じるのは、まずスライダー(カットボール)の質。変化がより小さく、鋭くなり、速球との見分けがつきにくくなった。また、球速が速いだけでなく「球持ち」がよく、打者の近くでボールを離せるところは彼の強み。加えて大きなカーブで緩急も使えるタイプだ。

南関東第1決定戦では、最終回にも151キロを計測するスタミナも見せた。ポテンシャル、入社後の成長曲線を見ると、上位指名を受けて不思議はない。なお、5学年下の弟・富士大和も大宮東高校出身で、埼玉西武ライオンズの育成1位指名を受けて、今年からプロ入りしている左腕だ。

阿部雄大(ENEOS)

◆阿部雄大(ENEOS)
・25歳 左投左打 183センチ・91キロ
・酒田南高校

入社7年目の苦労人左腕。西関東第1代表決定戦では、9回二死まで東芝を無失点に封じる好投で、勝ち投手となった。東北出身、高卒入社、負傷の克服、地道な成長曲線と言った要素は、左右の違いこそあれ、入社8年目にプロ入りしたJR東日本東北時代の攝津正(元ソフトバンクホークス)と重なる。

阿部は酒田南高校から入社し、1年目(2019年11月1日)の日本選手権2回戦では先発に抜擢されている。当時から「筋の良さ」は感じたものの、最速は130キロ台。体格も細身で、レベル的には今と比べ物にならなかった。さらにその試合は左肩の故障で早々に降板している。

回復後も強力な投手陣の中で短いイニングの登板にとどまっていた。しかし、徐々にレベルを挙げ、昨年の都市対抗・東京ガス戦では先発も任された。現在の最速は150キロで、7月の第2代表決定戦も先発で最速148キロを記録。

また、打者の反応を見ると140キロ台前半でも「差し込まれている」「詰まらされている」場面が多く、球質やタイミングを合わせにくいフォームといった要素も強みなのだろう。変化球はスプリット(高速フォーク)が決め球として有効で、三振奪取にも期待できるタイプだ。

増居翔太(トヨタ自動車)

◆増居翔太(トヨタ自動車)
・25歳 左投左打 172センチ・70キロ
・彦根東高校→慶應義塾大学

「社会人最高の投手」「即戦力投手」というテーマでアンケートを取ったならば、もっとも票を集める左腕だろう。

入社2年目の昨秋はドラフトの指名を受けられなかったが、ドラフト会議後に日本選手権で3試合に登板し3勝。24回イニングで1失点という快投を見せ、トヨタ自動車の優勝に大きく貢献しつつ、最高殊勲選手賞(MVP)にも輝いている。

彦根東高校時代も2度の甲子園大会を経験し、慶應義塾大学でも2度ベストナインに選出されている。内外角の厳しいコースを突く制球力、チェンジアップのキレと、間違いなく同年代ではトップレベルの左腕だった。

もっとも、プロはどうしても「体格」「球速」といった要素を重視する。慶應義塾大学では17勝2敗と圧巻の成績を残し、プロ志望届を提出したものの、当時も指名漏れを喫した。

その後、「球速」については昨秋の日本選手権で、コンスタントに140キロ台後半を記録し、入社後にはっきり上昇している。今季もJABA大会から好投を続け、東海2次予選は15イニングを無失点で封じる圧巻の内容を見せた。

昨秋から問答無用の成績を残している彼が、ドラフト前最後の大舞台でどのような内容を見せるか注目だ。

谷脇弘起

◆谷脇弘起(日本生命)
・23歳 右投左打 185センチ・85キロ
・那賀高校→立命館大学

入社2年目の本格派右腕。立命館大学4回生の秋季リーグ戦ではノーヒットノーランも達成していたが、ドラフトは指名漏れを喫した。

ただ、彼も社会人でステップアップを見せている。昨年9月には「第5回 WBSC U-23ワールドカップ」に侍ジャパンU-23日本代表として参加し、3試合に登板して優勝に貢献した。

今年は近畿地区2次予選で、4試合すべてに登板し、22回1/3で防御率0.40という好成績を残して第2代表獲得に貢献。最速151キロの速球も強みだが、斜めに大きく曲がり落ちるスライダーはプロでもなかなか見ない「特殊球」だ。近畿地区の投手の中では「一押し」の存在といっていい。

文:大島和人/写真提供:小学館

大島 和人

大島 和人

1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty

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