連覇を狙う三菱重工East、トヨタ自動車、鷺宮製作所、日本通運が優勝候補。都市対抗野球大会

前回大会を制した三菱重工East

第96回都市対抗野球大会の優勝チーム、優勝候補はどこだろうか？それを占う前に、1つ「不吉な話」をしたい。

昨夏の第95回大会を制したのは三菱重工East（横浜市）だが、今大会は予選免除で、8月28日（木）の開幕戦に登場する。しかし、近年の都市対抗を振り返ると、前年度優勝の「推薦出場チーム」は序盤で足をすくわれるケースが多い。

令和の6大会に限ると、第90～92回大会は初戦敗退。第93回大会の東京ガスは決勝まで進んだが、94・95回大会は2回戦敗退と、連覇を目指す前年度王者が1・2回戦で姿を消している。

もちろん、対戦した相手が強豪という場合もあるが、推薦出場チームは補強選手制度を活用できず、地区予選を通したチーム作りもできない。それが「ハンデ」となってしまっているのかもしれない。

とはいえ三菱重工Eastは優勝候補の一角に入れていいだろう。山中稜真（オリックス）はプロ入りしたものの、同じ捕手に印出太一が早稲田大学から加わって既に主軸を担っている。

投手陣は第95回大会の橋戸賞投手・本間大暉ら人材豊富で、連戦を乗り切る層の厚みもある。「鬼門」の1回戦さえ突破すれば、2012年・13年のJX-ENEOS（現・ENEOS）以来となる連覇が見えてくる。

人材のレベル、選手層ならば第94回大会王者・トヨタ自動車（豊田市）が1番手だろう。投手陣は先発を任される増居翔太、池村健太郎の両左腕が、まずハイレベルだが、ピンチを託せる中堅、ベテランも豊富。第94回大会の橋戸賞右腕・嘉陽宗一郎、右腕・渕上佳輝ら、他チームならエースを担うような人材がリリーフを担う。

後藤凌寿は昨年の「第5回 WBSC U-23ワールドカップ」で優勝に貢献した本格派右腕だし、他にも細川拓哉、加藤泰靖、高尾響とプロを目指せるレベルの投手はいる。ただ、まず出番の確保が難しい。

打線も見るとサードの熊田任洋がプロ注。世代的には20代後半の働き盛りが強力で、和田佳大と佐藤勇基の二遊間、逢澤綾介・徳本健太朗らの外野陣といった面々だ。激戦区・東海地区の第1代表として、2年ぶりの優勝を視野に入れている。

東京はHondaが南関東から移ってきた経緯もあり、各地区予選の中でも最激戦区と言っていい。今大会もNTT東日本、セガサミー、明治安田といった強豪が予選で消えている。そんな東京の第1代表が鷺宮製作所だ。

鷺宮製作所の新チームは、3月のJABAスポニチ大会を制するなど、春から実力を見せていた。エースとしてチームを引っ張るのが、入社2年目の左腕・竹丸和幸。制球力、球種の豊富を持つ技巧派で、2025年秋のドラフトでも上位候補に挙がるだろう。

ただ、東京第1代表決定戦はその竹丸を温存し、4投手の継投で制した。JPアセット証券から移籍し、今季から入社した左腕・門間滉介もハイレベルな本格派で、ぜひ注目してほしい。

野手はセカンド中島優仁、サード花崎成海ら入社2年目以内の若手が台頭中。さらに補強選手は「第1代表」のメリットを活かし、石井巧、向山基生（ともにNTT東日本）と社会人トップレベルの人材を迎え入れた。第96回大会は初優勝、黒獅子旗獲得の期待がかかる。

日本通運（さいたま市）も激戦区・南関東の第1代表で、1964年以来「61年ぶり」の優勝を目指す。相馬和磨のようなベテランが支えてきた投手陣の中で、今年は大卒2年目の右腕・富士隼斗がエースとして台頭。最速155キロの速球に加えて、変化球の精度や「安定感」が増していて、第1代表決定戦は被安打1の完封勝利を挙げている。

野手は手銭竜汰、北川利生、大谷昇吾と三十代の「猛者」が健在。長らく正捕手を努めていた木南了は引退したものの、入社3年目の山本空が南関東2次予選では打率.429と活躍を見せた。

一方で都市対抗は出場チームの実力が接近していて、第95回大会の準優勝チーム・JR東日本東北（仙台市）のような伏兵が快進撃を見せることも多い。どのチームにも目の超えた野球ファンを魅了する「何か」はあるはずだ。

文：大島和人